16種類のデジタル・エフェクトを備えた小型PA用パワード・ミキサー

WHARFEDALE PROPMX700
イギリスの老舗プロ・オーディオ・メーカーであるWHARFEDALE PROから超軽量&コンパクトなパワード・ミキサーのPMX700が発売された。本機に関しては、プロ機というより簡易PA市場に向けた製品のようだ。ただしそこは老舗ブランド、どのように仕上げてきたのだろうか?

3バンドEQは分かりやすい効き方をする
モニター送りとエフェクト送りにも対応


本機は6chマイク入力(モノラル)+2chステレオ入力という仕様に、16種類のデジタル・エフェクター、2系統の7バンド・グライコ、モノラル・チャンネルにそれぞれ3バンドEQを搭載したパワード・ミキサー。まずは、入力部分から見てみよう。各チャンネル(モノラル)ごとにマイク用のXLR端子、ライン用のTRSフォーン端子を備えている。ほかにも1系統のステレオ入力(TRSフォーン&RCAピン)も用意。出力は、フロント・パネルにRECアウト(RCAピン)、ミックスL/Rアウト(TRSフォーン)、モニター・アウト(TRSフォーン)、リア・パネルにはスピーカー・アウト(スピコン)、ファンタム電源も装備している。また、各チャンネルにあるXLRとTRSフォーンは同時に使用することが可能だ(ステレオ入力部分も同様)。続いては3バンドのEQ部分。ハイ:12kHz、ミッド:2kHz、ロー:100Hz(それぞれシェルビング)に、±15dB可変とツボを押さえた仕様。効き方はというと"回せば効く"といったDJミキサーのような分かりやすさが好印象だ。特筆すべきはミッドの2kHzは特にハウリングを起こしやすいポイントなので、良いチョイスと言えるだろう。各モノラル・チャンネルはマスター・アウトのほかに別途モニター・アウトへ送ることができ、パネルの青いツマミで音量を操作する。また内蔵のエフェクト送りにも対応しており、パネルの赤いツマミで調整することができる。ステレオ・チャンネルのEQはローとハイ(100Hz、12kHz)のみで、エフェクト送り、モニター送りをモノラル・チャンネルと同じように備えている。ステレオ・チャンネルには先述した通りTRSフォーンとRCAピンの2つの入力端子を備えており、例えばキーボードなどの楽器を接続した弾き語りライブで使用することも想定できる。

16種類のデジタル・エフェクトを搭載
7バンドのグライコは帯域の選択が秀逸


1系統の内蔵エフェクトは16種類を用意しており、パラメーターの調整はできないが、なかなか実用的なプリセットが用意されている。リバーブ(ホール×2、ルーム×3、プレート×3)、コーラス、フランジャー、ディレイ×2、コーラス/ルーム×2、ボーカル・キャンセラー、ロータリー・スピーカーの計16種類。特に空間系エフェクトは実用的で十分なかかり方だ。一括バイパス・スイッチもあるので、演奏者の手元に置いて操作する場合は、MC時にエフェクトをカットすることも容易に行えるだろう。この内蔵エフェクトもモニター・アウトへ送ることが可能だ。次はグライコと2系統のパワー・アンプをチェック。7バンドのグライコは2系統備えられており、本体のパワー・アンプ部にのみ作用し、ミックスL/Rアウト、RECアウト(RCAピン)には作用しない。秀逸なのは7バンドという制約の中での帯域の選び方だ。60Hz、120Hz、480Hz、1kHz、4kHz、8kHz、16kHzの7ポイントで、中低域に2オクターブの間があるが、最近のスピーカーに多い低域部分がダイレクト・ラジエイター型で高域部分がホーン型を採用している場合、構造上120Hz~480Hzの間は特性の暴れが少ない。つまりグライコでの補正はあまり必要無いという判断だろう。1kHz~4kHzの間隔も、チャンネルEQのミッド(2kHz)と併用すれば十分との判断だと思う。高域は4kHz、8kHz、16kHzと十分だ。パワー・アンプ部は、4Ω負荷時に150W(クラスD)を2系統搭載し、140W時から効くリミッターを内蔵している。通常はL/Rのメイン・アウト用として使われるのだが、フロント・パネル右側にある"Amp Mode"と書かれたスイッチをAの方へ切り替えると、モニター・アウト用になり、逆にBの方はメイン用となる。このとき、グライコもそれぞれに割り当てることができる。マニュアルには出力が4Ω時に150Wとあるので、8Ω時は100W弱程度になるが、高能率なスピーカーと組み合わせれば、十分な音量が得られるだろう。クラスDアンプのためか発熱も少なく、本機の上部に放熱用のスリットは無い。このため野外での使用時に雨の心配が無くなる。また、重量が5.45kgと軽量なのも魅力。注意すべき点としては、ツマミ類が本体より3mmぐらい突き出しているので持ち運ぶ際には気を付けてほしい。正直、レビュー前は"WHARFEDALE PROから簡易パワード・ミキサー?"と思ったのだが、製品マニュアルには本機初段にディスクリート部を持つことが分かるブロック・ダイアグラムが付いていたりと、イギリスの老舗メーカーらしい誇りを感じた。

▼リア・パネル。上からスピーカー・アウト(スピコン端子)、その下の2つのスイッチは左が電源、右がファンタム電源、最下段は電源コネクター




サウンド&レコーディング・マガジン 2011年12月号より)
WHARFEDALE PRO
PMX700
71,400円
▪最大出力レベル/+22dBu▪歪率/0.4%@40Hz〜20kHz 100w/4Ω(スピーカー出力)、0.02%@20Hz〜30kHz+14dBu(ミックス出力)▪外形寸法/392(W)×261(H)×243(D)mm▪重量/5.45kg