「YAMAHA DBR12」製品レビュー:可搬性を重視したDSP内蔵のPA用2ウェイ・パワード・スピーカー

YAMAHADBR12
YAMAHAからDBRシリーズという、2ウェイのPA用パワード・スピーカーが登場した。低域のユニットに10インチ径のウーファーを備えるDBR10(63,000円)、今回チェックする12インチ径ウーファー内蔵のDBR12、15インチ径ウーファーを積んだDBR15(83,000円)の3機種がラインナップされている。早速レビューしていくとしよう。

重量は15.8kgで持ち運びやすい
内蔵アンプの出力は最大1,000W


エンクロージャーは軽量かつ丈夫なプラスチック製で、外形寸法は376(W)×601(H)×348(D)mm、重量は15.8kgとなっており、両手で楽に持ち運べる。内部には2chミキサーが搭載されており、背面にはch1のためのマイク/ライン・イン、ch2のためのライン・イン(以上XLR/TRSフォーン・コンボ)とライン・インL/R(RCAピン)を装備。ツマミを使ってそれぞれの入力レベルを個別に調整することができる。出力端子はライン・アウト(XLR)が1つ装備され、ch1の入力をそのまま出力するか、ch1+ch2のミックスを出力するかボタンで切り替え可能だ。内蔵のアンプはクラスDで、最大出力は1,000W。ユニットについては、低域に2.5インチ径のボイス・コイルを備えた12インチ・ウーファーを採用。内蔵アンプからの大入力に耐えるよう設計され、ひずみの少ない明りょうなサウンドを実現しているという。中高域ユニットは1.4インチ径ダイアフラムのコンプレッション・ドライバーを備え、分解能の高さを特徴としている。 

色付けの少ないフラットな音質
音像を際立たせるFOH/MAINモード


スタジオに入り、2本のDBR12をスタンドに立てて電源を入れてみた。本当に内蔵アンプがONになったのか?と思うほどファン・ノイズが少ない。静粛を求められる現場でも問題にならないレベルだろう。ch1にマイクを接続し声を出してみると、YAMAHAらしい色付けの少ないフラットな音という印象。次に入力端子の右側に備えられた“D-CONTOUR”というDSPスイッチをチェックしてみる。低域と高域の持ち上がった“FOH/MAIN”モードをONにすると、音像が際立つ。声が中心のPAならば、100/120Hzの2種類がある内蔵ハイパス・フィルターのうち100Hzに設定すればちょうど良いだろう。続いては床に転がしてチェック。背面には50°の角度が付いており、出音をとらえやすい。D-CONTOURを、低域をカットし中〜高域をブーストするウェッジ用の“MONITOR”モードに設定すると、コンパクトでタイトな音像になる。若干のコンプ感があるものの、音圧は十分だ。再びスタンドに設置し、今度はch2のライン・インL/RにCDソースを入力。FOH/MAINモードにすると、ややデフォルメされている感はあるものの、12インチ・ウーファーとは思えないたっぷりとした低域の量感が得られた。入力レベルをかなり上げてみたが背面の“LIMIT”ランプは点灯せず、まだまだレベルを上げることができたので、内蔵アンプのパフォーマンスにも余裕を感じた。背面の端子/スイッチ類の仕様がシンプルなので、すぐに音が出せる。声やライン・レベルの音源をミックスして簡単なPAをする際に、専門的な知識は何も要らない。用途に合わせてウーファーの口径やサブウーファーの追加を検討すれば、いろいろなシーンに対応できるだろう。エンクロージャー背面のハンドルのグリップ感や適度な重量も心地良く、コンシューマー向きとして敷居の下がったリーズナブルなスピーカーだ。 
▲背面には、内蔵ミキサーへの入力としてch1用のマイク/ライン・イン、ch2用のライン・イン(以上XLR/TRSフォーン・コンボ)とライン・インL/R(RCAピン)を装備。ツマミで個別にゲインを調整できる。出力はライン・アウト(XLR)が用意され、ch1のスルー/ch1+ch2のミックスをスイッチで切り替え可能。内蔵DSPでは、2種類の周波数特性モード、100Hzと120Hzの2種類のハイパス・フィルターを制御できる ▲背面には、内蔵ミキサーへの入力としてch1用のマイク/ライン・イン、ch2用のライン・イン(以上XLR/TRSフォーン・コンボ)とライン・インL/R(RCAピン)を装備。ツマミで個別にゲインを調整できる。出力はライン・アウト(XLR)が用意され、ch1のスルー/ch1+ch2のミックスをスイッチで切り替え可能。内蔵DSPでは、2種類の周波数特性モード、100Hzと120Hzの2種類のハイパス・フィルターを制御できる
 (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年12月号より)
YAMAHA
DBR12
73,000円
▪スピーカー構成:12インチ径ウーファー(低域)+1.4インチ径コンプレッション・ドライバー(高域) ▪アンプ出力:800W(低域)+200W(高域) ▪周波数特性:52Hz〜20kHz(−10dB) ▪指向性:90°(水平)×60°(垂直) ▪最大音圧レベル:131dB SPL ▪外形寸法:376(W)×601(H)×348(D)mm ▪重量:15.8kg