3種のヘッドを使い分け明るいサウンドが録れるコンデンサー・マイク

JZ MICROPHONESBT-201
ここ最近新たなサウンドを求めていろいろなマイクを試したり買ったりしているのですが、今回チェックするようなペンシル型のマイクはどうしても後回しになっています。ペンシル型と言えばAKG C451やNEUMANN KM84など、スタジオでは定番とされているマイクを使うことが多く、そちらの方が安心感もあるので"まあ今度にするか"と思ってしまうのが本音。そんな中での今回のレビュー。先に挙げた定番に対抗できるのか楽しみなところです。JZ MICROPHONESはマイク・デザイナーのユリス・ザリンス氏が手掛けるラトビアのメーカーで、2007年に創立。宅録などではラージ・ダイアフラムよりも扱いやすいペンシル型。果たしてどのような音を聴かせてくれるのか早速チェックしてみましょう。

マグネットによる脱着式のヘッドが3種
反射音を軽減させるくびれたボディ


本機はコンデンサー・マイクで、付属するヘッドの違いなどで3パターンが発売されています。


  • BT-201/1(単一指向のヘッドが付属)

  • BT-201/3(単一/オープン・カーディオイド/オープン・カーディオイド(−20dB)という合計3種類のヘッドが付属)

  • BT-201/3S(BT-201/3のステレオ・ペア)


以上のラインナップの中で、今回はBT201/3Sをチェックしました。上記の通り3種類のヘッド・カートリッジのほかに、オプション扱いですが、無指向性のヘッドも別売りで用意されており、用途によって使い分けることができるのはうれしいところでしょう。本機の特徴でもあるヘッドですが、脱着はマグネット式となり、簡単に取り外して交換ができます。ネジ込む必要はありません! 引っ張って取って、磁力に任せてくっつけるだけです。実際ドラムのトップにセッティングした状態でも簡単に気軽に取り換えることができました。"マグネット式と言うと外れるのが心配......"と思う方もいると思いますが、これが意外と外れないのです。付属の木製ケースもマグネット式の開閉で、試しに振ってみましたが、外れることはありませんでした。ちなみに、ヘッド交換時ファンタム電源は必ずオフにしてくださいね。外見的には、ウエストのくびれた一風変わったデザインになっていますが、反射音を軽減させるために緻密に計算された形だと言うことです。さらに製品保証期間が5年もあるというのも購入者にとってはうれしいところでしょう。

手軽なセッティングながら
EQ無しでも明るくクリアなサウンド


まず今回はドラムのトップから試してみました。ヘッドは単一のものから。一応よく使うAKG C451を同じ位置になるようにテープで2本を合わせてセッティングして試聴。まず一言......音が明るい。明確な音作りと言うか、EQ後のような雰囲気を持った音を聴かせてくれました。大体6kHz辺りから上が伸びている感じで、粒立ちもよく分かります。音が明るい方と認識していたC451が、ちょっとこもって聴こえてしまうほどです。しかし、廉価なハイ上がりのマイクにありがちなチリチリした高域のノイズっぽい感じは無く、明るい音色と言えるものです。普段、EQでちょっと高域を上げたりするドラムのトップですが、今回はEQせずそのまま録音できました。また距離感の再現性もC451より若干分かりやすく、一番離れているキックの位置関係が分かります。次にヘッドをオープン・カーディオイドに交換してみましたが、こちらはよりすっきりした空間をとらえることができました。この辺りはサウンドによって替えられるのはうれしいですね。続いて-20dBのPADが付いているヘッドに変えてタムに立ててみましたが、これが意外と好印象。洋楽にありがちな明るい粒立ちの良いタムのサウンドで録れました。これならかぶりのことは置いておいて、スネアにも立ててみたいです。次にアコギにもチャレンジ。これもタム同様粒立ちよく明るい音。サウンド・ホールに近い位置でもそこまで変な低域の誇張が感じられないのも、この高域の持ち上がりの恩恵でしょう。しかし、もともとアコギ自体が明るい音の物だと、高域が強調され過ぎてちょっとクセのある感じになってしまいます。例えるなら、GIBSON系のアコギがMARTIN系の音っぽくなるような感じです。最後にエレキギターのクリーン系でもチェックです。今回はアンプ録音でラインっぽい明るい音が欲しかったので試してみたのですが、これもそのまま録音するに至りました。アンプのちょっとこもった感じがなくなり、すっきりとした感じです。ただ、アンプで高域のノイズが出ているとそこまで奇麗に拾ってしまうので注意が必要でした。


本機は、どの用途にも何にでも使えるタイプではないと思います。ただ、その個性ある高域のサウンドは、狙って使うとものすごく良い感じになるのも事実。実際この高域の感じは今まで聴いたことがなかったので、EQ無しでクリアなサウンドが手軽に欲しいときには最適。また高域に特徴がありながら、固さはそこまで感じないのも魅力です。いつもEQで高域を上げて録音するような楽器に立ててみてはいかがでしょう? セットも楽なので、もっといろいろ試してみたいですね。

▼BT-201/3Sの木製ケースの中には、BT-201が2本に、それぞれ単一/オープン・カーディオイド/オープン・カーディオイド(−20dB)のヘッド・カードリッジが付属する




サウンド&レコーディング・マガジン 2011年4月号より)

撮影/川村容一

JZ MICROPHONES
BT-201
オープン・プライス(市場予想価格/BT-201/1:47,040円前後、BT-201/3:57,540円前後、BT-201/3S:119,490円前後)
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪最大SPL/140dB▪ダイナミック・レンジ/128dB▪外形寸法/13(φ)×160(H)mm▪重量/96g(ヘッド・カートリッジ装着時)