曲作りや編集作業にも使えるノイズ・キャンセリング・ヘッドフォン

BOSEQuiet Comfort 15
楽器の定位感が分かりやすく、特に高域が非常にクリアで好印象

BOSE Quiet Comfort 15 39,900円BOSEには数々の名機があります。古くは一体型オーディオ・システムの中では類を見ない音の良さだったカセット・デッキ搭載型のAcoustic Waveから始まり、最近では扇型のWave Music Systemを個人スタジオで見る機会も増えました。さらにM2はステレオ・ミニ接続の超小型スピーカーでは最高峰ではないでしょうか。そして最も注目の製品と言えば、ノイズ・キャンセリング機能が付いたヘッドフォン、Quiet Comfortシリーズでしょう。その最新機種、Quiet Comfort 15を見ていきます。

騒音検知マイクを2本搭載し、より広い周波数帯のノイズを軽減


Quiet Comfortは、航空パイロットや軍事用ヘッドセットを30年近く研究し続けた末に完成し、数多くの航空会社のハイエンド・クラスの客室でも使用されている製品。ほかの音響メーカーのノイズ・キャンセリング技術とは一線を画すものです。本機が前身機種であるQuiet Comfort 2から大きく変化した点は、ノイズ・キャンセリング機能の向上。そもそもQuiet Comfortシリーズがどのようにノイズ・キャンセリングをしているかというと、内蔵された検知マイクでイアー・カップ内の騒音を拾い、それと逆位相の音波を送り出して騒音を打ち消します。その検知マイクが今までイアー・カップ内だけだったのですが、本機から外側にも追加されました。これによって従来よりも広い帯域のノイズ軽減に成功したそうです。と、最初からノイズ・キャンセリングについていろいろと書きましたが、ヘッドフォンであることに変わりはありません。耳に装着して、イアー・カップに付いている電源をONにすればOKです。この時点で周囲の雑音が無くなり、音楽を聴く"自分スイッチ"も入ります(笑)。そのまま音楽用ヘッドフォンとして使えますし、音楽を入力せずに静寂空間を楽しむためのノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンとしても利用可能。なお、スイッチがOFF時には音は出ません。ノイズ・キャンセリングはアクティブ回路で行うので、本機の使用には単4乾電池が1本必要となりますが、その電池を含めても本体の重量はわずか190g。単4アルカリ電池の場合、1本で約35時間の連続駆動が可能で、欧米への往復フライトでも十分なパフォーマンスが得られるでしょう。イアー・カップは適度に柔らかいクッションを
用い、それと同素材の物を頭部にも設けた、必要最小限のクランプ圧設計。人間工学を基に装着角度も設定されており、長時間の使用にも対応します。なお、プレーヤーとの接続はステレオ・ミニ方式で、付属の専用コードは脱着が可能。ノイズ・キャンセリングだけ楽しみたい場合は、コードを外して装着することもできます。

楽器の定位感が分かりやすく、特に高域が非常にクリアで好印象


さて音質面の話に移りましょう。本製品はアクティブ・イコライジングの搭載によって、音質面でも大きな進歩が感じられます。従来のノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンでは、どこかこもった印象を受けていたのですが、本機はすべてがクリアに聴こえます。僕が持った印象は、とにかく高域がとてもクリア。楽器の臨場感がリアルなのです。各楽器の位置がはっきり分かる......弦楽器は両耳に向かってくっきりと広がり、ベース音は頭の後ろでしっかりと上モノを支えて、ボーカルは自分の口元にある感じ。そして低域のキックは空気を含んで輪郭を持ちながら耳に伝わってきます。低域は最近の傾向に比べると、それほど出ている方ではないのですが、音の位置がしっかりしているので、ドンシャリ系のゴチャっとした音源でもバランスが把握しやすいです。何より驚いたのは、コードを放つ楽器の音色が非常に分かりやすいこと。音質面に対して、ノイズ・キャンセリング機能が相当プラス方向に作用しています。本機は移動時のエディットやトラック・メイキングなどで威力を発揮するのではないでしょうか?周りの騒音が消されるため、小さな音量で作業できるのが利点です。それとゲームのクリエイターなどは、1つのフロアで多くの人が音楽を作っているので、皆一人一人が自分の世界に入れてベストだと思います。ミックスで使用する際は、中高域が派手に聴こえる傾向があるので、その辺に留意して判断するといいでしょう。どちらかというと最終確認で使うのがお薦めで、広がり具合をチェックするのに良いと思います。本機を使っていて気付かされたのは、想像以上に僕らは騒音に包まれて暮らしているということ。例えば、京都の清水寺に胎内を体感できる場所があり、真っ暗で何も見えない状態でロープだけを頼りに歩くのですが、本当に暗闇で"無"を体感できるのです。本当に必要な物は、無の状態から見えてくるのかもしれませんね。僕はこのヘッドフォンで新しい体験をして、音楽をもっと楽しむことを教わりました。静寂の中で聴く音楽はより細かく音を伝え、幸福を与えてくれるのだと。皆さんも目を閉じて、この高音質のQuiet Comfort 15で無の境地から、新しい音の世界を開拓してみてはいかがでしょうか?

▲本機をフラットに折り畳んでキャリング・ケースに収納すれば持ち運びも簡単に行える。着脱式ステレオ・ミニ端子ケーブル、単4アルカリ電池、機内用のデュアル・プラグも付属


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年1月号より)
BOSE
Quiet Comfort 15
39,900円
▪入力プラグ/φ3.5mmステレオ・ミニ・プラグ▪外形寸法/160(W)×195(H)mm▪重量/190g(乾電池含む、ケーブル除く)