「WALDORF 2-Pole」製品レビュー:CV制御可能なテーブルトップ型アナログ・マルチモード・フィルター

WALDORF2-Pole
ドイツの名門WALDORFから、アナログ・フィルター2-Poleの登場です。かなり以前このメーカーの4-Poleという製品がありましたが、今回はようやく盛り上がり始めた市場に投入される全く新しいフィルターといっていいでしょう。

ヌケの良いフィルターと強力なレゾナンス ひずみのコントロールも自由自在


大きさはお弁当箱サイズといった感じで、先にリリースされたシンセ・モジュールのRocketと共通です。プラスチック製のボディで、重さもさほどなく、持ち運びには良さそうです。電源は付属のユニバーサルACアダプターを使います。 信号はモノラル入出力で、アナログ・マルチモード・フィルターを搭載。モジュレーション・ソースとしてLFO、そして音源などに反応してトリガーするエンベロープがあります。入力段ではかなり大きなゲインを取ることができ、エレキギターなども直接接続可能。ライン・レベルではGainつまみを回すと大きくひずませることも可能です。シグナル・パスはすべてアナログ。フィルターはトゥルー・バイパス可能で、音質重視の設計です。 フィルター特性は2ポール、つまり−12dB/octですが、これは一般的な4ポールより緩やかな効き。その分、原音のヌケが出しやすく、実際この2-Poleのフィルターも質感がとてもアナログ的かつクリアです。S/Nも良く、Gainでひずませてもノイズが上がってくることはありません。 ただ、“緩やか”と聞くと、もっと過激に効くフィルターのほうがいいんじゃないかと思ってしまいますが、2-Poleのレゾナンスはかなり強力で、つまみを2時くらいまで回すともう発振してくるほど。フィルターのモードもローパス、バンドパス、ハイパスで切り替えられるので、音質のバリエーションも豊富です。 さらに、波形の下半分を上へ反転させるRectifyツマミやオーバードライブ感を加えるDriveツマミによってひずみ感をさらに調整することができます。感覚としてRectifyは中高域のひずみのカラー調整に、Driveはひずみの太さを出すのに使えます。特にDriveを回すとぐっと音が前に出てくるのがいいです。 印象的なのはハイパス(HP)モードが非常に秀逸なこと。個人的に気に入りました。普通は一番地味なモードですが、強力なバンドパスに負けないしっかりとした質感が得られます。もちろん3つのタイプともモダンなキャラクターで、汎用性のある扱いやすいフィルターだと思いました。

LFOやエンベロープで カットオフをモジュレーション可能


LFOの波形はサイン波のみですが、スピードのレンジを切り替えられます。かなり高速のFastからSlow、さらにGemütlich(ドイツ語で“心地いい”という意味)とあえて表記された超スローなLFOが、カットオフに対してかけられます。スウィープ感はかなり心地いいです。 エンベロープでは、まずゲートのように、入力した音のアタック部分からトリガーを抽出しています。この抽出されたトリガーをパーカッシブに短いパルス信号として取り出したり、ソースの長さに合わせてトリガーのオン/オフを決めたりが可能です。そして、このトリガーに対してアタック、ディケイ、ホールドを調整します。ハイパス・フィルターで音を完全に切った状態からエンベロープでフィルターを開かせるようにすると、ビート・スライサーとしても結構使えます。それと右下にあるTriggerボタンは、抽出されたトリガーの確認ランプであると同時に、指で押すことでマニュアルのトリガー・ボタンとしても動作します。 さらに2-Poleでは外部からエンベロープ、カットオフ、ゲートのCV信号を受けることができるため、モジュラー・シンセなどと連携させたりしても面白いと思います。やっぱりハードウェアのアナログ・フィルターっていいですね!
▲リア・パネル。左からDCイン(12V)、CV入力(Gate/Cut off、Env)、出力(フォーン)、入力(フォーン) ▲リア・パネル。左からDCイン(12V)、CV入力(Gate/Cutoff、Env)、出力(フォーン)、入力(フォーン)
サウンド&レコーディング・マガジン 2014年9月号より)
WALDORF
2-Pole
36,000円
▪外形寸法:185(W)×65(H)×185(D)mm ▪重量:1.1kg ▪付属品:Waldorf Edition LE(ソフト音源/サポート対象外)