名門2ブランドとの共同開発によるPA用アクティブ・スピーカー

MACKIE.HD1221
気候もすっかり春めいてきました。そんな季節に、PA現場の新入生としてHD1221が登場。従来のHDシリーズよりもコンパクトで高品位なパワード・スピーカーです。早速チェックします。

独自回路で瞬発的な過大入力にも対応
FOHとモニターのどちらにも使用可能


まずHDシリーズはすべてパワード・タイプで、12インチ・ウーファー搭載の2ウェイ・モデルHD1221のほかに15インチ・サブウーファーHD1501(168,000円/1本)、18インチ・サブウーファーHD1801(199,500円/1本)も今回発表されました。そのほかのモデルも合わせるとラインナップは全部で6種類になります。さて今回レビューするHD1221の性能ですが、パワード・スピーカーなので重要ポイントは当たり前ですが"アンプ"と"スピーカー"にあります。まずアンプ部はバイアンプ仕様で、低域スピーカー用は500W、高域スピーカー用には100W(共にRMS)。ドライブは余裕の1,200Wシステム・パワー(ピーク)を出力する最新のクラスD Fast Recoveryアンプが採用されています。ですから、最大音圧も驚きの133dB。しかも通常のアンプは、過大入力時にひずみの原因となる"ラッチ"を起こすのですが、本機はFast Recovery回路を採用したことで、瞬発的な強い入力にも即座に対応し、確実にいつでも高品位なサウンドを提供できます。スピーカー部はMARTIN AUDIOならびにEAWというスピーカー界の大御所ブランドとの共同開発。ユニットに定評があるEAWはウーファー用ユニットの開発を担当しています。一方老舗のMARTIN AUDIOは、高域のホーンを担当。"ホーン鳴り"という物理的な共振の発生が高域の濁りをもたらすので、制御が一番難しいと言われる部分です。さらに90度×50度の指向角を持つこのホーンは、回転も可能。90度回転させて、現場に応じて指向性を合わせることができます。そしてMACKIE.では、熱処理チタニウム素材の1.75インチ・コンプレッション・ドライバーを開発。ひずみが極めて少ないため、寿命も長くなるそうです。また今まで培ったクロスオーバーとトランスデューサーのタイム/フェーズ・アライメントの音響補正アルゴリズム部品によって細かな部品やアンプ、最終的に鳴りを左右するキャビネットを製作することで、トップ・メーカーの融合=世界レベルでの"最も優れているスピーカーができた"と主張しています。裏面には、スイッチが2つとボリュームが1つ。高出力アンプ搭載なので、熱放射用のフィンは本機が熱くならないよう設計されており、かなりシンプルな作りです。スイッチの1つは、フロント面ロゴ横にある鮮やかなブルーのパイロット・ランプを消すためのものです。もう1つはトーン調整で、用途に応じて3ポジションの設定が可能。メイン・スピーカーとして使用するならフラットな周波数特性のNormal、クラブ・サウンドが欲しいならハイエンドとローエンドが若干ブーストされたContour、ステージ・モニターとして使うときにはハイエンドとローエンドが若干カットされミッドが聴き取りやすいMonitor(フィードバックも最小限に抑えられています)という具合です。

大音量でも素直で音楽的なサウンド
モニターではハウリングにも強い


では、現場でチェックしてみましょう。本シリーズはコンパクトをうたっているのですが、本当に小さい! 12インチ・タイプでこの大きさは、かなりユニットの幅ギリギリで設計されています。ですが、ちゃんとすべてが詰まっているんです。持ってみると厚さ15mmの合板木製キャビネットなので重量もあり、頑丈さと鳴りも大いに期待できます。グリルも亜鉛メッキ・スチール製のパウダー・コーティング仕様になっているので、見た目もおしゃれですし、ユニットの保護も兼ねます。もちろんスタンドへの設置や、12カ所のフライング・ポイントでのつり下げにも対応します。今回は2カ所の現場で使用してみました。最初は200人くらいのライブ・ハウスで、ロック・バンドのメイン・スピーカーとしてです。Normalポジションでチューニングしてみると、まずパワーがすごい! 無理なく出ます。このサイズでも全く問題ないです。パワーもさることながら、音量に対してのドライバーのピーキーな感じも無く、ただ素直にサウンドが前に出る感じ。低音もかなり豊かさがあるのでブーストする必要が無いです......というか、限りなくフラットで、しかも音楽的な再生がされている。素晴らしいです!もう1つはモニターでの使用です。キャビネットには非対称の角度がつけられています。もちろんMonitorポジションにし、いつもと同じくらいの音量で返すと、これまたデカイ! しかしハウリングは起きません。しっかりとした音質で、ミッド・ローのパンチの効いた安定感がミュージシャンの好評を得ました。本番後、ポジションをContourにして再度チェックしてみると、流行の高価なモニターにかなり似たサウンドに。これなら素人でも"簡単に良い音"を手にすることができ、次回購入するならこれだなと確信しました。 

▼リア・パネル。入出力端子(XLR)、VOICING MODE切り替えスイッチ、電源ライト・スイッチ、ボリューム・ノブ




サウンド&レコーディング・マガジン 2011年4月号より)
MACKIE.
HD1221
133,350円(1本)
▪周波数特性/55Hz〜20kHz(ー10dB)▪最大音圧/133dB▪クロスオーバー周波数/1,500Hz▪外形寸法/386(W)×610(H)×381(D)mm▪重量/22.7kg(1本)