リバーブ付属/大型レベル・ノブ装備のデスクトップ型オーディオI/O

T.C. ELECTRONICDesktop Konnekt 6

T.C. ELECTRONICと言えば昔からデジタル系のエフェクトに強いと言う印象を持っていました。1990年代後半のFinalizer、2000年代に入りDAWの全盛とともに進化したPoweCoreシリーズ。そんな同社の新しいオーディオ・インターフェースKonnektシリーズに新たに加わった新製品、Desktop Konnekt 6をレビューします。2イン/2アウトのオーディオ・インターフェース機能に加えて、リバーブ・エフェクト付属、さらに大型のノブでモニター・レベルのコントロールもできるという非常にユニークな本製品。Konnektシリーズならではのデザインも魅力です。早速レポートしていきたいと思います。

24ビット/192kHz対応
設定で4アウト仕様にもなる


大きさは一辺が18cmほどの正方形のデスクトップ型で、各ノブに素早く指が伸びる仕様。パネルには大きなボリューム・ノブを中心に、2ch分のインプット・ゲイン、後述するリバーブ・センド、インプット/DAWのモニター・バランス、ヘッドフォン・レベルなどのノブ類、モニターのモノラル・スイッチやDIMスイッチなどがレイアウトされています。オーディオ・インターフェースの仕様としては2イン/2アウト、最大24ビット/192kHz、FireWire接続(バス・パワー駆動可能)で、対応オーディオ・ドライバーはWDM/ASIO/Core Audio。さらにDAWソフトとしてSTEINBERG Cubase LE 4が付属しています。付属CDからドライバーをインストールすると専用のコントロール・ソフトであるTC Nearも同時にインストールされます(画面①)。20080801-01-002▲画面① 本機とDAWをコンピューター内部でつなぐルーティング・ソフト、TC Near。入出力の設定をここで行える。コンピューター上で起動させておけば,本機のpanelボタン一押しで表示/非表示が即座に行えるこれは、いわばDesktop Konnekt 6とDAWをつなぐルーティング・ソフトで、入出力の各設定はこのTC Nearで行うことができ、一度立ち上げておけば本体のpanelボタン一発で呼び出せるので、例えばバッファー・サイズを素早く切り替えたいときなどに便利です。そのほかにもDIMレベルの設定、ヘッドフォン・レベルとモニター・アウト・レベルの個別設定なども行うことが可能。特にヘッドフォン・レベルの個別設定では本体の大型ボリューム・ノブとヘッドフォン・レベルをリンクさせることができるので、例えば1人で作業するときはリンクさせ、演奏者とオペレーターが別々の場合はリンクを外して個々に独立したモニター・レベルで作業を行うことも可能です。ちなみにDesktop Konnekt 6の物理的なアウトプットはメイン・アウトのステレオ1系統(フォーン×2)とヘッドフォン・アウト1系統となっていますが、TC Nearの設定で“HEADPHONE SOURCE”を“MAIN MIX”ではなく“DAW(FireWire Channels 3+4)”にすると事実上、4アウト仕様として使うことも可能になります(画面②)。20080801-01-003▲画面② 基本は2イン/2アウト仕様の本機だが、このセットアップ画面でヘッドフォン端子にメイン・アウトとは別のソースを割り当て、4アウト仕様にすることも可能逆にインプットに関しては、マイク入力(XLR)×1、ギターもつなげられるライン/インスト入力(フォーン)×2(L/R)が用意されており、作業によってセットアップが切り替えられるようになっています。これは本体のsceneセクションのボタンで選択することができ(TC Near上でも可)、“MIC+INST”“DUAL INST”“STEREO IN”の3パターンから選ぶことができます。まず“MIC+INST”ではch1がマイク入力、ch2がライン/インストRの組み合わせで、このsceneのときのみ+48Vファンタム電源と、低出力のマイク接続時に使うBOOSTスイッチがTC Near上に現れ、ソフト上の独立した2本のインプット・フェーダーでDAWに送るレベルを個々に調整することができます。次の“DUAL INST”ではch1がライン/インストL、ch2がライン/インストRの組み合わせで、これもTC Near上の2本のインプット・フェーダーで個別のモノラル・チャンネルとして扱うことが可能です。そして3つ目の“STEREO IN”はTC Nearのインプット・フェーダーが1本で1系統のステレオ・チャンネルとして扱われる仕様。各シーンごとのセットアップは保存でき、リコールがボタン1つで瞬時に行えるため作業の切り替えがスムーズにできるのも特筆すべき点と言えるでしょう。

