充実した内部処理機能
専用ソフトの使い勝手も抜群
本機はデジタル機で、内部処理は最大32ビット/192kHz。レビュー前から"音が恐ろしく良い"と聞いていたので、相当ゴツい物が来るかと思いきや、1Uのボディに非常にシンプルな操作子。ミュート・セレクト・スイッチを除けばジョグ・ダイアルと6つのスイッチだけです。入出力はXLR端子で、一部はアナログとAES/EBUを兼任。アナログ/デジタル共に最大4イン/8アウトの接続が可能です。内部ルーティングもミックス・マトリクスで任意に設定できます。しかも本機がすごいのは、入出力にアナログとAES/EBUを混在させられる点(入力1&2はアナログ、入力3&4はデジタルという風にペアで使い分けが可能)。これまでのプロセッサーはこうしたデジアナの混在ができないものが多かったことを考えると、かなり使い勝手が良いです。機能面に目を移すと、各チャンネルのインプット段にはアライメント用ディレイ、30バンド・グラフィックEQ、多様なQ幅をチョイス可能な12バンド・パラメトリックEQ、コンプを装備。アウト段はディレイ、IIRフィルターやFIRフィルター(近日対応)を基盤としたクロスオーバー、12バンド・パラメトリックEQ、レベル調整、2段階リミッターなどを備え、非常に多機能です。本機はタブレットPC(Windows)からコントロールすることも可能なので、両者をイーサーネット・ケーブルでつなぎ、本体の電源をON。するとまばゆいばかりのLEDが点灯し、30秒くらいで動作モードに。本体ディスプレイはアイコン表示ですが、タブレットPCの専用ソフトウェアIntelli-Wareは非常にグラフィカルで誰でも簡単に操作できそう。このソフトでは各種パラメーターの操作はもちろん、入力チャンネルのギャンギング(設定のリンク)や、オフラインでのセットアップ保存、さらにログも残せます。プリセット・ライブラリーも用意されており、"今日はメインとサブで2ウェイだけど、明日のスピーカーは4ウェイ"という場合でも、プリセットを選んで微調整するだけでOKです。
高域まで奇麗に伸びた出音
優れた分離感/情報量の多さは圧巻
今回は、4インを生かして入力1&2へメインL/Rを接続し、さらに実験的に入力3にキック、入力4にボーカルをつないでみました。バンド自体はごく普通のキーボードが入った5ピースのロック・バンドです。ここではあえてタブレットPCを使わず、本機のみの操作で使用してみました。まず、簡単に推奨のクロスオーバー設定にして音を出してみます。半端ないスピード感です。アナログ卓からデジタル卓に変わったときと同じ衝撃を受けました。非常にクリアで、分離感、情報量の多さに圧倒されました。こんなに粒立ちが細かいのに1つ1つの音に芯があり、これなら生音にマスキングされにくいのでむやみやたらに音量を出さずに済むでしょう。デジタル特有の高音のギラつき感は無いのに、かなり高域まで上品で奇麗に伸びている印象を受けます。次に内蔵EQを使用したところ反応がとても好感触。0.5dBの差も如実に出音に反映されるため、オーバーEQも無くなるでしょう。オペレーターは"思った音質"を即座に再現できます。メイン・スピーカーの調整が済んだので(ここまでで15分足らず)、続いて入力3&4の単音を聴いていきます。通常、筆者はキックに2本のマイクを立ててアタック感と低域感を調整するのですが、今回の入力3はマイク1本のみで、本機でアタック用のハイ(400Hz以上)と低域用のロー(85Hz以下)へディバイディングした後、卓に戻して音作りするという実験に挑戦。結果、コンプでパワー感を安定させ、EQで調整するだけでCDのようなキック・サウンドを得ることができました。これは本機の解像度&スピード感の成せる業です! また、入力4につないだボーカルに関しては、本機をアウトボードに見立て、内蔵のEQとコンプをかけて卓に戻してみました。すると圧倒的な存在感が音にプラスされました! まさに"通すだけでも音が良くなる"という印象です。無限の可能性を秘めたIntelli-X2 48。代理店さんいわく"ソフトも仕様もまだまだバージョン・アップする予定"と、さらに良くなるそうです。本機が世界の主流になる日は、そう遠くないかもしれません。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2011年8月号より)