木材の質感とスピード感あふれる音が特徴のモニター・スピーカー

REQSTSH-SP7
アンティークなフォルムに濁りのない確かな音。手作業により1台1台丁寧に組み立て調整された"世界にひとつだけのスピーカー"

REQST SH-SP7 141,750円/ペア良いモニタリング環境を築くこと。それはクオリティの高い作品を作る上でとても重要なことであり、我々エンジニアにとっても永遠のテーマである。スピーカーというシンプルさゆえに個性的な製品が生まれにくい中、最近ではいろいろな試みがなされ数多くのモデルが生まれてきている。これは現在の音楽制作のあり方が自宅型レコーディングに変化しつつある状況と、良いオーディオ環境を作りたいというニーズが高まってき
ている証拠なのではないだろうか。そんな昨今の状況下で、国内のスピーカー・ブランドREQSTからリリースされたモニター・スピーカーがSH-SP7だ。何より木材の質感がとても特徴的な本機。早速レビューしていこう。

ユニットはALPINE製を採用 低〜高域にかけてのつながりが良好


REQST SH-SP7はパッシブ(別途アンプを必要とする)、2ウェイ・タイプのモニター・スピーカーで、珍しい木の質感を生かした存在感、そしてラップトップ・コンピューターの横に置いての音楽制作にも対応できる適度なサイズなど、とても個性的な製品である。1人の木工職人が2種類の無垢材を使用して作り上げたというエンクロージャーの手触りはアンティーク家具そのもので、初めて手に取ったときの感覚はスピーカーというよりは木箱を持っているような印象。まさに今までのモニター・スピーカー観を覆すような外観だ。しかし使用時に味わえる天然木の自然な風合いや丁寧な手作業を感じさせる作りは、決して大量生産では体現できない"気"のようなものにあふれている。ウーファー/ツィーター・ユニットは車載オーディオ・メーカーで有名なALPINE DLXF17Sに独自のチューニングを施したもの。170mmのウーファーはDDリニア磁気回路を搭載しており、しなやかな振幅の変化を可能にしているそう。一方30mmのツィーターは高域の立ち上がりの速さと豊かな中域を実現するためにデュアル・ボイス・コイル構造となっている。これらにより本機は、レンジが広く、また低域のひずみにも強い特長を持つとのことだ。まずはセッティングだ。本機はパッシブのため、筆者のスタジオのメイン・アンプ、ACCUPHASE E-408を使用しチェックすることに。推奨セッティングはインシュレーターなどは使わず、正面フラット置き、つまり内振りをしない状態とのこと。さてどんな音がするのだろう......? 早速、音の方を検証して行こう。予想通り中高域にかけての元気良さが目立つが、ウーファーからツィーターにかけての音のつながりが良く、クロスオーバーの調整がとてもうまくいっている印象。ツィーターも元が車載用とは思えないほどの繊細さを持ち、ごく弱い演奏から一気にフォルテシモに到達するクラシック作品の再現もまずまずと言ったところ。さすがにこのサイズでは重低音の再生までは難しいが、ベストのセッティング位置を的確に探し出せば決して低音が物足りないということは無く、ダイナミックな音場を再現してくれる。比較的多くの機種で使われているバスレフ・タイプとは全く違い、下部に見えるダクトからは微細な空気しか出てこない構造(エア・スリット式)だが、箱全体が空気を振動させることで低音再生能力を持っているように感じられる。ロック系の音源を再生してみても、多少低域の腰が高い感じはするが、ベースのゴリゴリしたところやギターやボーカルが支配する2〜4kHz周辺がとても心地よく、変に硬いイメージもない。思ったほど暴れがない高域もとても立ち上がりが速くスピード感があるので、R&B音源でももたつきがなく好印象だ。1つ注文を付けるとしたら、もう少し高域(10〜12kHz辺り)に伸びが欲しいところだろう。

フレキシブルなセットアップに対応。ラップトップ横での使用にも最適


本機は重量が1個あたり約3.5kgととても取り扱いがしやすい重さであることに加え、インシュレーターなどを必要としない底板構造をしているため、フレキシブルに動かして使用することが可能だ。そこで、スピーカーの位置も変えてチェックしてみることにした。機材ラックやこのレビューを書いているライティング・デスクの上に乗せて再度試聴してみる。しっかりポジショニングされた元の場所のときと比べ、低域以外はさほど変わらない印象で、想像以上に良い鳴りをしてくれた。ノート・パソコンの両脇に60cmの間隔でフラット置きしてみた所では、定位感もよく適度な臨場感も再現できている。これならば自宅のパソコン横の狭いスペースに置いてもモニタリングしやすいだろうし、ワンランク上の音作りが可能になるだろう。場所を選ばず使うことができる点が本機の大きな魅力の1つと言えるのではないだろうか。ただし内振りにすると、直接耳に中高域が飛び込んできてワイド感を失うので注意が必要だ。アンティークなフォルムに濁りのない確かな音。手作業により1台1台丁寧に組み立て調整された"世界にひとつだけのスピーカー"はリスニングルームを彩り、そして音楽制作をきっと楽しくさせてくれるはずである。
REQST
SH-SP7
141,750円/ペア
■ 周波数特性/45Hz〜60kHz■ 形式/2ウェイ、エア・スリット式(防磁タイプ)■クロスオーバー/8kHz■ 入力インピーダンス/4Ω■ 外形寸法/202(W)×295(H)×200(D)mm■ 重量/約3.5kg