裏と表で異なる音のキャラクターを持つ高SPL仕様のリボン・マイク

CROWLEY AND TRIPPNaked Eye Roswellite

最近リボン・マイクがお気に入りです。たまたまリボン・マイクのあるスタジオで仕事をする機会があり、いろいろ試していたのですが、そろそろ欲しいなあと思っていました。そのタイミングでこの製品のレビューのお話。旬ですねえ。しかし自身ではリボン・マイクを所有しておらず、またスタジオにも最近のリボン・マイクって無かったりするんです。RCA 77DXなどのビンテージのものはあるのですが、取り扱いも難しくなかなか使う機会も少なくなっています。ハードがどんどんデジタルになってきているのでやっぱりマイクやマイクプリで質感を狙って録りたいですね。プラグインなどを使うにしても、良い音で録られていることが前提ですから。

おしゃれな外観ながら使い勝手も考慮
表と裏で異なるサウンド・キャラクター


送られてきた本機を見た感想は、“おしゃれ”です。黒に赤、派手ですねえ。さらに付属のマウント用ホルダーのマイク・スタンドに止める部分が丸くなっていたりとまた独特。いちいち気になる感じです。しかし見た目は大事です。結構、機材は見た目で選びませんか? 音が良い機材って意外と見た目も良いですよね。ちなみにデザイン優先かと思いきや、意外とセッティングもやりやすく、使いやすさへの配慮もうかがえます。外観についてはこの辺にしておいて、音を聴いてみたいと思います。資料には“マイクの表と裏側で完全に異なる2つのサウンド・キャラクターを持っている”と書いてありますので、それらを踏まえてチェックしていきましょう。まず、本機に向かってしゃべってもらった声を録音してチェックです。表は本当に“リボン・マイク”という感じのファットなサウンドで、裏側はハイが上がってどちらかと言えばコンデンサー・マイクに近い印象。もちろんリボン特有の良さを残しつつですが、どちらもとてもハイファイなサウンドです。大きい声、小さい声から、オフマイクでの録音などいろいろ試してみたのですが、それほど印象は変わらず、“吹かれ”も気になりませんでした。声を聴く限りでは、表は若干ハイが落ち過ぎに感じ、裏の方が自然に聴こえます。それにしても表と裏では本当に別ものです。

S/Nが良くサウンドの作り込みにも最適
大音量の収音も可能な高SPL仕様


さらに楽器の収音でも試してみたいと思います。ピアノに立てて、SSLコンソールのヘッド・アンプに立ち上げて聴いてみました。最初は少し遠目にセッティングしたので、結構ゲインを上げていたのですが、本当にS/Nが良いです。ゲインを大幅に上げたにもかかわらず全くノイズが気にならないので、取り扱いが楽。コンデンサー・マイクと変わらない手軽さで使えます。少々録音レベルが足りなかったので、狙いをハンマーの近くにセッティングし直して再度聴いてみたところ、ナチュラルなリボン・マイクでしか出せない“エッジが抑えられた感じ”が出せました。S/Nが良いのでガッツリとコンプをかけたサウンドも作りやすいです。ヘッド・アンプやコンプの組み合わせによっては、いろいろなサウンドを狙えると思います。また、ぜいたくな意見かもしれませんが、逆にS/Nがもう少し悪くてもリボン・マイクっぽさということで、よかったのかもしれません。その一方で、若干ローの位相が悪く感じるのが少し気になりました。表裏が違うからでしょうか? 収音範囲も狭めなので、きちっと音源に狙いを定めてセッティングするのが良さそうです。またセッティング時のマイクの向きで、随分音が変わる印象を受けました。その後、アンプに立ててエレキギターの収音も試してみたのですが、個人的にはピアノで試したときよりも、よりもこちらの方が好印象です。アンプに近づけてセッティングしても大丈夫。声で試したときと印象は変わらないのですが、ギターの方が音量があるからなのか、ローにも余分な音域がなく、ハイもスムーズに落ちている印象です。本機は表と裏で音のキャラクターが違うので、収音する対象に合わせて、回転させるだけで違うマイク立てるのと同じ効果を得ることができます。EQによって音を作りこむよりも、そちらの方が断然自然なサウンドを得られます。さらに、高SPLタイプということもあり、音量がある程度大きいレベルの音源のレコーディングに向いているのではないかと思いました。そういう意味で、今回試せなかったのですが、個人的にリボン・マイクで録ったドラムのシンバルの感じがとても好きなので、ぜひドラムで試してみたいと思いました。また、今までは“壊れるんじゃないか”と怖くてさすがにキックのオンマイクとしてリボン・マイクを立てたことはなかったのですが、本機を使用すればその心配も無さそうです。リボン・マイクもどんどん進化しています。冒頭でも述べましたが、最近本気でリボン・マイクの購入を考えているので、本機も候補の一つに入れつつ、同社からはほかにもさまざまな種類が出ているようなので、もう少しいろいろと試してみたいと思いました。
CROWLEY AND TRIPP
Naked Eye Roswellite
オープン・プライス(市場予想価格/193,000円前後)

SPECIFICATIONS

▪指向性/双指向
▪推奨ロード・インピーダンス/200Ω
▪SN比/−53dB@1kHz
▪最大SPL/146dB(40Hz〜40kHz)
▪付属品/専用木製ケース、ロータリー・マウント
▪外形寸法/38(φ)×135(H)mm
▪重量/432g