
"Live Control Console"と銘打たれたKORG Zero 8。近年増えているオーディオ・インターフェース+デジタル・ミキサーというコンセプトとは一線を画すモノです。8ch仕様のデジタル・ミキサーに次世代Kaossエフェクトを装備したFireWire接続のオーディオ/MIDIインターフェース&コントローラー(4ch仕様のZero 4/147,000円もあり)。もう全部乗っています! DJはもちろん、特にライブ・ミキシングによるパフォーマンスを展開しているアーティストにばっちりハマりそう。コツコツそろえたライブ・セットが一変するかもしれません!
8ch仕様のミキサー部は
柔軟なルーティングが可能
まずはミキサー部から見ていきましょう。本機にはチャンネル・フェーダーを8ch分装備。各チャンネルにはA/Bのクロス・フェーダー・アサイン用ボタンがあり、DJミキサーとしても機能します。また、チャンネル上部のインプット・セレクターで入力の切り替えが可能(写真①)。インプットはラインがTRSフォーン、RCAピンそれぞれ8系統、フォノ×3系統、マイク×2系統、ギター入力×1。センド&リターンも2系統用意され、外部エフェクターも接続できます。アウトプットはマスター・アウト(XLR、TRSフォーン)、ブース・アウト(TRSフォーン)、S/P DIFアウト(コアキシャル)を用意。モニターは各チャンネルにある点灯式のCUEボタンで選択するので、同時入力数が多い場合も混乱しないでしょう。▲写真① 上がインプット・セレクターで下がゲインとEQ セレクター。オーディオを扱う際は赤、MIDIのみを扱う際は青のLEDがチャンネルごとに点灯するので、暗いDJブース内でも視認性が良い。ちなみにAUDIO+MIDIを選択した場合、Zero 8は基本的にオーディオI/Oとして振る舞うが、SEND/PANノブはMIDIコントローラーとして機能する。EQセレクターでは、"BOOST""ROUND-Q"などEQを5種類(A-E)、"ZERO ISOLATOR LOW"などアイソレーターを3種類(F-H)、"ZERO FILTER DENSE"などフィルター(I-K)を3種類のタイプから選択可能だ 続いて4バンドのEQ部。Zero 8にはジャンルに応じたEQが5種類、アイソレーター3種類、フィルター3種類が用意され、チャンネルごとに選択可能。チャンネル上部のEQセレクターで特性を選択します。EQは人によって好みがありますから、これだけ選択肢が豊富なのはうれしいところ。アイソレーターやフィルターはDJプレイ時の飛び道具として活躍しそうです。つまみは柔らかめな作りで、ハードな操作にも対応します。
定評あるKaossエフェクトを
さらに使いやすくリファイン
そして気になるエフェクト部が、トップ・パネル右下にあるZero FX(写真②)。ここにはLCDディスプレイを指先で触れて使用するという直感的な操作感で、DJエフェクターとして現場で人気があるKaossエフェクトが搭載されています。Zero 8ではそのKaossエフェクトを各チャンネルにインサートするチャンネル・エフェクト、センド・レベルを調整しながら使用するセンド・エフェクト、マスター・フェーダーにかけるマスター・エフェクトの3系統を同時に使用可能。Zero FXセクションにあるCHANNEL/SEND/MASTERの各ボタンを押すことでページを切り替えられます。

