ハンマー・アクション鍵盤とパッドを備えたMKPシリーズの88鍵モデル

AKAI PROFESSIONALMPK88
作曲/トラック・メイキングやライブでの活躍が期待できるUSB/MIDIコントローラー

AKAI PROFESSIONAL MPK88 オープン・プライス(市場予想価格/84,800円前後)今までありそうで無かった、ピアノ鍵盤のMPKシリーズを待ち望んでいたユーザーに朗報です。同シリーズに、88鍵フルウェイト・ハンマー・アクション鍵盤仕様モデルの登場。作曲/トラック・メイキングやライブでの活躍が期待できるUSB/MIDIコントローラーです。

重みのある鍵盤はアフター・タッチ対応 パッドはMPCよりも柔らかく軽量


本機は頑丈な筐体で力強い印象。重量も23kgあり、ずっしりとしています。鍵盤部がしっかりとしたパーツで作られているからだと思いますが、この重さが安心感を与えてくれます。電源を入れると、ホイールの側面がオレンジ色に光り、ライブでも目立つにくい演出。AKAI PROFESSIONALのロゴも主張があり、ライブ映えしますね。ずっしりと重みのあるハンマー・アクション鍵盤はその手触りや黒鍵の面取りなどから高級感を感じます。他社のステージ・ピアノよりも若干重みがある印象で、ある程度ピアノの演奏に慣れた人にとって、弾き応えのある重さと言えるのではないでしょうか。もちろんアフター・タッチにも対応しているので、ピアノ音源を演奏しても違和感はありません。思わず高品位のピアノのソフト音源と組み合わせたくなる作り。メーカーの鍵盤に対するこだわりを感じます。またピッチ・ベンド/モジュレーション・ホイールやオクターブ・ボタン、各種トランスポート用のボタンや、MPK61から搭載されているキー・スプリット機能(鍵盤部を2分割し、2つの異なるサウンドを鳴らすことができる機能)やARPEGGIATORボタンなど、コントローラーとしての機能も充実しています。一方、16個のパッドのタッチは各種MPCシリーズのパッドよりも柔らかく、軽い印象です。このパッドはMPCシリーズ同様にバンクA~Dまで、合計64のサンプルにアクセスが可能。演奏時にノート・リピート機能を使用できるのもMPC譲りな上、ノート情報以外にもプログラム・チェンジも制御可能です。また、各種トランスポートのほかに、合計8つという、MIDIコントローラーとして十分な数を持つQ-Link(ノブ、フェーダー、ボタン)はMPCやこれまでのMPKシリーズ同様にしっかりとした作りで手応えがあり、大きめのサイズ。このQ-Linkは、ソフト上の任意のエフェクトのツマミを計72もアサインすることができるので、コントローラーとしては十分です。楽曲を制作する際、動的なエフェクト変化をつける際に、このQ-Linkは非常に役に立ちます。僕はトラックを作る際に1つのフレーズに多くのエフェクトを使って、それらをシーンごとに変化をさせるのですが、これを使えばダイナミックにコントロールすることができ、威力を発揮することが可能。複数のフィルターやディレイをアサインしておき、曲の展開に応じて使い分けると豊かな色合いのエフェクト処理ができるので便利です。

ソフト音源の演奏やエフェクト制御でよりフィジカルなライブも可能


本機はUSBケーブルを接続するだけでプラグ&プレイで使用可能、電源もバス・パワーで供給されるので、素早く簡単に使い始めることができます。今回は、本機に同梱されるDAWソフトのABLETON Live Lite Akai EditionをAPPLE iMacにインストールして使用しました。Live Liteにて環境設定→File/Folderでブラウズをクリックすると、"AKAI Drum kits" "Basics" "Live7 Lessons"をインストールすることができます。プリセットでMPK88に用にマッピングされた音源を使うことができるので、とにかくすぐに使いたいというユーザーにとってはうれしいですね。そのほか、MPK88側で主要DAWソフト各種に対応したプリセットを選べるので、自分の制作スタイルに合わせてマッピングを変えて使うこともできます。自分好みにアサインをしておけば制作時の作業効率を上げることができるし、何よりフィジカルに音楽を作ることができると思います。また本機は、ライブ時にソフト音源をピアノ鍵盤で演奏したいプレイヤーにとっては役立ちそうです。特にLiveシリーズなどのライブに向いたDAWとの組み合わせは親和性も高く、楽曲の準備段階から活躍しそうです。例えばMPKのパッドに声ネタなどを加工したサンプルをアサインしておき、シーケンスのビート上でパッド演奏したり、ピアノ音源で演奏したり。想像しただけでワクワクしますね。ピアノのソフト音源も、事前にDAWソフトで自分好みエフェクト処理をして仕込んでおき、それらをQ-Linkでリアルタイムに変化させるなどすれば、自分の世界観をより豊かに表現していけるでしょう。ラップトップ中心のライブでも、生演奏をふんだんに盛り込むことによって動きのあるフィジカルなライブを演出できると思います。スポット・ライトを浴びたR&BシンガーがMPKでピアノを弾き語りしたり、ラップトップでファットなシーケンス・ビートを流し、パッドでサンプル演奏したりという絵が思い浮かびました。もちろん同社のロゴ・マークもクールに演出。やはり、ライブ向きの機材と言えそうですね。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年4月号より)撮影/川村容一
AKAI PROFESSIONAL
MPK88
オープン・プライス(市場予想価格/84,800円前後
▪フット・スイッチ端子/1▪フット・ペダル端子/2▪外形寸法/1,310(W)×380(D)×130(H)mm▪重量/約23kg