総容量は約18.1GB
編成/奏法ごとにプリセットを収録
本製品は一般的なオーケストラ音源に加え、幾つかの編成でミックスされた音源も用意されていて、簡単にアンサンブルを作ることができます。NATIVE INSTRUMENTS Kontakt上で動作し、Mac/Windowsに対応、VST/Audio Units/AAX、スタンドアローンをサポートしています。
サンプルの総容量は堂々の約18.1GB! 収録インストゥルメントは、“Mixed Orchestra”“Strings”“Brass”“Woodwinds”“Percussion”“Keyboards & Harp”“Choir”“Dystopia Sound Design”“Bonus”で、それぞれに編成/奏法ごとのプリセットが存在します。また、コンプやディレイ、フィルター、モジュレーションなどのエディットも可能なほか、オクターバーも備えているので、簡単にオクターブ・ユニゾンが作れます。さらに、MIDIキーボードを使えば、モジュレーション・ホイールでクレッシェンドも演奏可能。音量が増していくニュアンスも心地良く作られています。
鍵盤によるリアルタイム演奏で
ムードを演出する“Multi Instruments”
それぞれのインストゥルメントを詳しく見ていきましょう。Mixed Orchestraは、オーケストレーションの際によく使われるさまざまな楽器のユニゾンをミックスして、鍵盤だけで演奏できるようにしてあります。また“Texture”というプリセットは、オーケストレーションされた短い楽曲的なフレーズで、こちらも指1本で演奏可能。“Cartoon”は、簡単一発! あっという間に、よく耳にするCartoonの世界ができ上がります!
Stringsには一般的な弦のアーティキュレーションのほかに、“Ensemble Texture”と“Ensemble Effect”というプリセットがあります。こちらは実に表情豊かな音色で、ちょっとしたSEとしても便利に使えます。Brassは、トランペット、チューバ、ホルンは単体ですが、トロンボーンはホルンと程よくミックスされた音色。そしてWoodwindsは、フルートとピッコロはオクターブ・ユニゾンで、こちらにもEnsemble Effectsを用意。個性的で独特な世界をたちまちに表現できます。また、リコーダー音色もあり、ピッチの揺れなどもリアルに表現されていて重宝しそうです。
Percussionには、ビッグ・ドラム、ティンパニ、シンバルといった定番を押さえつつ、ビブラフォンやベル・ツリーまで用意。Keyboards & Harpは、グランド・ピアノとチェンバロのほかに、VOXオルガンも収録。心憎いばかりの繊細さです。Choirにはロング・トーンと抑揚のついたスウェル、そして“Texture”があります。Textureは映画ですぐに使えそうなミックス・コーラスです。
Dystopia Sound Designとは、簡単にオーケストラのクラスターなどの演出ができる音色で、サウンドトラックに効果が期待できそうです。最後のBonusには、オーケストラのチューニング場面を再現。これは意外と使えるかも!
ここで“Multi Instruments”について触れておきます。これは、収録音源をMIDI鍵盤上に音楽的に割り当てたプログラムで、ライブ演奏も可能な33種類のプリセットが用意されています。例えば、“Entering the Cave”というプリセットでは、映画の緊迫したシーンに適した音が鍵盤に割り当てられており、映像の緊迫感に合わせてリアルタイムに絶妙な音楽を演出することができます。左手でドローンを鳴らして、右手でショッキングなクラスターをガーン!でOK。実はクラスターを演奏するのは意外に大変なのですが、これならオーケストラの奏法を知らなくても大丈夫! 僕が気に入ったのが、“Daydreaming”。鍵盤の低域に低いストリングス、真ん中辺りがクワイア、高域に木管が配置されていて、一人でアンサンブルができ、とても楽しかったです。
このほかにもさまざまなプログラムがあり、自分の好きな楽器を自由にアサインすることも可能です。Kontaktベースならではの柔軟性で、自分だけのオーケストラ音源を作ることもできます!
最後に本製品は、音源を鳴らしたときの響きが、手を加えなくても生のオーケストラと同様なので、後でエフェクト処理をする煩しさがありません。難しいことは考えずに、手軽にオーケストレーションの雄大さを手に入れることができ、新しい発想の手助けになる音源だと思いました。もちろん時間をかけて追求すれば、新たな価値を生むことができる面白いソフトです。実際のオーケストラを演奏させることは容易なことではありませんが、この音源を駆使すれば、手軽にオーケストラ音色を手に入れることができるでしょう。実は僕も早速仕事で使わせていただきました。SOUNDS GOODです!
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年4月号より)