迫力のある音でダイナミック・マイクとの相性も良い4chマイクプリ

JR SOUNDHA-404

最近は随分と宅録作業が増え、いろんなアーティストやスタッフに出会う機会も多いのですが、皆さんに一番質問されるのが“何か良いマイクプリはありませんか?”とか“何を買ったらいいですか?”ということです。確かに録音作業に慣れてくると、マイクプリの音質の違いというのはよく分かるようになり、いろいろ気になる最初のアイテムだと思います。音質というのは、良い悪いではなく、好きか嫌いかだということが選ぶポイントだとアドバイスしていますが、まず、自分がどんな音楽をやりたくて、どんな音が好きかということを自分自身で探すことが大切ではないでしょうか。また、多数のブランドから非常に多く発売されており激戦区状態のマイクプリですが、選ぶ側としては多ければ多いほど楽しいものです。例えば、2Uで1chしかない大型機や、1Uで8ch入っている小さくて機能的なモデル、またラック・モジュール・タイプで数を増やしていけるものなど、使い勝手に関してもいろいろ選べる状況になっております。今回レポートするのは、国内メーカーJR SOUND HA-404、1Uの4chタイプです。

高級感のある丈夫な作り
連続可変ローカット・フィルター付き


届いたダンボールを持ち上げると、1Uタイプの割には非常に重い感じがしました。ちなみにスペックを見たら、本体が5.2kgで付属電源ユニットが2.7kg、トータルで約8kgになり、このクラスの機器としては重い部類に入るでしょう。開けてみたところ、本体、電源とも淡いブルー色で、日本サッカー・チームのユニフォームと同じようにジャパン・ブルーといった感じです。本体の奥行きは330mmと大きめで高級感があり、丈夫そうな作りになっております。フロント・パネルは各チャンネルに1ブロックずつ、4ブロックで仕切られ、各ブロックは透明アクリルが張られている特徴のあるデザインとなっています。またこのデザインは、4chそれぞれを操作するのにも使いやすいでしょう。1ch分の操作パネルは、ロータリーつまみが3つあり、左から連続可変ローカット・フィルター(20〜200Hz)、ファンタム電源の電圧切り替え(12/24/48V)、ゲインとなっています。それらのつまみの上に3つのスイッチがあり、左からローカット・フィルターのON/OFF、位相切り替え、PAD(−20dB)となっています。表示は見やすく操作は簡単でしょう。その上にLEDメーターがあり、音を聴きながらのレベルの監視もしやすそうです。

実際の距離より近く感じる音質
中高域に張りがある音


ちょうど映画のサウンドトラック用のリズムとストリングスのレコーディングがあり、早速試してみました。まずキックにSENNHEISER MD421、スネアにSHURE SM57を立てて聴いてみたところ、ハイエンドが気持ちよく盛り上がって実際の距離より近く感じる音質で、EQをあまり必要としない音作りとなっています。距離感が近めに聴こえてしまうため、ほかの楽器の回り込み音が大きくなる傾向がありますが、マイクのセッティングで回避できるでしょう。また、この音質は最近のAPIに近い感じがします。次にアコースティック・ピアノにNEUMANN U87で聴いてみたところ、やはりハイエンドが少し上がっているようで、実際より派手で迫力のある音になります。一方では、ピアニッシモでプレイするにも音が大きめに表現されてしまうようです。さらに、エレキギターのアンプにAKG D112をマイキングして試してみたところ、中高域に張りがある非常に迫力のある音で、かなり良い感じになりました。やはり本機はダイナミック・マイクと相性が良いようです。最後にストリングスのオフマイクにU87で試してみたところ、実際の部屋の大きさより小さめに聴こえる傾向にありますが、ハイが伸びていて現代的な音色になりました。最近のボーカルもののポップスに向いている音色だと思います。本機が1Uサイズの4chというコンセプトであることを踏まえてみると、狭いスペースでたくさんのマイクを使ったレコーディング時に有効ではないでしょうか。ダイナミック・マイクを使用したレコーディングにおいては特に特徴的な音質なので、ドラムやパーカッションを多数のダイナミック・マイクでレコーディングするときや、ロック・バンドのライブ・レコーディングなどに適していそうです。なお、ローカット・フィルターの効きが少し甘い点と、付属電源ユニットと本体をつなぐケーブルが若干短い点が気になるので改善されることを望みます。20080501-07-002

▲リア・パネル。左からch4〜ch1の入力&出力(XLR)、専用電源ユニットとの接続用のケーブル・コネクター


20080501-07-003

▲専用電源ユニットのフロント・パネル。中央が電源スイッチ


20080501-07-004

▲専用電源ユニットのリア・パネル。左から本体との接続用のケーブル・コネクター、電源インレット

JR SOUND
HA-404
399,000円

SPECIFICATIONS

▪ゲイン/16〜70dB
▪周波数特性/20Hz〜20kHz
▪ローカット・フィルター/20〜200Hz(連続可変)
▪PAD/−20dB
▪ファンタム電源/12/24/48V
▪外形寸法/430(W)×43(H)×330(D)mm(本体)、160(W)×44(H)×151(D)mm(電源ユニット)
▪重量/5.2kg(本体)、2.7kg(電源ユニット)