「WAVES MetaFilter」製品レビュー:柔軟なモジュレーションやディレイを備えたフィルター・プラグイン

WAVESMetaFilter
今回紹介するMetaFilterは、名前の通り多機能なフィルター・プラグイン。フィルター市場は競合製品も多い中、満を持しての登場です。Mac/Windowsに対応し、AAX Native/Audio Units/RTAS/VSTプラグインとして使用することができます。

5種類のフィルター・タイプを用意
ステップ・シーケンサーでモジュレート可


まずはざっと画面を見ていきましょう。MetaFilterはステレオ/モノラルに両対応したマルチモード・フィルターで、アナログ・シンセからオシレーターを省いたような構造になっています。すべての操作を一画面で行えるユーザー・インターフェースを採用し、フィルターの種類はローパス/ハイパス/バンドパス/バンドリジェクト/コムに加え、フィルターを通さずにゲイン調整だけする“dB”モードも用意されています。ウィンドウ中央がフィルターのキモである“FREQ”(カットオフ)と“RES”(レゾナンス)セクション。その下にはテンポ同期も可能なディレイも用意されています。画面下は最大16ステップのシーケンサー・セクションで、MIDI音源を鳴らすためではなくフィルターの開閉やディレイのモジュレーション用に使います。なおモジュレーション・ソースにはこの“SEQUENCE”のほか、“LFO”やオーディオのエンベロープを検出してそれに反応する“FOLLOW”も用意されています。 

原音を損なわないスムーズな効き
アナログ・ディレイ風の質感も加えられる


フィルターは“SLP”スイッチで12dB/octと24dB/octのスロープ切り替えができます。この設定によって音色は随分と変化します。MOOGのようなキレの良いスイープ感を出したいなら24dB/oct側へ、OBERHEIMのようにヌケの良いフィルタリング効果を狙うなら12dB/oct側へセットするといいでしょう。音質は非常にアナログ的ですが、ビンテージ・シンセに見られるような暴れたニュアンスは無く、エグい設定にしてもひずみ感の少ないクリアなキャラクターです。原音の良さを損なわずにアナログ・シンセのフィルターのイメージを付加できるので、これならマスターにインサートして全体の音質を調整するのもアリだなと思いました。“FREQ”“RES”とディレイのモジュレーション・ソース=“LFO”“FOLLOW”“SEQUENCE”は、ツマミの周囲にある小さなレバーをそれぞれ動かすことで効果を調整できるように工夫されており、+側へ動かせば正相、−側へ動かせば逆相にかかります。また3種類のモジュレーション・ソースは同時に適用できるので、かなり複雑なフィルター・サウンドが得られます。“KBD”スイッチをONにすると受信したMIDIノートにカットオフを追随させることもでき、これをやると完全にモジュラー・シンセをいじっている感覚です。また画面右上には全体のニュアンスを調整する4つのツマミがあります。左右の広がり感を調整する“SPREAD”、シーケンサーでモジュレートしたときなどに出るカクカク感を滑らかにする“SMOOTH”、オーバードライブをかける“DRIVE”、ビット・クラッシャーの働きをする“CRUSH”を用意。どれも派手な効果が得られる印象です。前述したディレイもオマケではなく本格的な質感。“ANALOG”スイッチをONにするとアナログ・ディレイの特性が加わるのですが、普通に使っている分にはこの効果はさほど大きなものには感じません。しかし音が入ってきている最中にディレイ・タイムを動かすと、あの“キュルルルゥ〜”というサウンドが見事に再現されます。また“ROUTE”スイッチを上にするとディレイがフィルターの前段に入り、下にするとフィードバック・ループがフィルター通過後にかかるので、ニュアンスの違いを耳で聴いて決めるといいでしょう。最後にシーケンサーについても少々。デフォルトは16ステップですが、一番下にある横長のスライダーでステップ数が調整可能。4ステップぐらいにしてシーケンスを高速ループさせるとカッコ良かったりもします。さらにスウィング・ツマミや、描くようにカーソルを動かしてスライダーを調整できるDRAWスイッチも装備しています。 シンセに精通した方ならすんなりいじれるプラグインだと思います。工夫を凝らした面白いプリセットも充実しているので、そこから試してみるのも良いでしょう。各パラメーターはコントロール・チェンジ対応なので、MIDIコントローラーでリアルタイムにいじるのも面白いと思います。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年7月号より)
WAVES
MetaFilter
24,000円
▪Mac:Mac OS X 10.7~10.9.1、INTEL Core Duo 2.3GHz以上のCPU、4GB以上のRAM、1,0 24×768のディスプレイ解像度 ▪Windows:Windows 7/8、INTEL Core Duo 2GHz/AMD Athlon 64以上のCPU、4GB以上のRAM、1,024×768(32ビット以上)のディスプレイ解像度 ▪対応プラグイン・フォーマット:AAX Native、Audio Units、RTAS、VST