２基のコンデンサー・マイクを搭載するハンディ・サイズの4trMTR - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

TASCAMDP-004

石塚“BERA”伯広

ここ数年人気の高いハンディ・レコーダーはバンドのリハーサルや、作曲時のメモ、フィールド・レコーディングなどミュージシャンには無くてはならないツールになってきている。そんな中で発売されたTASCAM DP-004は4trのMTRながらコンデンサー・マイクを２基内蔵して、EQやエフェクトなどは搭載しない絞り込んだデザインが特徴。レコーダーとしての使い勝手を中心に、多重録音の基本機能を盛り込んでいる本機の性能をチェックしていこう。

初心者でもすぐに使える
シンプルな機能が特徴

DP-004は単三電池４本で駆動するデジタルの4trMTRだ。16ビット／44.1kHz対応で、２tr同時録音、４tr同時再生が可能となっている。軽く、大きさもタバコ２箱半くらいのハンディ・サイズなので、気軽に持ち運んで録音できるのが魅力だ。メディアはSD/SDHCカードを用い、SDカードは最大2GB、SDHCカードは最大32GBにまで対応。1GBのSDカードが付属しており、この場合は1trで約90分の録音が可能となっている。入出力端子もシンプル。マイク／ライン対応のモノラル入力（フォーン）をA/B２系統とステレオ１系統の出力（ステレオ・ミニ）が装備されており、モノラル入力のうち１系統はエレキギターやベースなどを直接挿すことのできるHi-Z入力に切り替えることもできる。入力ゲインはINPUT A/BのLEVELツマミで調整し、トラックごとの音量調整は、TRACK１〜４に用意された音量調整ツマミで行う。RECボタンなどにはLEDを装備。再生、停止、録音開始などをつかさどるトランスポート・コントロール部分の配置も分りやすく、初めて触る人でも簡単に扱えるだろう。

内蔵コンデンサー・マイクは
中低域の伸びと自然な録り音が特徴

それでは、本機の最大の特徴とも言える内蔵コンデンサー・マイクをチェックしてみよう。これは無指向でフロント・パネルの両端に正面向きで搭載されている。各マイクは任意のトラックにアサインできるので、２基を同時に使用してパンを左右に振り切ることで、ステレオ録音することもできるし、片方だけで録音しつつ余ったトラックにシンセやキーボードなどのライン信号やギターなどの楽器を接続するといった使い方もできる。スタジオでバンドのリハーサルをステレオ収録してみた。スタジオの広さは約16畳で、DP-004を中心にドラムは左前に約1.5m、ベース・アンプは正面に約2m、ギター・アンプは右前に約2mという位置関係で配置。演奏は爆音系のバンド・サウンドといった趣だった。レコーディング時にマイク感度を３段階で調節できるので、一番低い設定にして音量調整をした。INPUT A/BのLEVELツマミを時計方向に回していくと、LCDディスプレイ上に表示されている、棒グラフ状のピーク・メーターが徐々に上がっていくので、適正レベルになったら任意の２trのRECボタンを押して、トランスポート・コントロールの再生と録音開始ボタンを押せば録音ができてしまう。説明書無しでもすぐに使えるシンプルな操作性が魅力だ。録り音の印象はとても良かった。ナチュラルで、特に中低域が伸びやかに録れており臨場感がある。ステレオ・イメージはワイドめで、中抜けする印象もないため、その場で鳴っている音がそのまま収録できる印象だ。続いて、自宅に持ち帰りアコギでチェック。30cmくらいの距離に本機を設置してステレオで録ったところ、ストロークもアルペジオもバランスよく収録されていた。変なコンプ感も無く、自然なニュアンスで高域から低域までをカバーしている。さらに近所でフィールド・レコーディングを試みたところ、遠くで遊ぶ子供の声からそばを通る車の音まで広いレンジで収録できていた。コンデンサー・マイクはボディのやや内側に入っているため、風切り音も軽減されているようで、あまり気にならない。気になる場合はティッシュなどで本体を巻けばさらに軽減できるだろう。また、外部ソースを入力した音も非常に印象が良かった。機能がシンプルゆえに余分な回路が省かれている分、音の抜けは抜群。特にHi-Z入力でギターを録音したサウンドは価格が倍以上するMTRにも引けを取らない印象だ。中低域にコシがあって音圧も十分に出ている。収録したトラックをカット、コピー、ペーストというように編集することも可能。全トラックをステレオにまとめるバウンス（ピンポン）機能もあるので、自由度の高いトラック制作が可能となるはずだ。スタジオでリハーサルをメモ録りした後に家でボーカルやギターをダビングしてアレンジを考えたいという人にはお勧めできる一台だ。