2基の真空管プリアンプも搭載するFirewire接続のオーディオI/O

PRESONUSFireStudio Tube
これまでに多種多様なオーディオ・インターフェースが発売されているが、既に価格、性能共に行きつく所まできていると言っても過言ではないだろう。ユーザーの立場でも同じことが言えるのではないだろうか? CDのマスターの引き渡しがほとんどファイルで行われている現在、豊富なデジタル入出力端子や複数のMIDI端子が果たしてすべてのユーザーに必要だろうか? 今回、紹介するFireStudio Tubeはさまざまな機能を一度整理し、かつ+αを感じさせる、最高24ビット/96kHz対応の16イン/6アウトのオーディオ・インターフェース。それでは早速チェックしていこう。

DRIVEつまみで
真空管のひずみを調整可能


まずは本機のウリである豊富なアナログ入出力端子を見てみよう。本機はデジタル入出力端子を装備しない、アナログ入出力のみという潔い仕様。リア・パネルにモノラル8系統のマイク入力(XLR)、6系統のライン入力(TRSフォーン)、そしてフロント・パネルには2系統のマイク/Hi-Z入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)を装備する。出力端子は6系統のライン出力(TRSフォーン)を装備。MIDI端子も1系統装備されているが、リア・パネルのスペース確保のために変換ブレイクアウト・ケーブルを採用している。非常に仕上がりの良いフロント・パネルの2系統のマイク/Hi-Z入力のプリアンプは"Super Channels"と名付けられていて12AX7真空管を使用したクラスA回路で、48Vファンタム電源はもちろんのこと、80Hzハイパス・フィルターやリミッターも装備。音色は真空管使用だけあって、マイルドでウォーミーな感じだ。ローコストの真空管プリアンプというとアタック感が弱く(遅く)感じたり、ハイの抜けが弱かったりという印象を受けるが、本機はアタック、立ち上がりも非常に感じが良い。アコギで試してみたが、ストロークで腕を振り落としたときの"ザクッ"というアタック音とその続きとなる"ジャラーン"という音の粒立ちが太く、非常にナチュラルで良い。また、このプリアンプはゲインのほかに真空管への信号量を調整するDRIVEという2つのコントロールを備え、DRIVEを上げていくと中高域でひずみ効果が生まれる。これでループやリズム・セクションをトリッキーな音にしたり、元気のない音にスパイスを注ぐことも可能だ。また、エレキベースのときも中低域にコシがあるずっしりとした音で、ボーカルや低域に特徴のある楽器には最適なプリアンプではないだろうか。また、VCAベースのリミッターも搭載。スレッショルドとメイクアップ・ゲインのみのコントロールでアタックとリリース・タイムはオートとなっている。効きはアタック、リリース共にかなり早めで分りやすくかかる。リア・パネルの8系統のプリアンプも真空管ではないものの非常に出来がいい。本機はオペアンプなどを一切使わない、ディスクリート回路で設計されている。クラスAの高電圧で動作するこのプリアンプのサウンドも非常に楽しみだ。フロント・パネルのSuperChannels同様にアコギで試してみたが、フロントのそれとは違ったキャラクターだが非常に印象は良い。低域の押し出しにそれほど個性は無いが、低域から高域までの周波数のバランスはフラットでヘッドルームの広さも奥深かく、ダイナミクスのあるストローク奏法では粒立ちの明瞭感がはっきりしている。

ガッツのある太い音で
ライブ録音でも活躍


このタイプのオーディオ・インターフェースの魅力はなんと言ってもフットワークの軽さだろう。ノート・パソコンとオーディオ・インターフェースがあればライブ・レコーディングやリハスタでのバンドの一発録りが可能になる訳だ。通常この価格帯のオーディオ・インターフェースでは入力が8系統程度になっているがFireStudio Tubeは16系統もの同時入力が可能だ。バンドの楽器すべてを入力しても恐らく対応できるはずだ。また、付属のFireControlというスタンドアローンのミキサー・ソフトを使えばゼロ・レイテンシーでモニタリングできるほか、最大ステレオ4系統のモニター・ミックス作成も可能だ。今回は本機を使ってライブ・レコーディングも試みてみた。2月15日に代官山UNITで、私がプロデュースしているdipのライブ収録。持ち込んだシステムは至って簡単で、2世代くらい前のAPPLE MacBook(INTEL Core 2 Duo 2.16GHz)にFireStudio Tubeと外付けのハード・ディスクだけだ。本機への入力はUNITのPAコンソールのダイレクト・アウトから直接もらった。dipのメンバー構成はギター/ボーカル、ベース、ドラムというシンプルなトリオ・サウンド。各チャンネルの振り分けは以下のようにした。①ベース②キック③スネア④ハイハット⑤タム⑥フロアタム⑦トップL⑧トップR、そしてフロント・パネルのSuperChannelsにボーカルとギターをそれぞれ入力した、合計10チャンネルの同時録音。安定した動作で録音はなんの問題も無く済んだ。約1時間の収録だったライブを自宅にてチェック。コンソールのプリアンプを通った音ではあるが非常にガッツのある良い音だ。広いレンジのあるプリアンプのおかげでキックやスネアがひずみがないうえに、クリアで押し出しもよく、特にトップの音はシンバルのキレや伸びも良く録れている。SuperChannelsで収録したギターとボーカルはガッツのある太い音で、ロック・バンドには最適なオーディオ・インターフェースではないだろうか。本機は、STEINBERG Cubase LE4のほか、さまざまななプラグイン、ループ素材を収録するProPak Software Suiteも同梱されている。購入後すぐ音楽制作を始められるのもミソだろう。

▲リア・パネル。MIDIブレイクアウト・ケーブル用端子、FireWire端子×2、ライン出力×4、メイン出力×2、ライン入力×6(すべてTRSフォーン)、マイク入力×8(XLR)

PRESONUS
FireStudio Tube
オープン・プライス(市場予想価格/120,000円前後)

SPECIFICATIONS

■外形寸法/482(W)×44(H)×241(D)mm
■重量/4.5kg

REQUIREMENTS

■Windows/Windows XP以降、INTEL Pentium 4/AMD 1.4GHz以上のCPU、1GB以上のRAM
■Mac/Mac OS X 10.4 以降、PowerPC G4 1GHz以上のCPU、1GB以上のRAM