「MCDSP AE400」製品レビュー:ダイナミクス・コントロールができる4バンドのパラメトリックEQ

MCDSPAE400
“グリーンの顔”を持つプラグインの老舗メーカーMCDSPから、昨年9月に発売されたAE400は“アクティブ・イコライザー”という少し聞き慣れない名前が付いたプラグイン(AAX DSP/NATIVE対応)。簡単に言えば4バンドのパラメトリック・イコライザーそれぞれでダイナミクス・コントロールができるというもので、同社のMC2000などのマルチバンド・コンプとは一線を画する製品だ。どちらかと言えば、WAVES C4に近いイメージではあるが、とても興味深いのはこのAE400の基本はイコライザーであり、マルチバンド・コンプとは別次元の処理ができる点だろう。では早速レポートしていこう。

分かりやすいインターフェースで
低レイテンシー仕様


とてもコンパクトにまとまった印象のあるインターフェースは、パラメーターの配置が視覚的にも分かりやすい。メイン画面一番上にある“OUTPUT”がEQ GAINであったり、アクティブEQのかかる量を調整するパラメーターが“GAIN”であったり、AE400ならではの呼称はあるものの、直感的に理解しやすい並びになっている。本機は負荷がとても軽く、AVID Pro Tools|HDXシステムでは、サンプリング・レート48kHzで1DSPチップあたり、モノ=9個/ステレオ=7個も立ち上げることができ、APPLE MacBook ProでのNative環境によるチェックでは、80のステレオ・トラックにインサートしても余裕で動いてくれた。この手のプラグインにありがちなレイテンシーや負荷の心配をすることなく“ガンガン挿して使える”ところは、驚きとともにいい意味で予想を裏切られる格好となった。  

固定/アクティブを選択可能なEQ
サイド・チェインにも対応


基本の使い方は、各バンドで設定したEQゲインを基準に、そのポイントから“どの程度コンプレッションさせるか”を、各バンドに設置されたGAINによりコントロールする。つまり、このGAINが±0dBであれば、コンプとして動作することなく、スレッショルドを最大値にしたとしても“単なる固定されたEQでしかない”ということだ。つまりGAINで動作量を決め、あとはコンプ・セクションのパラメーターを使って“どのくらいアクティブにするか”を設定すればよい。コンプ・セクションには、スレッショルド(THR)と、それを逆に動作させるインバート(INV)スイッチがあり、これを使い分けるとなかなか面白いことができる。例えばバンド1でEQゲインを+10dBに、GAIN値を−10dB、そしてTHR値を最大に設定した場合、+10dBの位置から±0dBの位置に向けてコンプレッションが作用する。この状態でINVを押せば、0dBのところから今度はそのバンドのレベル感度に応じ+10dBに向けて増幅/伸張することになるわけだ。これによりある帯域の楽器を誇張したり、ボーカルの歯擦音に合わせてディエッサー的に使ったりすることができる。その効き具合を調整するのが、RATIO/ATTACK/RELEASEと考えればよい。さらにGAINはプラス方向にも働くので、INVとは別の意味で増幅/伸張させることも可能だ。少しややこしい説明になったかもしれないが、ドラム・ステムやミックス・バス用など、すぐに使えそうなプリセットが数十種類用意されているので、まずはそこから始めてみるのもいいだろう。初めて使う人でもセンターのグラフィックには動作状況がリアルタイムで表示され、かかり具合が視覚的にも確認できるので、少し慣れれば直感的に作業ができるようになると思う。またAE400はサイド・チェインにも対応。これは画面左上にあるカギマーク“KEY IN”より入力された信号によってアクティブEQを動作させるもので、例えば4つ打ちのキック音源をキーとして入力すると、そのタイミングで圧縮が行われるので、デヴィッド・ゲッタのようなEDMサウンドも作り出すことが可能だ。この機能はメイン・コントロール画面の各バンドの最下段にある“EXT”ボタンを押すことでオンになり、またその隣にあるスピーカー・マークのアイコンを押せば、キー入力された音源をモニタリングすることができる。これらはバンドごとに設定可能になるので、ある帯域だけ外部音源に従わせることも可能。イコライザー・セクションにあるQは極端に狭くもできるので、ポイントを絞ったエフェクトや広い帯域をオーバーラップしたコンプなど、いろいろな可能性を感じることができる。また、各バンドに“M”(マスター)、“L”(リンク)、“S”(ソロ)ボタンが用意されており、Lを押したバンドはMのバンドに追従させることができるため、エフェクトの幅をさらに広げることもできるだろう。 “パワフルかつサクサク動く”のに加え、工夫次第でさまざまな仕掛けを生み出せるAE400は、既にあるものを組み合わせてできた、クリエイターのイマジネーションをかき立てるプラグインだ。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年4月号より)
MCDSP
AE400
HD:オープン・プライス(市場予想価格36,200円前後) Native:オープン・プライス(市場予想価格25,200円前後)
▪Mac:Mac OS X 10.5〜10.8 ▪Windows:Windows 7/Vista/XP ▪共通項目:iLok 2 USB Smart Key ▪対応フォーマット:AAX DSP、AAX Native