豊富な入力数と特徴的なコントローラーを備えるパワード・モニター

PIONEERS-DJ05
PIONEERよりユニークな発想のスピーカーが登場した。PIONEERと言えば、昔からスピーカー製造ではその職人気質の製品作りで、高い評価を得ていることを思い出した。そして今やCDJやDJミキサー群は、ほぼクラブでのスタンダードとなっているほど、現場での評価が高い。そんな同社から新たにDJ/クリエイター用のアクティブ・スピーカー、S-DJ05がリリースとなった。SDJ05は4系統という入力の多さ、そして手元で電源のON/OFFのなどの操作ができるコントローラーを装備しているユニークな作りだ

切り替え可能な4系統の入力
多機能な専用コントローラーも付属


まず本体を正面から見てみると、縦がA4サイズより少し大きく、横幅はA4より若干小さい。普通の机ならば、デスクトップに置いても邪魔にはならないだろう。スピーカー自体も防磁処理が施されており、ディスプレイへの悪影響も無い。ユニット構成は、メタリックなクロム・カラーが印象的な130mmのPPコーン・ウーファーと25mmのソフト・ドーム型ツィーター。アンプは50W+30Wのバイアンプという構成だ。このスピーカー・システムの面白いところは、入力としてXLR、TRSフォーン、RCAピン×2と、およそ通常利用されているほとんどの接続端子が装備されていること。スピーカー正面には、現在どの入力が選択されているか、すぐに確認できるブルーのインジケーターを装備。例えば、通常使用しているライン入力のほかに、空いている1系統にリファレンス専用のCDプレーヤーなどを接続しておけば、ミックス作業で手軽にリファレンスCDと聴き比べることもできる。また、専用コントローラーでは、電源のON/OFF、ボリューム調整、入力の切り換え、ミュート、本体背面背面に付いているEQセクションのバイパスON/OFFが選択可能だ。このように、通常のパワード・スピーカーの機能に加えて、ライン・セレクターとボリューム・コントローラーを装備し、あらゆるシーンでの使い勝手を考慮した製品だ。また、本体底面部には、ネジ穴があり、DJブースでのモニター設置の際に柔軟かつしっかりとセッティングできるところも、"現場の声"に応えた設計となっている。セッティングは通常のパワード・モニター同様、電源ケーブルとライン入力を接続すればOK。コントローラー用端子は左右どちら側のスピーカーにもあり、コントローラーをつないだ側から、もう一方のスピーカーへ接続する仕様だ。このようにセッティング環境に柔軟に対応できるよう配慮されているところは非常に親切に感じた。

定位感に優れた誇張の無い音
制作システムとDJでの併用も可能


今回は、机のセンターにコンピューターのディスプレイ、両脇にS-DJ05をセットして試聴を行なった。環境にもよるだろうが、インシュレーターを使用してツィーターの向きと耳の位置を合わせるように向きや角度を調整した。試聴してみると、定位感の良さにまずはビックリした。ドラムのシンバル類やパーカッションなど、各楽器の位置関係がよく見える。少し前までの傾向として、昨今のダンス・ミュージックのレンジ感を意識してか、割とハイとローが派手に鳴るスピーカーが多かったように見受けられるが、このS-DJ05に関してはそのような"味付け"はあまり感じられない。むしろ高域などはかなり落ち着いた鳴り方で、長時間のモニターでも耳が疲れないだろう。とはいえ、いわゆるナローなレンジ感ではなく、低域も高域もきちんと再生されている。鳴っていないのではなくて、おとなしめなイメージ。ローの鳴り方も、しっかりと鳴っていながらもブーミーな印象は見受けられない。少し120〜180Hz辺りが盛り上がっているような印象を受けたが、じっくりとセッティングを詰めていけば解決できる範囲内だと感じた。これから新たに自宅のモニター環境を構築する人や、コンピューターでの音楽制作環境とDJセットの両方を持っていて交互に使用する人、DJセットもあるけれど、自宅で鑑賞するテレビなどのサウンドもグレード・アップさせたい向きなどには、ミキサーやライン・セレクターなどを別途導入する必要がなく、柔軟なセッティングを可能にしてくれる。また、誇張することが無く耳に優しいモニター音なので、長時間に及ぶプリプロ作業や、DJのロング・セットでのモニタリングでも、快適に作業に集中できそうだ。あらゆる人々の、それぞれのニーズにすんなり対応してくれる、ありそうでなかった製品である。

▼リア・パネル。上段左側はEQセクションで、その下は付属コントローラーの接続端子。中央下が入力端子類で左からTRSフォーン×1、RCAピン×2、XLR×1を装備




サウンド&レコーディング・マガジン 2011年4月号より)
PIONEER
S-DJ05
オープン・プライス(市場予想価格/65,000円前後、ぺア)
▪周波数特性/50Hz〜25kHz(ー10dB)▪アンプ出力/LF:50W、HF:30W▪インピーダンス/10kΩ▪外形寸法/185(W)×258(D)×301(H)mm▪重量/6.7kg(1本)