高い解像度のモニター・アウトと
周波数レンジの広いマイクプリ


さて実際の使用感ですが、出音のチェックからしていきましょう。Windowsマシン&STEINBERG Nuendo 3の環境で試してみます。まず以前、筆者がNuendo 3で行ったミックス済みのプロジェクトを立ち上げて聴いてみたところ、非常にクリアな音像で高域から低域まで伸びのある明るい印象でした。もともとこのミックスに対して持っていた自分の印象では、中域にコシのある若干重いものだったのですが、高域から低域まで聴こえていなかった成分が付加された感じで、若干新しいバランスに聴こえました。恐らく周波数レンジが広がったためだと思うのですが、T.C. ELECTRONICならではの高いパフォーマンスがうかがえます。逆に言うと、高い解像度で聴こえるため粗が目立つとも言えるので、ミックスではよりシビアなアプローチが必要になってくるかもしれません。次は、実際にマイクを立てて録り音をチェックしたいと思います。SHURE SM57でアコースティック・ギターを録音してみたところ、ミックスを試聴したときと同じく高域から低域まで奇麗に伸びていて、ワイド・レンジで録れるという印象でした。アコースティック・ギターのストロークのシャリシャリしたところから、ボディの鳴りまでバランスが良く、市場で高い評価を受けている同社のテクノロジーがここでも発揮されています。さらに自分の声を録音してみたところ、子音の高い部分までしっかり録ることができ、ボーカル〜楽器までソースを問わずオールマイティに使えるマイクプリだと思いました。インプット・レベルの設定は、視認性に優れたメーターが本体パネル中央に搭載されており、“input”(インプット・ゲインでの信号)、“pre”(ゲイン後のインプット、DAWからの出力、リバーブ出力の合計)、“post”(ボリューム・ノブ後のアウトプット・レベル)の3段階で切り替え可能なので、用途に応じてしっかりレベル管理ができるようになっています。モニターに関しては、本機のダイレクト・モニタリング機能は前述したインプット/DAWのモニター・バランスをノブで調節するタイプですが、TC Near上でバッファー・サイズを32〜8,192サンプルまで選択できるので、ハイパワーなマシンであればレイテンシーを抑えてDAWをスルーしたモニタリングも問題無くいけると思います。適宜シーンによって使い分けて作業を行うことができるでしょう。

消え際までスムーズな残響を持つ
モニター/ミックス対応リバーブ


そして本機にはハードウェア機並みのクオリティと再現性をネイティブ環境で実現する同社の新技術=AlgoFlexを採用したM40スタジオ・リバーブが付属されています(画面③)。20080801-01-004▲画面③ 本機にはM40スタジオ・リバーブが付属している。TC Near上で立ち上げてヘッドフォン・モニターにかけられるのはもちろん、ミックス時にVST/Audio Unitsプラグインとして使用可能。いずれの場合も本機がプロテクション・キーとなり、CPUで処理されるしかもレコーディング時のモニタリングにかけるリバーブ(TC Near上で立ち上がることになる)と、ミキシング時に使用できるVST/Audio Unitsプラグイン・バージョンの2種類の独立したリバーブが付属しており、“HALL”“ROOM”“PLATE”の3種類のリバーブ・タイプを選択することができます。そのほかのパラメーターは“PRE DELAY”“DECAY TIME”“HI COLOR”の3つというシンプルな構造で、モニター時に関しては本体パネルのreverbノブでセンド量を調整することが可能。左に回し切るとリバーブが自動的にオフになります。細かなパラメーターの設定はTC Near上で行うのですが、個々のチャンネルにセンド・ノブが付いているので、例えば“MIC+INST”でマイク入力に対してはリバーブをかけて、ライン/インスト入力はドライのままモニターするというような柔軟な使い方もできると思います。そしてTC Nearのリバーブ・セクションにはプリセットの選択、リバーブ用メーターのホールド・タイムのセッティング、さらにA/B比較機能が付いているのもポイントでしょう。音色に関してはさすがデジタル・エフェクト系に強い同社だけあって密度の濃く、残響の消え際までスムーズに聴こえ、非常にクオリティの高い作りになっていると思います。個人的には“PLATE”のアルゴリズムが好みでした。作業に応じて各sceneごとに好きなパラメーターを保存しておき、後は手元のreverbノブで直感的に操作できるようにしておくといいかもしれません。本機の特筆すべき点は、高品位なマイクプリを搭載したオーディオI/Oであると同時に、モニター・レベル、インプット・ゲイン、リバーブ・センドなどへすぐに手が届き、直感的な操作が行えるコントローラーとしての役割の部分も大きいと思います。インプット/アウトプット数は少なめですが、この価格を考えれば初心者のファーストI/Oとしてはもちろん、中級者以上のセカンドI/Oとしてもいいのではないでしょうか。20080801-01-005

▲リア・パネル。左からFireWire、ヘッドフォン、モニター・アウトL/R(フォーン)、ライン/インスト・インL/R(フォーン)、マイク・イン(XLR)

T.C. ELECTRONIC
Desktop Konnekt 6
オープン・プライス(市場予想価格/30,000円前後)

SPECIFICATIONS

▪周波数特性(ライン出力)/20Hz〜20kHz(+0/−0.1dB)
▪入力インピーダンス/1kΩ(マイク)、1MΩ(ライン/インスト)
▪外形寸法/185(W)×64(H)×176(D)mm
▪重量/800g

REQUIREMENTS

▪Mac/Mac OS X 10.4.10以上および10.5、PowerPC 1GHz以上またはINTEL CPU、512MB以上のRAM
▪Windows/Windows XPおよびVista x32、Pentium 4 1.6GHz以上、512MB以上のRAM