個性的な低域と現代的なレンジ感を持つ高性能コンデンサー・マイク

MOJAVE AUDIOMA-201 FET
MOJAVE AUDIOは、リボン・マイクで有名なROYERの創始者デヴィッド・ロイヤー氏が立ち上げたブランド。同社のリボン・マイクはどれも素晴らしく、既に定番化した感もあるので、これだけでもう期待してしまいます。そして同氏が新たに発表したコンデンサー・マイク、MOJAVE AUDIO MA-201 FETは外観はつや消しの黒で塗装されており手にするとかなりしっかりとした質感で丁寧に作られている印象です。どんなキャラクターのマイクなのか、チェックしていきましょう。

太く存在感のあるキック
低域に個性を持つサウンド


近年レコーディングのハイサンプリング化が進むにつれて感じるのは、録りの工程が以前にも増して重要になってきているということ。マイキングやゲイン設定、コンプレッションはもちろん、機材の特性、キャラクターなどを把握して適材適所に使用していくことが大事です。マイクは現在でもたくさんの新製品が発表されチェックが追いつかないほどで、安価な製品でも非常に高いクオリティのものも多く、録音時のマイク・アレンジは楽しくもありながら悩ましいところでもあります。MA-201 FETは、増幅回路にFET(電界効果トランジスター)を使用したコンデンサー・マイク。出力トランスはJENSENの物を使用しています。金蒸着のダイアフラムは3μmという薄さで一般的なマイクの半分。高感度が期待できます。今回はまずドラムで試してみました。キックにオフマイクでセットしてNEUMANN U47 FETと比較。マイクプリはNEVE 1073です。キャラの強いマイクプリですが、僕の場合ドラム録音には必ず使うので今回も使用しました。MA-201 FETには、音質を重視してかPADやローカットなどは一切ありませんが、キックのような高SPLのソースでも入力でひずむことはありません。しかし出力も大きいので、NEVE 1073だとゲイン設定が最小でもちょうどいい感じです。出音の印象はU47 FETよりも明らかに本マイクの方が低域を拾っています。説明書の周波数特性によると、100Hz辺りになだらかなピークがあるとのことですが、聴感上はもっと出ている感じ。オンでセットしたマイクと混ぜると非常に太く存在感のあるキックを作ることができました。かなり低域にキャラクターを持っている印象です。またドラム全体のオフマイクでは距離感がありながらも遠くない音で、同じ位置に立てたNEUMANN M49よりも低域はもっと伸びています。なかなか存在感のある良い音です。

ギター・アンプではゴツいサウンド
しっかりとした低域と近接効果


続いてエレキギター/アコギ/ボーカルでもチェック。SHURE SM57やROYER R-121とともにオンマイクでセット(5cmぐらい)で比較しました。ここでも明らかにキャラが違っており、かなりの大音量にもかかわらずかなり広いレンジにわたって収音されています。ギター・アンプはFENDERタイプのコンボ・アンプ、ギターはGIBSON Les Paulだったのですが、SM57とブレンドするとMARSHALLのキャビで鳴らしたようなかなりゴツいサウンドで録音できました。Les Paulの中低域のもっちりしたところもしっかり感じられ、かなり面白いマイクです。アコギではワイド・レンジが災いしたのか、中域から高域の押し出しがやや弱く感じられました。ひずみ感も少ないので、ザクザクいくストロークでは少し物足りないかもしれません。ここで気付いたのですが、本マイクは単一指向のみに絞っているせいか、その指向性もかなり鋭いようです。15°ほど外すとかなりの変化があります。この辺りも個性的。男性ボーカルでは、余分な低域は無くしっかりと低域が感じられ、また近接効果は適度に抑えられており好感触です。ミッドレンジはひずみ感が少なく非常にスムースですが、ロック系のボーカルだともう少し荒れた感触が欲しくなるかもしれません。AKG C414と比較すると中域の密度がやや薄いものの、全体的には本機の方がワイドであると感じました。低域に関してもローカット・フィルターの必要性は感じさせないところも、よく考えられて設計されているゆえでしょう。個性的なサウンドなのでジャンルとのマッチングはありますが、太いボーカルが録れそうです。今回は試せなかったのですが、ベースのアンプやウッド・ベース、チェロなどにも最適ではないでしょうか。複数そろえてタムにも立ててみたいですね。本機は十分なスペックを満たしている高性能なマイクであるとともに、非常に個性的。同じような質感(特に低域)のマイクが今までに無く、U47 FET辺りに近い印象も受けますが、はるかに現代的なレンジ感があります。価格帯も比較的手の届きやすい本機、宅録の最初の1本にはキャラが濃いかもしれませんが、数多くのマイクをアレンジするプロのエンジニアにこそ使いがいのあるマイクだと感じました。
MOJAVE AUDIO
MA-201 FET
105,000円

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/20Hz〜20kHz
▪指向性/単一
▪付属品/専用ハード・ケース、ショック・マウント
▪外形寸法/50(φ)×196(H)mm
▪重量/500g