自然なローカット・フィルターや奇麗な高域が魅力のコンデンサー・マイク

SE ELECTRONICST2
カプセルにチタニウムを採用したコンデンサー・マイク

SE ELECTRONICS T2 オープン・プライス(市場予想価格/105,000円前後)2000年創業のSE ELECTRONICSのコンデンサー•マイクは、今ではイギリスのマイク•ブランドとしてヨーロッパはもとより、アメリカでも着実にシェアを伸ばしています。すべてのカプセルが完全なハンド•メイド。数年前にはルパート・ニーヴ氏との合作でリボン•マイクRNR1を発売するなど前進を続ける同社が、カプセルにチタニウムを採用したTitanの後継機T2をリリース。チタニウム・カプセル第2世代とも言えるコンデンサー・マイクT2をチェックしましょう。

現代のサウンドを提示されているような自然でハイ上がりなサウンド


まず箱を開けると専用フライト•ケースが現れ、これにはしっかりとした取っ手も付いています。この価格帯のマイクはちょっとした外録などにも気軽に持っていきたくなるし、何より本マイクは"多目的マイク"といううたい文句なので、外に持ち出す際にも安心ですね。こういうところをしっかりしているかどうかもブランドの考え方や情熱の注ぎ方が分かる重要な基準で、大事なポイントです。そのフライト・ケース内にはシルバー•ボディの本体とショック•マウントが収納されています。本体フロント部分にPAD(-10/-20dB)、ハイパス・フィルター(60/120Hz)、指向性切り替え(双/無/単一/超)の4つのスイッチが付いています。今回のチェックでは、AKG C414やNEUMANN U87、AUDIO-TECHNICA AT4050など、使い慣れているマイクと比較。というのも、チタン・カプセルを使うのは初めてで、今まで使用してきたマイクの中でどんな位置付けになるのかもチェックしたかったからです。マイクプリはSSLX-Rack Mic Amp Moduleを使用し、まずは歌とナレーションを録ってみました。マイクプリのゲインを上げていくと気が付くのが、アウトの音量が結構大きいということ。さらにマイクの距離がいつもと同じでも、近い感じでキャプチャーされるということです。そこから少しずつマイクを離していっても、普段のマイクのように距離感が増えることもあまりなく、空気感だけが足されるような感じです。"これがチタンなのかなぁ"という印象でした。それと個人的に、いつも声を録るときはPULTEC系のEQで高域を持ち上げたくなるのですが、本機で収音した音はそれも要らないほどナチュラルに高域上がり。明るくて、スピード感があり、"2010年ってこういう音"と提案されているような印象すら受けました。

パ行やタ行の発音に優れるのでアタック感が欲しい音源に最適


声の収音に関して言えば、さすがにそのままでは少しだけ低音の処理がしたくなるので、60Hzのハイパス・フィルターを入れてみます。これまでマイクのフィルターはカットされた感が強い印象で、個人的にマイクに付属するフィルターよりもコンソールのフィルターを使って処理することが多かったのですが、T2のフィルターは非常にナチュラルで使える感じです。120Hzのハイパス・フィルターも放送用などではかなり使える自然さで、武器になるなぁと思いました。 アシスタント時代、メイン・エンジニアに"マイクはそのマイクに付いているPadやフィルターも考慮して選ぶんだ"とずっと言われていましたが、個人的には、そのあまりの音の変化に疑問を抱いていました。しかしこれほど自然にカットされれば、何のちゅうちょも無く使えます。それに伴いマイクプリの効率も良くなり、必然的に良い音で収録可能なのです。またこの自然なローカットとハイ上がりの特性が、高域成分を多く含む"パ行" や"タ行" の発音時の音が奇麗に録れる要因で、中域の情報量の少なさからくる高域のピーク感とは全く違う"使える明るさ"があります。最後にアコギを録ってみました。ストロークに関しては、コード感よりもアタックで持っていくアレンジの曲に合うようです。アルペジオでは、どのマイクと比べてもT2に軍配が上がりました。本機のサウンドは、その自然な明るさゆえに、パーカッションはもちろんスラップ・ベース、ドラムのトップ、ピアノのハンマー音をなどを強調したいときなどにアクセント用の素材の収音に使っていけるでしょう。T2をオンマイクで置きつつ、中域で雰囲気を押していくようなマイクをもう一本置いて、その2つのサウンドをミックスして奥行きを出して......などいろいろな使い方が自然と思い浮かぶ、新しいマイクのコレクションとして持っておきたい1本です。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年9月号より)撮影/川村容一
SE ELECTRONICS
T2
オープン・プライス(市場予想価格/105,000円前後)
▪周波数特性/20Hz〜20kHz ▪指向性/単一、双、超、無 ▪付属品/ショック・マウント、フライト・ケース ▪外形寸法/56(W)×140(H)×29(D)mm ▪重量/282kg