ビンテージ・キーボードのサウンドがリアルに再現されたソフト音源

MARK OF THE UNICORNElectric Keys

50種類ものビンテージ・キーボード・サウンドを網羅したソフト音源であるMARK OF THE UNICORNの新製品Electric Keysをレビューしていきます。RHODESやHAMMONDなど定番の音色以外にも、かなりマニアックな楽器の音色が入っているようで、その手の機材好きとしては大変楽しみです。早速試してみました。

RHODES特有の箱鳴りまでも
忠実に再現したサウンド


まず、40GBというデータ量に驚きます。DVDディスク6枚組という大作です。サウンド・ファイルは音色ごとに分かれているので、気に入った音色だけをインストールすることも可能です。また、外付けハード・ディスクにインストールすることもできます。本ソフトはメモリーへの負荷を減らすためにハード・ディスクからのストリーミングでサウンドを再生するので、高速なハード・ディスクを用意した方がよいでしょう。またオーサライズ済みのiLokが付属してくるので、面倒な手続きなしにすぐ使えるのもうれしいところです。早速、APPLE MacBook にインストール。Audio Units/MAS/DXi/RTAS/VSTi対応のプラグインとしても使用可能ですが、スタンドアローンでチェックしてみました。起動すると、まずRHODESを模した感じのキーボードが画面に現れます。というわけで,、まずはRHODES系音色である"Classic Electric Piano"からロードしてみました。音色を選ぶ画面をダブル・クリックすると各音色のリストが現れます。RHODESの音色は丁寧にもMK Iの年代違いが2種類とMK II、MK Vの計4種類。まずはMK Iの1975年式、"1975-MK I"から立ち上げ、弾いてみると、うーん、良いですね。状態の良いMK Iならではの高音のきらびやかな音色がとても気持ちよいです。タッチによる音色変化も違和感がなく、ベロシティの具合もよく練られているなあという印象です。10分ほどジョー・サンプル気分でたわむれてしまいました。RHODES特有の箱鳴りもちゃんと再現されています。続いて"1980-MK II"。自分のバンドの前作とそのツアーで弾き倒した経験があるので勝手知ったるMK IIですが、そうそうこの音です。MK Iに比べると若干レンジが狭く、癖のある中域の鼻づまり気味な感じがよく出ています。ドライブを少し上げ、トレモロのスイッチを入れてみるとこれがまた良い雰囲気で、後述するエフェクト・セクションのアンプ・シュミレーターと合わせて鳴らすと、ほとんど実機と区別つかないんではないでしょうか。

昔風の音作りに有効な
UVInylエフェクトを内蔵


と、ここまで弾いてみてレイテンシーの少なさにも驚かされました。ライブで使えるかも、などと思いつつ別の楽器も。何しろたくさん音が入っているので全部の感想はとてもお伝えできませんが、印象に残ったものを幾つか挙げていきます。クラビ系は、HOHNER Clavinet D6/E7、そしてCタイプをモデリングした"Funky Clavs"が3種類入っていますが、どれも大変リアルです。あえて本物との違いを挙げるとすれば、ピッチが良すぎることくらいでしょうか(笑)。そして懐かしのエレピ、YAMAHA CP80をモデリングした"Japanese CPianos"。今となっては使う人見たことないですが、好きなんですよね、あの音。コーラスを薄くかけてダリル・ホール&ジョン・オーツの名曲を弾いてみたりして、一人でご満悦です。独特な低音のファンキーな音がいい具合に再現されています。あとはストリングス・アンサンブルの名器、Solina String Ensembleをモデリングした"String Machines"。1970年代のジャズ・ファンクやソウルなどによく使われていた楽器で、自分でも本物を所有しているので聴き比べてみましたが、ほとんどそん色無い出来栄えです。強いていうならば本物特有のぎらっと感じが若干薄れるかな、という気もしますが、十分使える音です。そのほかにもオルガン系はHAMMONDはもちろんのこと、VOXやFARFISAなども網羅し、YAMAHAの最初期のFM音源キーボード、GS-1のプリセットなど、マニアックなセレクションがめじろ押しです。そして、これらの音色を2種類レイヤーして同時に鳴らしたり、スプリットしたりも簡単にできます。また、エフェクト・セクションも充実。8種類のエフェクトを同時使用できます。モジュレーション系や空間系の定番エフェクトはシンプルなパラメーターでとても使い勝手が良いですね。面白かったのはUVInylで、レコードのノイズを足したりして、昔風のサウンドを簡単に作れます。アンプ・シュミレーターもよくできていて、通すことでRHODESなどはよりリアルな音になります。もう一つ特筆すべき点はここまでほとんどマニュアル要らずで直感的に操作できてしまう点でしょう。音色をもっと大胆にいじりたい場合には、エキスパート・セッティングでエンベローブやフィルターなどのパラメーターをエディットできるので、アナログ・シンセ感覚で音作りができます。とにかく音色のリアルさ、使い勝手とも大変出来の良いソフトで、ビンテージ楽器が好きな人にはたまらない製品ではないでしょうか。僕も早速購入いたしました。

▲フィルター、ディレイなどのエフェクト以外にレコードのノイズを加えるUVInylを搭載しているエフェクト・ラック

MARK OF THE UNICORN
Electric Keys
オープン・プライス(市場予想価格/39,800円前後)

REQUIREMENTS

▪Windows/Windows XP/Vista(32bit、64bit)、INTEL Pentium 4 1GHz以上、1GB以上のRAM、DVDドライブ
▪Mac//Vista(32bit、64bit)、INTEL Pentium 4 1GHz以上、1GB以上のRAM、DVDドライブ