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SWAMエンジンを搭載したリアルな表現力のソプラノ・サックス音源

SAMPLE MODELINGMs. Sax S.
管楽器を中心に、高品位なアコースティック音源をリリースしているSAMPLE MODELINGから、待望のソプラノ・サックス音源MS. Sax S.がリリースされた。プラットフォームをこれまでのKontakt2エンジンから新開発のSWAMエンジンに変更し、ますます完成度の高い音源になっている。

演奏に対するきめ細かい反応により
管楽器特有のフレージングが行える


Ms. Sax S.はソプラノ・サックスにターゲットを絞った、Audio Units/VST対応のソフト音源。同社のほかの音源同様、サンプル・モデリングと名づけられた独特の技術によってリアルなサウンドを実現している。これは、プロのプレイヤーによって演奏されたさまざまな強弱のサンプルを基にしつつ、演奏時にはIRやモデリングの技術を応用した変形をリアルタイムで加えることで、生楽器らしい音色変化を実現する技術だ。詳細は明らかにされていないが、いわばサンプリングのリアリティと、モデリングのフレキシビリティのいいとこ取りのような方法と言えるだろう。音源はプラグイン方式なのでDAWとともに使用する。すべてをサンプルに頼らないので、容量は小さめでサクっと立ち上がる。プリセット・パッチは、キーボード演奏用もしくはAKAI PROFESSIONAL EWIなどのウィンド・コントローラー用の二種類。基本的に両者は同じ音色で、演奏(コントローラー)に対する挙動が異なるだけ。いわゆるサンプリング音源にあるような、ブライトやソフトといった音色パッチが存在していないのは、これ自体がすべての音色を内包した楽器だという自信からだろう。なお、動作には、エクスプレッション・ペダルもしくは、ブレス・コントローラーが必須で、それらからの信号が無いと注意メッセージが表示される。このあたりも演奏し、コントロールして初めて価値を発揮するのだという強いポリシーがうかがえる。さて、まずは鍵盤だけで普通に演奏してみた。この時点でも、ほかの音源とは一線を画す存在だというのが分かる。ベロシティに対して強弱が無段階に変化し、音色変化も含めて段差は全く感じられない。レガートで弾くと音の切れ目は無く滑らかなフレーズでつながるし、逆にスタッカートにするとタンギングがついてはっきりと一音ずつ発音される。さらに、素早くレガートで演奏するとポルタメントがかかり、管楽器特有のいい感じで音程の甘いフレージングになる。ポルタメントのタイムが強弱によって変化するのも実に自然だ。また、連打しても機械的にならないように、音色が微妙にバラついてくれる。サックスにはかかせない、トリルや装飾音などを交えたフレージングを行うと効果抜群で、滑らかな音程の移行とデリケートな音色変化により、鍵盤を感じさせないエモーショナルなサウンドが得られる。鍵盤と併せて先述のコントローラーも使うと、さらに表現力が増す。エクスプレッションによる強弱変化も無段階で、音色変化を伴うクレッシェンドはとても自然だ。ベロシティとの併用もよく考えられていて、鍵盤を弾いた強さから、自由自在にクレッシェンド(デクレッシェンド)が行える。モジュレーション・ホイールによるビブラートも、LFOによる機械的なそれとは違い、音色とピッチの両方が揺らぐリアルなものだ。さらに、別のコントローラーやアフター・タッチ、キー・スイッチ(演奏に使わない低音の鍵盤によるコントロール)も追加できる。これらにより、サブトーンを加えて強く振動させるように吹いてブロウしたような音色にしたり、吹き過ぎてオーバー・ブロウし、オクターブがひっくり返ってしまうような効果や、音の切れ際でピッチが下がるフォール・ダウン、素早く断続的に音を切るフラッター・タンギングなども思いのままに行える。

新搭載されたSWAMエンジンは
明快な操作性と軽い動作が魅力


演奏中の音源の状態はウィンドウ中央にリアルタイムで表示される(画面①)。何でもないことのようだが、これが実に使いやすさに貢献している。まず、さまざまなコントロールが今どのようにかかっているかが、棒グラフで表示される。ビブラートの深さはどうなのか、エクスプレッションの値は現在どの辺りなのかなどが一目瞭然だ。併せて、レガートで動作しているのかスタッカートなのかといった動作モードもその都度文字で明示される。さらに強弱の値も刻々とグラフィック表示される。つまり、現在の音源の挙動が、音だけでなく目でも確認できるわけだ。

▼画面① メイン画面中央の拡大画像。動作(ここではレガート)、ベロシティ、エクスプレッションなど演奏中の状態が、視認性良くウィンドウ中央に刻々と表示される


こういったモデリング系の音源では、演奏時に複合した動作が起きるために、鍵盤をどう弾けばどんな音になるのかが分かりにくく、同じ演奏を再現できないという事態が起こりがちだ。せっかくいい感じの演奏ができても、なぜそうなったのか分からなければ意味が無い。その点、このSWAMエンジンでは動作状態を明確に示してくれるので、非常に見通しがいい。欲しい演奏やサウンドに素早く到達できるだろう。また、SWAMエンジンでは、音色のエディットも簡単だ。メインになるインストゥルメントのモデルを選んだら、リードの固さによる余韻の残り具合や共鳴ポイント(フォルマント)などを調節。さらに、演奏中にリアルタイムでも変更可能なブレス・ノイズやキー・ノイズの含み具合、奇数/偶数倍音の割合などを直接数値で指定したり、リバーブやコンプなどのエフェクトを加えることも可能だ。これだけで完成度の高い音色を作成できる(画面②)。

▼画面② 新たに搭載されたSWAMエンジンはキーボード、ブレス/ウィンド・コントローラーといった多くのMIDIデバイスに対応。画面の詳細なパラ メーター設定により、ビブラートなどの奏法に対して細かなニュアンスを付加でき、それらをMIDIコントローラーにアサインすることが可能


基本的なパラメーターは、サンプラーやシンセのようなエンベロープやフィルターではなく、実際の楽器に根ざしたものなので、どのように調節しても破たんが無く、つまみを適当にいじっていても説得力のある音色が作成できる。また、SWAMエンジンは操作性だけでなく、動作自体も非常に軽く、複雑なリアルタイム処理も素早くこなすので、演奏に対するレスポンスにも全くストレスを感じさせない。


最近のアコースティック楽器系の音源では、楽器特有の音色変化やフレージングをテーマにしたものが増えている。そんな中でも、本製品はトップ・レベルの表現力と使いやすさを備えた音源と言えるだろう。サウンドのナチュラルさとともに、演奏に対する挙動が良く整理されていて素直なので、習熟が容易で表情豊かな演奏が簡単に手に入る。これまでフレーズ・サンプルを使うしかなかったようなリアルなメロディや、リフのループも作成できてしまうだろう。ブラス系音源の導入を考えている人は要チェックだ。

サウンド&レコーディング・マガジン 2012年6月号より)
SAMPLE MODELING
Ms. Sax S.
15,750円
▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.5〜10.7(INTELプロセッサーのみ)、1.6GHz Core 2 Duo以上のプロセッサー、1GB以上のRAM(2GB以上を推奨)、Audio Units/VST対応アプリケーション(32/64ビット対応)▪Windows/Windows XP(32/64ビット)/Vista(32/64ビット)/7(32/64ビット)、1.6GHz Core 2 Duo以上のプロセッサー、VST対応アプリケーション、1GB以上のRAM(2GB以上を推奨)●共通項目/MIDI CC#11の送信が可能なMIDIコントローラー(必須)、インターネット接続環境(インストーラーのダウンロード、およびオーサライズ時に必要)