Octa-Captureと同じプリアンプを備える小型USBオーディオI/O

ROLANDQuad-Capture
ROLANDの新しいUSBオーディオ・インターフェースQuad-CaputreはCaptureシリーズの中位にあたるもので、そのルックスからEDIROLブランドのUA-25の後継機という印象を受ける(実際、品番はUA-55)。しかし、実際にその性能を見ると、上位機Octa-Captureの機能をかなり引き継いだ実力派なのである。

高品位VS Preampを2基搭載
デジタルの利点を最大限生かした設計


コンピューターとの接続はUSB2.0で、アナログ入出力が各1系統、S/P DIF入出力が各1系統の計4イン/4アウト(192kHzの録音/再生はアナログのみの2イン/2アウト)。ほかにヘッドフォン出力が1系統ある。入力はおなじみのXLR/TRSフォーンのコンボで省スペースだ。リア・パネルにはMIDI IN/OUTも装備している。付属ソフトはQuad-Capture設定用のコントロール・パネルとSonar LEである。Quad-Captureで最大のトピックは、上位モデルOcta-Captureと同じVS Preampを2基備えていることだ。同社の最上位システムSonar V-Studio 700の回路をベースにしたクラスA仕様のマイクプリで、入力からAD変換までは可能な限りアナログ回路を排し、内蔵DSPでデジタル・コントロールとすることで、不要な音の変化を抑制。またアナログ/デジタルの回路を別の基板にすることでノイズやクロストークも防いでいる。この内蔵DSPでは、後述するAuto-Sensや入力段でのコンプ、ローカットなども行える。またインターフェース側からクロックを生成する"VS Streaming"技術で低レイテンシー/低ジッターを実現。さらにUSBバス・パワーの電源を安定させるために専用のDC/DCコンバーターを用い、各回路に最適な電源を供給している。黒を基調としたルックスは落ち着いていて高級感がある。余計な出っ張りのないシンプルなデザインで、570gという重量は軽く感じる。フロント/リア・パネルの接続端子、ノブ、スイッチ類も適度に余裕のある配置で扱いやすい。リア・パネルにはHi-Z、ファンタム電源、グラウンド・リフト(ライブ時などのグラウンド・ノイズ回避用)と3つのスイッチがあるのだが、これもトップ・パネルにスイッチの位置が記されているので、裏をひっくり返さなくても場所が分かるのが親切だ。

入力感度を自動調節する
Auto-Sens機能を搭載


早速ドライバーをインストールして本機の音を聴いてみた。クロックはQuad-Captureから供給し、ASIOでバッファー・サイズは96サンプル(USBインターフェースとしては低めの設定)にしてみた。エレクトロからクラシックまで、いつものサウンド・チェック用の曲を試した感想は、素直で余計な色付けのない、ハイファイな音という印象。次にサイン波のスウィープで試してみたが、特にピークはなく低音から高音までフラットに出ている。感心したのは、ヘッドフォン出力の音質。分離が良く定位がはっきりしていて、音量もかなり大きく出せるのがいい。次にマイクを接続して生録音をしてみた。種類の違うコンデンサー・マイク2本でアコースティック・ギター、バイオリン、ボーカルなどを試してみたのだが、プリアンプの性能はこの価格帯のものとは思えないくらい優秀である。何よりノイズが少なく、音質がクリアなのだ。マイクの個性の違いもよく表現されており、気持ちよく録音できる。なお本機にはダイレクト・モニター機能も付いているのだが、バッファーが96サンプルだと、コンピューター経由でモニターしてもレイテンシーはほとんど気にならなかった。次に24ビット/192kHzの録音にも挑戦してみた。生楽器での効果は抜群で、キメの細かさや高域の美しさは目を見張る。ヘッドフォンでモニターしていると、44.1kHzで録音していたときには気にならなかった低音の環境ノイズ(冷蔵庫と屋外の車の音)がはっきりと聴こえてきたのには驚いた。次にバッファーを192サンプルにしてマルチ録音してみたが、Windows XP、INTEL Core 2 Duo 2.4GHz、7,200回転の外付けFireWireハード・ディスクという一昔前のスペックの環境でも、全く問題なかった。次にダイナミック・マイクでも録音してみた。ゲインを最高にしてマイクプリのノイズがどのくらい上がるかを試したのだが、これも非常に少ないのが印象的だった。また、Quad-CaptureはAuto-Sens機能を装備している。これは録音前にスイッチを押しておくと、自動的に最大入力レベルを検知して入力感度を調整してくれる機能だ。Auto-Sensが働いていない場合スイッチは点灯せず、スイッチを押すと検知中は点滅、動作時は点灯している。入力感度ツマミを動かすとマニュアルに戻る。簡単に適正入力感度の調整ができ、とても便利だ。Quad-Captureは、この価格帯とサイズでは1つ抜き出た性能を持っている。優秀なマイクプリを2基装備し、低レイテンシーで気軽に192kHzでの録音ができる。小型でUSB接続のオーディオ・インターフェースを探している人には魅力的な選択肢だろう。 201107_-Quad-Capture_rear.jpg▲リア・パネル。左よりUSB端子、MIDI OUT/IN、S/P DIF入出力(コアキシャル)、アナログ出力L/R(TRSフォーン)、グラウンド・リフト用スイッチ、ファンタム電源用スイッチ、Hi-Z入力用スイッチ 
ROLAND
Quad-Capture
オープン・プライス (市場予想価格/ 26,000円前後)
▪規定入力レベル/INPUT 1/2(XLR):−60〜−6dBu、INPUT 1/2(TRSフォーン):−50〜+4dBu▪ヘッド・ルーム/14dB▪入力インピーダンス/INPUT 1/2(XLR):4.8kΩ以上(バランス)、INPUT 1/2(TRSフォーン):15kΩ以上(バランス) ▪出力インピーダンス/OUTPUT 1/2:2kΩ(バランス)、PHONES:47Ω▪ダイナミック・レンジ/AD部 INPUT 1/2:104dB、DA部 OUTPUT 1/2:109dB▪外形寸法/185(W)×44(H)×134(D)mm▪重量/570g

▪Windows/Windows 7もしくはVista SP2以上、INTEL Pentium 4 1GHz以上のCPU、1GB以上のRAM(2GB以上を推奨)▪Mac/Mac OS X 10.4.11以上(Snow Leop ard対応)、PowerPC G4 1GHz以上のCPU、1G B以上のRAM(2GB以上を推奨)