高いコスト・パフォーマンスの多入出力オーディオ・インターフェース

FOCUSRITESaffire Pro 40
FOCUSRITE Saffireレンジの第2世代となるSaffire Pro 40が発売された。価格的にはSaffire Pro10の下に位置する本機だが、20イン/20アウトとSaffire Pro 26に近い入出力数を誇っており、XLR端子(コンボ仕様)を搭載するなど、価格を抑えつつリニューアルしたお買い得版という印象。早速レビューしてみよう。

充実の入出力端子と
シャープな音のマイクプリ


まずは本機の基本仕様を押さえておこう。


  • FOCUSRITEマイクプリ×8を装備

  • ADAT×1系統、S/P DIF×1系統

  • 24ビット/96kHz対応

  • 2系統の独立したヘッドフォン端子

  • 18イン/16アウトのDSPミキサー

  • Focusrite Plug-in Suite付属


とにかく驚いたのが、市場予想価格6万円前後という価格設定だ。箱から取り出すとこれがしっかりした重さで、外観も全然安っぽくない。上位機のPro 26ではマイクとラインの入力端子が別だったが、本機ではXLR/TRSフォーン・コンボとなりADATが1系統減った。あとはワード・クロック端子とハイパス・フィルターが省略された程度の違いだ。20インはアナログ8ch+デジタル10chに加え、2つの“Loop Back”というDSPルーターからのインプットを足した数である。また20アウトはステレオ1系統のモニター出力を加えた数。フロント・パネルの2つの入力(XLR/フォーン・コンボ)はギターなどのハイ・インピーダンス楽器にも対応しており、Instスイッチで切り替える。マイクとInstでのゲインは+10〜+55dBなので、ドラムのような大出力ソースには−9dBのPadを使おう。ライン入力時は−10〜+36dBでゲイン・コントロール可能だ。音質をチェックしてみてさらに驚いた。特にライン入力時のAD側の音質は、価格が倍以上の製品とほとんど差が無い印象。繊細というよりはワイルドでワイド・レンジ。DA側は少し荒めに感じるが、低域もちゃんと出ていて勢いもある。マイクプリはFOCUSRITEらしいシャープな音色なので、ボーカルのさらりとした質感が出せるのがいい。ただゲインが+55dBなので、ダイナミック・マイクでささやき系のボーカルを録音する場合などは少しゲインが足りない。もちろんコンデンサー・マイクなら問題無し。Inst入力も優秀で、ベースやエレキギターを直接つないだ際の音質は良好だ。ベースは太く、ギターはシャープに録音できる。ヘッドフォン端子はライン・アウトに比べ若干レンジが狭いので、ミックス時の音作りはモニター・アウト経由で行うのがお勧めだ。

新しくなった制御ソフトに加え
4種類のプラグインも付属


制御ソフトSaffire Pro 40 Controlは、従来とは大幅に違うデザインになった。内蔵DSPによるミキサー部分は18イン/16アウトという構成で、もちろんゼロ・レイテンシーでのモニタリングが可能。8系統のモニター・ミックスが作れる。DAWとのやり取りは20イン/20アウト(96kHz時は16アウト)で、そのうちから18までをセレクトして本機のDSPでミックス可能。ステレオ/モノ・フェーダーの切り替えも簡単で使いやすい。ルーター部分はアウトプットへの信号アサイン状況が一覧できるので大変分かりやすい。ここで、上記のLoop Backへの出力ソースはDAWの19/20chに割り当てられ、例えば“ライン入力した4台の外部シンセサイザーをDSPミキサーで混ぜて、DAWのステレオ・トラックに仮録音”といったことが可能になる。またインプット信号を直接アウトプットに出せるので、ボーカル・マイクに外部コンプレッサーをインサートして再入力することも可能だ。従来よりもかなり自由度が増しているが、構成はうまく整理されている印象。モニター・セクションは7.1chまでのサラウンドにも対応でき、フロント・パネルのノブでボリュームの制御が可能だ。操作上の注意点としては、デフォルトの状態ではモニター・ボリュームとヘッドフォン・ボリュームが独立していないので、モニター・パネルでヘッドフォンに対応する7/8や9/10chをShift+クリックする必要がある。付属プラグインは従来のSaffire Plug-in SuiteからFocusrite Plug-in Suiteへ変更された。EQ、コンプ、リバーブ、ゲートの4種類はDAWホスト側で使用するAudio Units/VSTプラグインだ。下位機種のSafiireには内蔵DSPによるエフェクトとAudio Units/VSTプラグインの両方が付いていたが、Saffire Pro 40では後者のみの付属。一番おいしいのはやはりワイルドにかかるコンプで、Liquid Mixにも似たFOCUSRITE独自の音色変化が楽しい。総合的に見た本機の完成度は高く、しかも録音される音質ではかなり上位レベルにあるので、他社にとってはかなりの脅威となるのは間違いない。バンドルされるソフトにはDAWに加えドラム・ループなどのサンプリング音源もあり、実用的で死角なしといったところだ。

▲リア・パネル。左よりS/P DIF入出力(コアキシャル)、MIDI OUT/IN、FireWire 400端子×2、ADAT入出力(オプティカル)、モニター出力を含むアナログ出力×10(TRSフォーン)、マイク/ライン入力×6(XLR/TRSフォーン・コンボ)

FOCUSRITE
Saffire Pro 40
オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/20Hz〜20kHz ±0.1dB
▪全高調波歪率/<0.001%
▪外形寸法/482(W)×45(H)×265(D)mm
▪重量/3kg