8基のマイクプリを内蔵し最大16入出力を可能にしたオーディオI/O

ECHOAudiofire Pre8
マイクプリは素直で色付けの無い音。ライン入力も余裕があり落ち着いた印象

ECHO Audiofire Pre8 オープン・プライス(市場予想価格/94,500円前後)オーディオ・インターフェースは、ハイエンドのものから入門者向けまで、いろいろな製品がほぼ出そろった感がある。ミキサー一体型やコントロール・サーフェスの機能も兼ね備えたものなど個性的な性能を持つものも増えてきた中で、ECHOの新製品はマイクプリを8基内蔵するインターフェースというところが新機軸だ。

多数の入出力にもかかわらず1Uサイズで軽量なボディ


Audiofire Pre8は、1Uサイズで奥行きも20cm程度、本体に電源トランスも含んで重量も3kgとかなりコンパクトなのに、マイクプリを8基搭載という充実ぶりだ。フロント・パネルにアナログ入力1/2(XLR/TRSフォーン・コンボ)とヘッドフォン出力×2を備え、リア・パネルにはアナログ入力3〜8(XLR/TRSフォーン・コンボ)、インサート入力(TRSフォーン)×2、メイン出力(TRSフォーン)、アナログ出力(TSSフォーン)1〜8のほか、デジタル入出力(ADAT、S/P DIF)、ワード・クロック入出力、MIDI入出力も備える。ちなみにコンピューターとの接続はFireWire 400で、最高24ビット/96kHzの録音に対応。これで実勢価格は10万円以下なのだから、全く便利な世の中になったものだ。現行のMac(Mac OS X 10.3.9以上)やWindowsマシン(Windows XP以上)であれば、簡単に8本のマイクを使ったマルチ録音が可能になってしまう。自宅録音だけでなく、バンドやアンサンブルの一発録音に持ち出す用途にも電車で行ける気軽さがある。ドライバー・ソフトのインストールは至って簡単で、付属CD-ROMの指示に従えばすぐだ。そもそもECHOのドライバーは定評のあるところで、筆者も長年にわたってPCMCIAカードのIndigo I/Oを愛用しているが、一度も問題を起こしたことが無い。そして本機はFireWire 400接続ということもあり、レイテンシーを64サンプルまで抑えてもマルチ録音で安定動作した。

マイクプリは素直で色付けの無い音 ライン入力も余裕があり落ち着いた印象


メイン出力とヘッドフォン出力をいつもの環境で確認してみるとなじみのあるECHOの音。ハイファイで落ち着きがあり、音楽的な音色。私も含めこの音質のファンも多いのではないかと思う。次にフロント・パネルのアナログ入力1/2にマイクやエレキギター、ライン機器などを接続していろいろな音を録音してみた。入力コネクターはNEUTRIK製で、前述の通りコンボ式でXLR/フォーンを両方接続可能。アナログ入力1/2のコンロトール部はゲインのほかに6つスイッチが付いている。それぞれ、位相反転スイッチ、PADスイッチ(−20dB)、80Hz以下のロー・カット、インピーダンスを3kΩから1kΩに下げ、ローインピーダンスのマイクに対応させるLoZスイッチ、+48Vのファンタム電源スイッチとなり、またフォーン入力用に設けられたDIスイッチはエレキギターなどのハイインピーダンス機器を接続するときに使用する。続いて入力1/2でアコギやボーカルの録音を試せば、マイクプリは素直で色付けの無いハイファイな音で好印象。マイクの性能がそのまま表れ、個性がよく分かる。楽器の音量のピークがそのまま出力される感じなので、マイクのゲイン合わせはしっかり行って、DAWソフト側のデジタル・クリップに気を付ける必要がある。ライン入力の方も落ち着いた音で余裕があり、分解能が高いイメージだ。楽器の出音がその通りに録音されてしまうので、プレイヤーはかなりシビアに音を詰めていくことがでだろう。そしてリア・パネルのアナログ入力3〜8を試してみた。このコントロールは、フロント・パネルに各チャンネルのゲイン・コントロールとアナログ入力3〜8一括のファンタム電源(+48V)があるだけだが、音質のクオリティは入力1/2と全く変わらない。この価格帯でこのクラスのマイクプリが8基まとめて手に入るのはとてもコスト・パフォーマンスが優秀だ。ちなみにヘッドフォン出力からの音も質/量共に申し分なく、録音作業が楽しくなる。ヘッドフォン出力の信号はメイン出力と同じだ。また長時間使用しても本体がさほど熱くならないことも長所として記しておきたい。最後に付属ソフトについて触れておこう。Audiofire Pre8の入出力のルーティングは、付属ソフト"Console"で操作する。セッティング画面ではサンプル・レート、クロック・ソース、バッファーやデジタル出力の選択などを行い、各出力の画面ではどの入力信号を出力するかを設定できる。ここで便利なのが、本機はスタンドアローンで機能する点。Consoleのセッティングは本体内のフラッシュ・メモリーに記憶するので、あらかじめ使いやすいようにセッティングしておけば本機だけを持ち出してアナログ8ch入力、アナログ8ch+デジタル8ch出力のマイクプリとして機能するのだ。このように、本機は高機能で、いろいろな用途に使える。"複数のマイクプリが必要だ"という人は要チェック!である。

▲リア・パネル。左から電源ソケット、FireWire 400端子×2、ADAT入出力(S/P DIFと切り替え可能)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、ワード・クロック入出力(BNC)、MIDI入出力、アナログ出力1〜8(TRSフォーン)、メイン出力1/2(TRSフォーン)、アナログ入力3〜8(XLR/TRSフォーン・コンボ)、インサート入力1/2(TRSフォーン)


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年4月号より)撮影/川村容一
ECHO
Audiofire Pre8
オープン・プライス (市場予想価格/94,500円前後)
▪外形寸法/480(W)×175(D)×44(H)mm▪重量/3kg

▪Windows/Windows XP、Vista、7(32ビットもしくは64ビット)、246MB以上のRAM(512MB以上を推奨)、1基の空きIEEE 1394A端子▪Mac/Mac OS X 10.3.9以上、PowerMac G4以上のマシン、256MB以上のRAM(512MB以上を推奨)、1基の空きFireWire端子