クリアで豊かなサウンドが特徴のCompact Phasing"A"の再現機

MODE MACHINESKRP-1 Krautrock Phaser
単体のフェイザーというと、既に過去のもので目新しいことは無いかのように思うかもしれないが、KRP-1 Krautrock Phase(r 以下KRP-1)は例外だ。エレキギターやエレピが古くならないのと同様、スタンダードなエフェクトとして常用できるだけの深さを持った機材なのである。

Compact Phasing"A"を完全再現し
さらに2つのペダル端子を新搭載


KRP-1を作ったMODE MACHINEは、以前MUSIC AND MORE(MAM)という会社でアナログ・シンセを作っていた人たちが新たに2010年に設立したドイツのメーカーで、"デジタルのテクノロジーを使って、良いアナログ機材をフェアな価格で提供する"ことを目的としている。本機以外でもFAIRCHILDのコンプレッサーのレプリカ、アナログ・シンセ、ROLAND TB-303のクローンなど、気合の入った製品を出している。そしてKRP-1は、1970年代にGerd Schulteによって作られたCompact Phasing"A"をモデルにしている。このドイツ製フェイザーは、クラウス・シュルツ、クラフトワーク、ピンク・フロイド、ディープ・パープルなどに愛された独特のサウンドを持つエフェクターで、レアなビンテージ機材として人気が高い。KRP-1はCompact Phasing"A"を正確にコピーし、さらに後述の2つのペダル端子などの機能を追加している。箱から取り出すと、かなり大きく重く、既にアナログ感満載だ。トップ・パネルには、オン/オフのフット・スイッチ、オン時に点灯するグリーンのライト、4つのツマミ、エフェクトの状態を示す赤のライトがある。4つのツマミを左から説明すると、


  • PHASING......位相を動かす幅(Sweepと呼ぶ)を決める。バック・パネルのAUTO/MANUALスイッチがAUTOのときは、効果音の位相(Phase)は0からツマミ位置までの範囲を動き、Manualの場合はPHASINGのツマミの位置に固定される。

  • OSC. PERIOD......Sweepの速さを決める。左に振り切ったときが一番速い。バック・パネルのAUTO/MANUALスイッチがMANUALの場合は、このツマミは効果無し。

  • FEEDBACK......効果音をインプットに戻す。このツマミを上げていくと効き目が上がっていき、振り切る前で発振して"ピー"という笛のような音が出る。この音の高さはPHASINGのツマミでコントロールできる。

  • MODULATION......"秘密のツマミ"と呼ばれ、ステレオ出力のときにのみ効果がある。音を聴く限りでは、左右の出力で微妙に位相差を付けているようなのだが、設計者自身"CompactPhasing"A"を忠実にコピーしたために付いているツマミで、正確な機能は分からない"と言う。


リア・パネルにはACアダプターとの接続端子、AUTO/MANUALスイッチ、インプット(モノラル)、アウトプット(L/R)のほかにコントロール端子が2つある。AMOUNT端子にTRSフォーン接続のエクスプレッション・ペダルをつなぐと、Sweep0からトップ・パネルのPHASINGの位置までSweep量のコントロールができる。RATE端子の方は、Sweepの速さを最速からOSC. PERIODのツマミの位置まで連続コントロール可能。

▼リア・パネル。左からAUTO/MANUALスイッチ、AMOUNT入力(フォーン)、RATE入力(フォーン)、OUTPUT R/L(フォーン)、INPUT(フォーン)、電源スイッチ



広い発音レンジとクリアで腰の太い音
ツマミやペダルで音程を付けた演奏も良し


KRP-1にさまざまな楽器や音源を接続して試してみた。インプットはフォーン接続で、インピーダンスの切り替えも何もないのだが、ギター、ベース、キーボード、APPLE iPodなどいろいろな機器を直接接続しても何も問題無かった。印象的なのは、ほかのフロア式のフェイザーと異なって低い周波数から高い周波数までレンジが広く、クリアで豊かな音がすることだ。アナログ機らしい腰の太さもある。マニュアルに代表的なセッティングが幾つか載っているので、そこからスタートしていろいろ工夫していると、興味が尽きない。エレキギターやエレピといったベーシックな楽器では、かけっぱなしで使える音色が幾つでもできる。音色に味があるのだ。また、上モノのパッド類やオケ全体に軽くかけてもとても効果的で、飽きが来ない。また、AMOUNT端子にペダルをつなげてワウ・ペダルのように使うのもお勧めだ。ジャンルでいえば、テクノ、フュージョン、ソウル、エレクトリック・ジャズなどにはど真ん中の機材だろう。FEEDBACKを上げ過ぎると発振し急に巨大な音が出るので注意だが、逆にこれを効果音として使うのもあり。PHASINGツマミやペダルで音程を操作して演奏すると楽しいので、ぜひ実際に手に取っていろいろ試してみてほしい。時間が経つのを忘れて遊べる、魅力的なエフェクターである。

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年8月号より)

撮影/川村容一

MODE MACHINES
KRP-1 Krautrock Phaser
オープン・プライス (市場予想価格/ 45,000円前後)
▪外形寸法/176(W)×75(H)×235(D)mm▪重量/1.9kg