
自然なかかり具合の4バンドEQ
低域を太くし高域にアタック感を付与
Summit Audio Grand Channelは、TLA-100AをシミュレートしたコンプSummit Audio TLA-100AとEQF-100をモデルにしたSummit Audio EQF-100から成るプラグイン・チャンネル・ストリップ。Mac/Windowsに対応し、VST/RTAS/Audio Units/AAX(Native/DSP)をサポートしています。コンプとEQは単体のプラグインとしても収録されているため、用途別に使い分けることも可能です。まずはSummit Audio EQF-100から見ていきましょう。これは4バンドのEQで、低域と高域についてはシェルビング/ピーキングを選択できるようになっています。各帯域には"BOOST/CUT"というスイッチが装備されており、これを"+"に合わせた場合は"GAIN"ノブで設定した音量をブースト、"−"に合わせるとカットできます。音質は素晴らしいものです。例えばドラム・セット全体の5.6kHz辺りを7dBほどブーストした場合、多くのEQではどれだけQ幅を調整しても、シンバルやスネアが"いかにもEQしました"という響きになりがちです。しかしSummit Audio EQF-100だと、同様の音作りを行っても、そのEQ臭さが全く出ないのです。ベースにも試してみたところ、56Hzと3.9kHzを5dB近くブーストすると程良い真空管風サチュレーションが加わり、低域は太く、高域には自然なアタックがプラスされ、音が前に出てきました。ほかのEQで同じような設定を作っても、このニュアンスは出せません。さらにボーカルにも試してみたのですが、SummitAudio EQF-100ならではのナチュラルなかかり具合を感じることができました。
コンプ部はローカットやサチュレーター
パラレル・コンプレッション機能を装備
続いてコンプのSummit Audio TLA-100Aを見ていきます。このプラグインでは画面上でアタック・タイムを調整することにより、コンプはもちろん、リミッター的なかかり方も作り出せます。アタック・タイムは"ATTACK"スイッチで設定。"FAST" に合わせるとアタック・タイムの速いリミッター的なかかり具合を得られ、"SLOW"を選ぶとアタック・タイムが緩やかになり、コンプとして扱えます。デフォルトでは、スイッチは真ん中に位置しており、"FAST"と"SLOW"の間を取ったようなかかり具合となっています。これと同様に、リリース・タイムもデフォルト値と"FAST" "SLOW"の3種類を切り替えられます。音質はファットで、かかり方はとても自然。音ヤセすることは無く、どんな音でもまとまりよく前に出してくれます。ただし、アタックやリリースをデフォルトから変えると激しく音が変化するため、かけ録りなどで使用する場合は注意が必要です。独自の機能としてはローカットやサチュレーター、パラレル・コンプレッションが挙げられます。すべて実用的なスグレモノです。ローカット機能は純粋なローカットとして使えるほか、低域にコンプをかけないサイド・チェイン用の信号としても動作。サチュレーター機能は、音に真空管の質感を与えない"CLEAN"から自然な真空管の質感を加える"NORMAL"、サチュレーションをプラスする"HIGH"まで連続可変で調整できます。パラレル・コンプレッション機能では原音とコンプ音をミックスすることで音作りが行えます。
Summit Audio Grand Channelでは、ビンテージ・トランスの質感までもがうまく再現されています。つまり、通すだけで音が変化するのです。具体的には、低域が全体的に太くなりつつも超低域はカットされ、高域にかけてなだらかに減衰していきます。総評としては、プラグインとして非常にうまくまとめられている印象で、どんな用途でも使いやすい仕上がりだと思いました。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年10月号より)