太くナチュラルな録り音が魅力のFETコンデンサー・マイクロフォン

LAUTEN AUDIOFC-357 Clarion
さまざまな録音に対応できるようデザインされた万能タイプのFETマイクロフォン

LAUTEN AUDIO FC-357 Clarion オープン・プライス(市場予想価格/113,400円前後)一昔前はプロの現場でしか使うことができなかった高価なコンデンサー・マイクですが、最近は驚くような価格帯のコンデンサー・マイクが、各メーカーから数多く出てきています。現在のハード・ディスク・レコーディング全盛の環境下では、音の入り口であるマイクやプリアンプの選択はとても重要視されています。LAUTEN AUDIOは、本国アメリカでも最近になって評価を上げているマイク・メーカー。今回のFC-357 Clarionは、さまざまな録音に対応できるようデザインされた万能タイプのFETマイクロフォンです。ワンランク上の価格帯の本機の実力はいかに!早速チェックしてみましょう。

ずっしりとした存在感 "頼れる顔つき"のマイクロフォン


マイク本体はカタログの見た目より一回り大きく、薄いシャンパン・ゴールドに近いカラーリング。重量も見た目以上にずっしりと重たいです。振動板は28.25mmの大型デュアル・ダイアフラム・カプセルが装備され、ダイアフラムを包むメッシュの加工も丁寧に施されています。いかついデザインではなく、信頼のおける"頼れる顔つき"のマイクロフォン、非常に好印象です。指向性は無指向、単一指向、双指向性で切り替え可能で、3ポジションの入力レベル(−10/0/+10dB)を備えていますが、ローカットなどのフィルターは装備されていません。本機はコンデンサー・マイクなので、当然、外部からのファンタム電源(48V)が必要です。また、上記のケース以外にショック・マウントとウレタン製のウィンド・スクリーンがケース内に格納されています。

奏法やセッティングによる音の違いがすごくよく分かる


では実際にSSL SL6000Gのプリアンプで、スタジオ定番のNEUMANN U87AIと比較してみます。まずは入力感度ですが、ユニティ(±0dB)でほぼ同じレベル。最近の高出力マイクと同等ですね。普通の声(男性/女性)で聴き比べます。ストレート・トーク(声)のチェックでは、中高域の癖が非常に分かりやすいです。マイク自体のS/Nは、若干ですがFC-357 Clarionの方に分があるように感じました。これは、ごく小さな音量での録音時では、大きく差が出るところですね。続いて普通の声量/小さめ/大きめで比較してみましたが、全体的な印象としてはU87AIよりもややナチュラル傾向で、若干中低域の粘りがある感じがします。サシスセソなど子音の強調がなく、声量によるサウンドの変化も少ないです。次に、実際にボーカル(女性)の録音に使ってみました。ソフトな声でもパワフルでハードな歌でも、予想通りの太めでナチュラルなサウンド。最近のFETコンデンサー・マイクにありがちな、耳障りなとがった感じの音にはならず、スムーズな音です。逆に、U87AIがいかに中高域に特徴のあるマイクであるかを再認識しました。特にニュアンスをたくさん含んだ小さめのウィスパー・ボーカルには、+10dBのブーストが威力を発揮。クリアで存在感あるサウンドで、無理なくコントロールできます。次にアコースティック・ギターでもチェックしてみました。ここでも太めの印象に変わりはなく、メロディアスなソロ・パートでは存在感のあるキャラクターになります。周波数レンジ的には十分に広いと思いましたが、アルペジオやストロークではアタック感、特に高域に若干の量感が足りないと感じました。逆に音が太過ぎるので、低域を抑えるか高域をEQで若干ブーストして使うと、ちょうどいいサウンドになるでしょう。実際の使い方としては、管楽器や弦楽器、ギター・ソロなど生楽器全般にとても威力を発揮しそうなマイクロフォンです。楽器や部屋鳴りなど、本来の音が非常によく分かるというか、音量や奏法/セッティングによるサウンドの違いが、すごくよく分かるはず。複数本あれば、各楽器のアンサンブルやドラムのルーム・マイクなどに、ぜひとも使ってみたいです。そして何より、ボーカル録音には勧められます。マイク自体に癖が少ないので、セッティング(距離や角度)やアウトボードの使い方で、いかようにもサウンドをデザインできることでしょう。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年10月号より)
LAUTEN AUDIO
FC-357 Clarion
オープン・プライス (市場予想価格/113,400円前後)
▪周波数特性/25Hz〜20kHz▪ダイナミック・レンジ/120dB以上▪インピーダンス/<200Ω▪外形寸法/76(φ)×197(H)mm▪重量/880g