オーディオ・インターフェースとしても
24ビット/192kHz対応の高音質
Zero 8はミキサーとしてだけでなく、DAWやシンセなど外部機器の制御にも使えます。MIDIコントローラーやオーディオ・インターフェースとしてコンピューターと接続する場合は、同梱のKORG FireWire Audio MIDIドライバーをインストールして使用します(Windowsのみ。MacはCore Audio/Core MIDIに対応)。MIDIを扱う場合は各ミキサー・チャンネルにあるインプット・セレクターを回し、"MIDI"に設定。選択したミキサー・チャンネルのノブ/スイッチを操作すると割り当てられたMIDIコントロール・メッセージを送信し、対応ソフトを自在に操れます。ユーザー・インターフェースはシンプルで分かりやすく使いやすいもの。特にLCDディスプレイのX/Y軸を駆使したエフェクト・コントロールは魅力的で、付属の専用エディター・ソフト"Zero Edit"を使用すれば、各ノブ/スイッチのMIDIメッセージを自由にカスタマイズできます。それでは、実際に使用してみます。僕がConflictのライブで使用しているセットはAPPLE PowerBook G4にABLETON Live 6を立ち上げてオーディオ・インターフェースからKaoss Pad KP3に送り、DJミキサーへという流れなのですが、今回はZero 8をオーディオ・インターフェースとして使用してみようと思います。現在使用しているI/Oは8アウトなのですが、Zero 8を使用すれば最大16イン/16アウト(192kHz使用時は8イン/8アウト)にできますし、24ビット対応のフル・デジタル・システムということで、音質的にも期待できるからです。Zero 8のインプット・セレクターを"AUDIO"にし、Live 6上でオーディオ・インターフェースと各チャンネルのアウトプットを設定すれば、すぐにZero 8のチャンネル上にソフトの音を立ち上げることができます。まず驚いたのが、その太い出音。まるでアナログ・ミキサーを通したかような、角の取れた太さがありました。過大入力してしまった場合はゲインつまみが赤く光るのできっちり確認できますし、トップ・パネル右上には針式のVUメーター(写真③)が装備されており、トータル・レベルをピークではなく音量感で見られます。

打ち込みの楽曲をパラアウトし
リアルタイム・プロセッシング!
打ち込みの楽曲をパートごとに抜き出してライブ・ミックスするという手法はさほど珍しくなくなってきました。しかし、Zero 8を使うことでさらに直感的なプレイが可能です。まずはビートにパートを重ねていく展開を作ってみようと思います。ch1にビート素材Aを、ch2にビート素材Bを立ち上げ、ch3にシンセ系のウワモノ、ch4に声ネタ......とアサインしてみました。単体で鳴らしたビート素材AにLOOPER系チャンネル・エフェクトをかければリアルタイムでビートをチョップできるので、ワン・ループのトラックでもバリエーションは無限です! LOOPERで変化を付けながらあらかじめDELAYに設定しておいたセンド・エフェクトつまみを開いてトバしたり、アイソレーターでいきなり低域をぶった切るのも面白いです。そんな感じで展開させながらウワモノ、声ネタなどを入れていけばリアルタイム・リミックスも簡単。DAWの場合パフォーマンスがCPUに依存してしまうので、同時に複数のエフェクトをかけると再生がもたついたりフリーズしてしまうこともしばしば。やはり外部エフェクトは思い切り感が違います。このアグレッシブさは、絶対にプレイで表れますね! ボリューム・フェーダー上部のA/B切り替えボタンを使って、クロス・フェーダーを活用したミックスができるのもうれしいところ。各チャンネルのSOLO/CUTスイッチも使い勝手よく、流れを一変させるときなどに便利でしょう。Zero 8は全く新しい感覚の"楽器"といってもいいのではないでしょうか。現在の多様な制作/ライブ・スタイルに対応するポテンシャルを秘めています。新しいスタイルを模索するDJ〜アーティストにはぜひ触れてみてほしい製品です。僕自身、"ハンドルが違うとこうも運転が変わるものか"と驚きました。機材の進化は音楽の進化に否応なく影響するものだと思っています。このZero 8によって、もっと面白いものができるのではないかとワクワクします。

▲リア・パネル。左よりマスター・アウト(XLR、TRSフォーン)、ブース・アウト(TRSフォーン)、その下がMIDI OUT/IN、S/P DIFアウト(コアキシャル)、FireWire端子×2、右上にはライン入力L/R(TRSフォーン、RCAピン)が8ch分並んでいる。その下段は左よりステレオ仕様のセンド&リターン(TRSフォーン)×2系統、ギター入力(フォーン)、マイク入力(XLR、TRSフォーン)×2系統、フォノ入力(RCAピン)×3系統
SPECIFICATIONS
■周波数特性/
10Hz〜20kHz+1dB、−2dB@44.1kHz
10Hz〜21kHz±1dB@48kHz
10Hz〜40kHz±1dB@96kHz
10Hz〜40kHz±1dB@192kHz
■SN比/93dB(標準)@IHF-A
■全高調波歪率/0.02%(標準)INPUT