
ドラム音源のDrumShaperでは
キックのレイヤーが簡単に実現
Electro Suiteは、スタンドアローンのほか、Audio Units/RTAS/VST/MAS対応のソフト音源。4つの音源とループ素材を含むトラック制作のためのツール、即戦力のサウンドを豊富に収録したライブラリーによるコンストラクション・キットから構成されています。音源は、オリジナルのドラム・サウンドを生成しリズム・パターンの作成もできるDrumShaper、ダーティなサウンドのモノフォニク・シンセサイザーでステップ・シーケンサーも備えたDirtyMONO、かつて無いほど簡単で強烈なポリフォニック・シンセサイザーCarminePoly、ノイズ・スイープが瞬時に完成するSweepMachineの4つ。そしてコンストラクション・キットのループ素材をパートごとに選んで組み合わせるだけで、簡単にトラック制作ができるツールMissionControlがあり、これらをUVI Workstationにロードすることで、ソフト音源として操作できるというものです。順に見ていきましょう。まずはドラム音源DrumShaper。これはキック、スネア、ハンド・クラップ、ハイハットに特化した音源で、画面最下部にあるBD(キック)、SD(スネア)、CLAP(クラップ)、HH(ハイハット)というボタンを押すことで、それぞれのサウンドのエディット・モードに入ります(画面①)。
▼画面① DrumShaperはElectro Suiteの要とも言えるビート制作のためのドラム音源。操作方法はシンプルで最下段の左にあるボタンBD(キック)をはじめ、右に順次SD(スネア)、CLAP(クラップ)、HH(ハイハット)と並ぶボタンを選択して、各ドラム・パートへアクセスするという分かりやすさ

ダーティな音作りが得意なDirtyMono
派手な音作りが得意なCarminePoly
最初に紹介する音源でいきなり熱くなってしまいました! 続けてどんどん見ていきましょう。強烈なモノシンセDirtyMonoは4つのオシレーターで構成されており、画面右下の"SYNTH"選択時が操作画面になっています。VCO1はノコギリ波、矩形波、そのミックスと、ダーティなサウンド作りに適した波形を用意し、VCO2ではいかにもエレクトロな鳴りのデジタル音、SUBとNOISEはその名の通りのサブベースとホワイト・ノイズを出力します。それらをローパス・フィルターに通しますが、FILTERノブの右側にあるDRIVEがまたいい感じで音を荒らしてくれます。そしてエンベロープ、LFO、ポルタメントといった必須のパラメーターに加え、FILTERとLFOにあるMODWHEELというボタンがまた絶妙。MIDIコントローラーのモジュレーション・ホイールの使いどころがピンと来る感じです(画面②)。FXページではやはり汚し系のBIT CRUSHERがトップを飾り、フェイザー、ディレイ、SPARKLE(リバーブ)のエディットが可能。はっきり言ってキレイなシンセ音など一切出ません! 20種類ある即戦力なプリセットがそれを如実に語っています。PHRASERページのステップ・シーケンサーでフレーズを記録することも可能です。
▼画面② モノシンセDirtyMonoのFILTERとLFO部分に備えられているMODWHEELボタン(FILTERは中央上/LFOは黄色部分)。FILTER部でこのボタンをオンにすると、MIDIコントローラーのモジュレーション・ホイールでカットオフ値を操作できるようになり、LFOではその深さをコントロールできるようになる

▼画面③ ポリシンセCarminePolyのフィルター部。特筆すべきは一番右側の真ん中にあるOFFSETで、VCO1/2のカットオフ値の間隔を半音単位で設定することができる

スイープ音を生成するSweepMachine
手早くトラックができるMissionControl
SweepMachineは現在のダンス・ミュージックに必要不可欠なスイープ音を作るためだけのシンセサイザー。3種類のノイズを組み合わせ、スイープする長さを小節単位で指定するだけ。こんな便利なシンセって今までありました? 基本のノイズ・オシレーターでは、ホワイトとピンク以外にもブラウン、ブルー、バイオレット、ロスラー、ローレンツなど特殊なものも含めた9種類のノイズから選択可能。そしてサブノイズ・オシレーター、さらに25種類のメタリックなカラーを加えるオシレーターMETALがあります。それぞれにローパス/バンドパス/ハイパスのフィルターを選ぶボタンとQツマミがあり、スイープ・コントロールでスイープする長さを小節単位で設定します。最長で16小節。スイープが入っていくのか抜けていくのか、あるいはその両方なのかをボタンでセットします。それをLFOで揺らせるし、フランジャー、ディレイ、リバーブを加えることも可能。これまでスイープ音作りに費やしてきた時間は何だったんでしょう? "こんなのがあればいいのに"っていうアイディアを余すところ無く取り入られていて、余計なものが一切ありません!MissionControlは上記のシンセサイザー類とは違い、Electro Suite付属のコンストラクション・キットを操作するためのツールです。BD+SD(キックとスネア)、HH(ハイハット)、PERCS(パーカッション)、BASSLINE(ベース・ライン)、SYNTH1(シンセ1)、SYNTH2(シンセ2)の6つの各パートに同梱されたサンプル・ライブラリーを選ぶだけで、サウンドが自動でマッチしてミックスできるというものです。各パートにはボリュームやパンのほかに独立したローパス/ハイパス・フィルターがあり、チューンやオクターブ・シフトもできるので、初心者はもちろん、とにかく手早くエレクトロの曲が必要な仕事人まで、満足のいくトラック作りが瞬時に行えます。ほかにもUVI Workstationに直接読み込んで使用できるサンプル、ループ、ワンショットが膨大にあり、どんな制作スタイルもフォローする万全の装備。個人的にもテクノを作る上でDrumShaperとSweepMachineが当面手放せない存在になりそうです!
(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年6月号より)