ダイナミック・マイクのように気軽に使用できるコンデンサー・マイク

SEIDEBE-1
最近は本当にいろいろな機材が安くなったと思います。特にコンデンサー・マイクは値段の幅が広くなっている機材の1つ。筆者の若いときは、コンデンサー・マイクなんて高根の花だった……それに加えいろいろなキャラクターのマイクも出そろい、特に宅録系の人にはうれしい限りでしょう。マイクは値段が高いから良いというわけでも無く、合う、合わないがあるので、さまざまなキャラクターのマイクを持っていた方が有利な場合も多いのです。今回のSEIDE BE-1も1万円ちょっとという価格帯。さてそのキャラクターはいかに? 早速チェックしてみましょう。

不要な低域が抑えられ
吹かれやノイズを軽減


本機には専用のハード・ケースが付属するので、“ちょっとリハスタで録音を”というときにも持ち運びが安心。このケースの中に、マイク本体、ダイアフラム部分にかぶせて使うスポンジ製のウィンド・スクリーン、マイク・スタンド取り付け用のアダプター、と付属品はすべて収まっています。マイク・スタンド・アダプターは一般的なマイク・スタンドでも使えるように変換アダプターも付属。本体の作りもしっかりしており、安価なイメージはありません。やはり外見の作りは意外とやる気を左右するので、これもうれしいところです。本機はコンデンサー・マイクなのでファンタム電源が必要ですが、電源を供給するとフロントの青色LEDライトが光って、電源が入っていることが分かる親切設計になっています。ただ……青色LEDの特徴でもあるのですが、ちょっとまぶしいです。プレイヤーなど(特にボーカリスト)によっては気になる人もいると思うので、何かを張って光を抑えるのも良いでしょう。では、早速肝心の音のチェックをしてみたいと思います。まずは声で聴いてみました。本機はコンデンサー・マイクによくあるハイパス・フィルターは装備されていないのですが、“なるほどこういうことか”と思わせる音を聴かせてくれます。と言うのは、低域がなだらかに下がっているのです。コンデンサー・マイクを初めて使ったときなど、“ボンボン”という不要な低域で悩まされたり、歌の“吹かれ”で困った人も多いと思いますが、そこが抑えられています。ダイアフラム周辺の編み目が細かいので、さほど気にならないということもありますが、オンマイクで吹かれが気になった場合は、既述の付属ウィンド・スクリーンを積極的に使うのも良いでしょう。高域に関しても、抜けを良くするために変なちりちり感が出てしまうマイクも多いのですが、これもうまく抑えられています。そんなところから、特に初心者には非常に扱いやすい音と言えます。ただ声に関して言えば、低域が抑えられている分、オフ気味だとちょっと軽くなってしまうので、オンマイク気味で使うのがポイントです。

聴感と近いサウンドで収音
オンマイクでの使用がお勧め


続いてアコギの録音でも試してみました。サウンド・ホール寄りにセッティングしてみましたが、変なボワボワ感もなく、声で試したときと同じで高域のちりちりした感じも無いので、音のしんの部分をとらえています。サウンド・ホールを気にすることなくセッティングできるのはうれしいです。そのほかにも、パーカッション類で試してみましたが、特にタンバリンなどの楽器では良い印象。これも良い意味で高域の反応がシビアでない分、耳で聴いている音に近い感じになります。全体的な音の傾向としては、低域を抑え中域(3kHz近辺)がちょっと持ち上がった感じで、これはダイナミック・マイクの延長線上で気軽に使える音色だと思います。音も前に出てくるので空間演出はちょっと苦手ですが、オンマイクのセッティングでどんどん使ってほしいマイクと言えるでしょう。また指向性に関しても、ちょっと広めなので、そこまでシビアでないのも特徴です。ただし、指向性が広いからといって周りのノイズを拾って困るというコンデンサー・マイクにありがちなことも少ないので、その点は問題無いでしょう。正直この価格帯のマイクは日ごろあまり使わないのですが、“気軽に録音したいというときには良いものだな”とあらためて感じました。特に本機の低域の下がっている感じは、宅録などでは重宝する特性だと思います。設置や扱いに関しても全くシビアではないので、コンデンサー・マイクに慣れていない人でも、パッと使って録音がスムーズにいくと思います。もちろんスタジオでも使える要素も十分にあり、今回は試していませんが、ロック系のドラムのトップやハイハットなどで複数本そろえて試してみたいですね。何といっても低価格なので、最初の1本やダイナミック・マイクからの買い足しなどに最適だと思います。気軽にコンデンサー・マイクの感じが味わえますよ。
SEIDE
BE-1
オープン・プライス(市場予想価格/12,500円前後)

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/30Hz〜1.8kHz
▪指向性/単一
▪付属品/スタンド・マウント・アダプター、ウィンド・スクリーン、専用ハード・ケース
▪外形寸法/5.3(φ)×140(H)mm
▪重量/376g