取り回しの利く小型ボディが魅力
無指向カプセルも付属
まず本体のサイズは全長133mmととてもコンパクトになっているので、セッティングの際にとても楽! これ、すごく重要なことなんです。本来狙いたいところにマイクが入らないってこと、結構多いですからね。楽器収音において、当然マイクの形状や特性によって狙う場所は変わってくるわけで、楽器の一番おいしいところを探す際にマイクの移動が楽なのは本当に好印象です。また持ち運びや保管に便利な木製のケースとマイク・スタンドに取り付ける際に必要なホルダーも付属しています。マイク本体にはフラット/ローカット/−10dBのPADを切り替えるスイッチがあり、録音する楽器に合わせて選択可能。指向性は単一ですが、無指向カプセルも付属されます。また ダイアフラムは20mmとなっており、狙った音をピンポイントで収音するのに適しているマイクだと言えるでしょう。というわけで、実際にとあるユニットのベーシック・レコーディングで使ってみました。まずリズム・トラックのループに合わせてアコースティック・ギターを録音してみます。通常僕は、アコースティック・ギターの録音の際にはNEUMANN U67やM269を使い、サウンド・ホールを少しネック側に傾けてマイクを立てます。それはギターの弦の音というよりも、ボディの共鳴を録るイメージなのですが、同じ狙い方で本機を使用してみたところ、ボディの鳴りにちょっと物足りなさを感じました。しかし、本体をブリッジ側に移動して、あらためて録り直してみると、ボディの鳴りもよく拾っており、何より6弦〜1弦までのバランスがとてもよく録れていました。ここで録音した幾つかのトラックは、そのまま生かせるクオリティ。そのまま本チャンに使用しています。また、本機とほかのマイクを同時にギターに立てて、同時に同じフレーズを録音してみる、という使い方もいいでしょう。個性が強いマイクなので、面白い結果が得られるのではないかと思います。周波数特性的にも、フラットでありながらミッドレンジ(特に1kHz〜2kHz辺り)に力強さがあります。硬いわけでもなく、柔らかいわけでもない音色は、いい意味で個性が出ていると思います。
フラットな周波数特性でありながら
個性的なサウンド
次にパーカッション・スネア(ブラシを使用)の録音で試してみます。デッドな環境でありながら、楽器の響きは忠実に録りたい。そんなレコーディングでも本機は大活躍でした。プレイヤーにスネアをたたいてもらい、同じ部屋でヘッドフォンをしながらマイクの位置をあれこれ動かして、マイキングのポイントを探したところ、思わぬところで目指す音のポイントを発見できました。また今回は試すことはできませんでしたが、いろいろな楽器はもちろん、ドラムのオーバーヘッドにも良いでのはないかと感じました。 次はエレキギターです。普段使っているSHURE SM57の代わりに、ギター・アンプから少し離し気味に立てたところ、アンプの個性と本機の個性が相まって独特の音を得ることができました。限られた時間の中で試用した感想ですが、正直にとても良いマイクだと思います。今回試すことのできなかったさまざまな楽器(例えば、フルート/オーボエ/バイオリン/ビオラなど)を試してみたら、もっと違う新たな発見があるのではないでしょうか。フラットではありますが、個性的なサウンドなので、ボーカルに使用するのは難しそうですが、本機を使えば楽器の音の印象がガラリと変わるので、普段使っているマイクにもう一本、という意味合いで使用するのにお薦めです。ただ“ちゃんと録れる”ということだけではなく、“あんなサウンドにするならこのマイク”と言える個性がMXL604にはあります。実際の現場では、オールマイティなマイクはもちろん重要ですが、サウンドを作っていく現場では、プレイヤーやエンジニアの好みを加味してマイクを選んでいるのも事実。いうまでもなく、“個性”もマイクの重要素の1つです。そんな中で、可能性を秘めた一品に出会えたと思える製品の登場だと思いました。
SPECIFICATIONS
▪周波数特性/30Hz〜20kHz
▪感度/15mv/Pa
▪感指向性/単一(無指向カプセル付属)
▪インピーダンス/150W
▪外形寸法/20(φ)×133(H)mm
▪重量/135g