RECボタンさえも省略したハンズフリー・レコーダー

LINE6BackTrack+Mic
ギタリスト/ベーシストに的を絞ったモノラル・ハンディ・レコーダー

LINE6  BackTrack+Mic  23,625円LINE6 BackTrackはコンパクトなモノラル・レコーダーだ。この手のハンディ・タイプのレコーダーは各社が販売しており頭打ち感があることは否めない。まさにハンディ・レコーダー戦国時代(笑)。だから各社がそれぞれシチュエーションに特化した製品を生み出している。その中で本機は特異である。良い意味でザックリしている。本機はユーザーをギタリスト/ベーシストなどの弦楽器奏者に絞っている。そして、ユーザーが何かを思いついて弾き出した瞬間を録る。基本、この目的に特化しているのだ。

録音ボタンすら無いシンプルなインターフェース


まず外観上のシンプルさに驚く。通常あるような入力ゲインのつまみや、そもそも録音ボタンもない。細かな入力設定などは、あらかじめWindows/Mac対応の付属ユーティリティ・ソフトで行う仕様。だから本体には必要ないのだ。そして録音ボタンが無いのは本機最大のセールス・ポイントであろう。ユーティリティ・ソフトでオート録音機能をONにしておくと、スタンバイ状態となった本機はいつでもあなたが弾き始めた瞬間から録音してくれるのだ! 演奏を止めれば録音も終わる。だからインスピレーションが生まれる瞬間だけを確実にとらえてくれるのである。時に録音ボタンを押すという行為ですらインスピレーションの妨げになるのだから、音楽家ってなんて自分勝手なんでしょうね(笑)。そしてありがたいことに、これらはすべて個別のWAVファイルとして本体内蔵の2GBのフラッシュ・メモリーに保存される。この"個別に保存"というのもうれしい機能。通常、録りっぱなしの場合は後で整理するのが大変だが、気に入ったファイルにマークを付けておけば、マークを付けたファイルだけ再生することも可能だし、任意のファイルをループ再生することもできる。マーク・ボタンは本体トップ・パネル上にある。さらにUSB端子を装備しているので、ファイルをコンピューター上へコピーするのも簡単だ。ちなみに電源もバッテリー駆動のみで、USB経由でコンピューターから充電するのみ。電池駆動は却下。だから本機は小さい&軽い! これもセールス・ポイントだろう!

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▲USB端子

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▲左から音量+/−ボタン、ヘッドフォン 

"使える"ギター入力のサウンド アンプへの接続も可能


肝心の録音は最高24ビット/48kHz対応で、モノラルの内蔵マイク、もしくはギター入力端子(フォーン)のいずれかで行う。ギター入力端子に接続すると内蔵マイクはオフになる。さすがLINE6だけあってギター入力の音は即使えるという印象。とてもナチュラルだけど単純にライン直結の音ではない。マイクに関しては音質うんぬんよりも主に音量面での設定が重要。単純にリハスタと自宅では出音の大きさが違うからだが、これもユーティリティ・ソフトでゲイン設定ができる。この辺は使い慣れてしまえば非常に単純な作業だ。内蔵マイクは、歌詞を見ながら曲作りなんてときにも重宝するだろう。こういう側面からもインスピレーションをサポートしてくれる。LINE6_BackTrackMicB.jpg▲左から出力端子(フォーン)、ギター入力(フォーン)

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▲左から内蔵マイク、再生モード切り替えスイッチ、再生/ファイル選択ボタン、自動録音のオン/オフ・スイッチ特筆すべきなのは出力端子もギター類に準じている点。つまり、ギター・アンプなどで鳴らせるのです! ギターを接続し、出力端子は通常通りアンプやアンプ・シミュレーターと接続すればそのまま演奏が可能なのだ。この際、オート録音機能を切って録音したファイルを再生しながら演奏すると両者が同時に鳴り、オート録音機能がONの場合は、新たに演奏した瞬間、再生音が入力音に切り替わる。例えばノイズや効果音的なものをあらかじめ本機に読み込んでおいて演奏時に再生すると不思議な効果を演出できる。前述のループ機能も何だか使えそうでっせ! さらにうれしいことに、本機はギター・ストラップなどに違和感無く奇麗に取り付けやすくなっている。完全にターゲットを絞っていて潔い!結局のところ、本機自体が文字通り音源として機能するのだから、有り余るほどの使いでがあるだろう。フル充電時なら連続約8時間の使用が可能なので、よほどでないで無い限り電池切れの心配も無い。そう!だから名前がBackTrackなのだ。インスピレーションがわいて録音するまでが音楽の第一段階とするならば、次にそれを使って演奏表現にまで昇華するのが第二段階。その両方において音楽家を刺激する。ザックリしているように見えて、おぬしなかなかやるな!(サウンド&レコーディング・マガジン2009年5月号より)

撮影/黒羽俊之

LINE6
BackTrack+Mic
23,625円
■ビット数/16/24 ■サンプリング・レート/44.1/48kHz ■記憶容量/2GB ■外形寸法/95(W)×51(H)×38(D)mm ■重量/227g