入力はXLR/フォーンに加えRCAピン
100Hzのクロスオーバーも内蔵
GXシリーズはコスト・パフォーマンスに優れる上に軽量・コンパクトであることから、小規模な仮設PAシステムにはぴったりです。さらに本機は、奥行きが257mmとクラス最小で重量は7.7kg。同社上位シリーズPLX2のスイッチング電源と同等の電源部を搭載したことで実現したこの軽さは、設置の手軽さに貢献してくれます。デモ機が送られてきたとき、箱も小さかったのですが、本機を取り出してみて最初に出た言葉が"小さっ!軽っ!"でした。
そのように軽量かつコンパクトでありながら、GX7は一台で1,000W×2ch(4Ω)の高出力を誇ります。出力回路はクラスHで、出力に応じて消費電力を可変するシステム構成。電源効率も高いです。基板を天板からつり下げる形になっており、ホコリが基板に積もりにくい設計になっていることも特徴的です。
続いて外観に移りましょう。フロント・パネルにはシンプルに出力レベルのツマミ、CLIP/SIGNAL/POWERのランプ、電源スイッチとなり、吸排気は両脇にあります。通常のパワー・アンプは"前面吸気/後面排気"の形状が多いですが、このGXシリーズは左吸気・右排気となっています。
そしてリア・パネルを見ると、入力端子の豊富さに驚かされます。XLRとTRSフォーンは普通ですが、独特なのがRCAピン端子が搭載されているところ。このことから、あらゆるシチュエーションに対応するマルチパーパス・モデルを意識していることがうかがえます。実際にPAの現場でRCAピンを使用することはほとんどありませんが、あらゆる現場に対応するという意味ではありだと思います。例えばDJミキサーからの出力や、コンピューター用のオーディオ・インターフェースからの出力などを直接接続できるため、よりシンプルで手軽なPAシステムを組むことが可能なのです。ちなみに出力はNEUTRIK製のコンボ・タイプ・スピコンを搭載しています。また特徴的なのは、100Hzのクロスオーバーを内蔵していること。リア・パネルのスイッチを入れることで、ch1をLF、ch2をHFとして使用することができるので、コンパクトなシステムを構築しながら、将来のシステムのバージョン・アップにも簡単/手軽に対応することが可能です。
低域から高域のつながりが良く
全体的にフラットな音の印象
それでは実際に使用してみましょう。今回は12インチ・ウーファー+2インチ・ドライバー構成のフル・レンジ・スピーカー(定格入力600W/8Ω)を鳴らしてみました。SN比はとても良好で、上位クラスと比べてもそん色ありません。
押し出し感はあまりありませんが、低~高域までのつながりも良く、全体的にフラットだと感じました。低域に関してはダンピングもよく効いて、締まったキックを聴くことができます。その反面、中〜高域は多少広がりがある感じ。音像がぼやけることは無いのですが、飛んでくる感じはあまりなく、包み込むような中~高域になります。これは良しあしの話ではなく、用途の問題だと思います。PAやレコーディングをしていると、どうしても押し出し感を求めてしまいがちですが、このパワー・アンプはリスニングに使用しても聴き疲れが無く、むしろ心地良くソースを聴くことができるでしょう。前述したDJミキサーからの直接入力でもバランス良く聴くことができると思います。最近のPAシステムのカツカツ感に疲れた場合に癒しを与えてくれるかもしれません。
とにかく"軽量/コンパクト/高出力"という最新のトレンドを追った構成になっていますが、そのサウンドの方も、クラスを超えています。実際に所有すれば、あらゆるライブの現場で使える上に、重量も軽いので、稼働率は高くなることでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2011年8月号より)