高域の明るさと中低域の存在感が魅力の真空管コンデンサー・マイク

M-AUDIOSputnik

今回チェックするSputnikは、実売7万円程度の真空管コンデンサー・マイク。発売元がリーズナブルでツボを押さえた製品を出しているM-AUDIOだけに期待が高まります。

ミリタリー・グレードの真空管を搭載
価格以上に高級感あふれるボディ


実際に触ってみると、サイズの割には重量感があります。カプセル部の大きいロリポップ・デザインと呼ばれるルックスは好みが分かれるところでしょう。真ちゅうのボディにつやのあるニッケル・メッキが施されており、派手さはありませんが、価格以上の落ち着いた高級感があります。今風に言うと“渋カワイイ”という感じなのでしょうか?フロントには−10dBのPADと80Hz以下を12dBロール・オフしてくれるローカット・スイッチ、リアには無/単一/双指向の切り替えスイッチを装備。厚さ3μのダイアフラム、ミリタリー・グレードの6205M真空管の搭載に加え、真空管保護機能の付いた電源ユニットなど、各所に高級製品と同等の仕様を備えています。本体と電源ユニットをつなぐケーブルの端子は一般的な7ピンですし、電源コネクターもインレット式なので、好みのケーブルなどを使ったプチ・アップグレードなんてこともできそうです。

適度なコンプ感と高域の伸びは
ワン・ランク上のクオリティ


まずはボーカルでチェックしてみましょう。マイクプリにはSSL XLogic 4-Channel Mic Ampを使い、録音はDIGIDESIGN Pro ToolsへDIGIDESIGN 192 I/Oから24ビット/96kHzで行います。30分ほどのウォーム・アップ後に録ったサウンド・チェックの第一印象はまさにビンテージ真空管マイクっぽい、良い雰囲気の音というものです。資料によるとNEUMANN U47 TubeやAKG C12をシミュレートしてチューニングされているそう。中低域に独特の膨らみがあり、高域も自然に伸びた感じで、ピークのきつい音には適度なコンプ感があります。サ行での歯擦音も耳に痛い感じはなく、一般的にコンデンサー・マイクによくあると言われる中高域のピーク感はありません。録音した音だけを聴くと少しフォーカスが甘くも感じますが、オケ中で聴くとレベル以上の存在感があります。多少低域の重量感が物足りない感じですが、価格を考えれば十分なクオリティでしょう。子音のはっきりした英語の歌や女性ボーカルに良い結果が期待できそうです。続いて、アコギでチェックしてみましょう。サウンド・ホールとネックの間辺りから20cmほど離してセットし、ストロークを録音。聴いてみると中低域が少し出過ぎなのでローカットを入れてみましたが、印象はあまり変わりません。それではとPro Tools内のEQで300〜400Hzを3dBほどカットすると良い感じに。周波数特性を見ると、この辺りが膨らんでいる模様。アルペジオや単音のメロディなどはそのままでも十分良い感じです。ホーンの録音もあったので、3mほど離して立てたオフのNEUMANN U87AIと並べ、単一指向でセッティングしてチェック。U87AIと聴き比べると高域が明るめでルーム感がありますが、音像は多少遠い感じ。無指向にしてみると高域の明るさがさらに増すように聴こえます。さらに、チェロの録音で1.5m前方にセッティングしたAKG C414と聴き比べてみましょう。輪郭はC414の方がクリアですが、Sputnikのマイルドな質感も捨て難いものがあります。EQでの調整が少々必要ですが、十分使える音質です。最後にハーフラック・サイズのオーディオ・インターフェース、M-AUDIO FireWire 1814に直接接続して私の声でチェックしてみると、このマイクの魅力を十分に感じることができます。同メーカーでもあるので、マッチングも考えてチューニングされているのでしょう。今回試してみて、特にマイルドで明るい高音にワン・ランク上のクオリティを感じました。高水準の品質管理により、各個体の誤差も抑えられているそうなので、2本そろえればピアノやドラムのトップなどのステレオ録音にも使用できるでしょう。録音環境のグレード・アップを考えている人や、ビンテージ・マイクは欲しいけど……という人、楽器店で一度チェックしてみてください。このルックスが好きだったらお薦めの一本です。
M-AUDIO
Sputnik
オープン・プライス(市場予想価格/73,290円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■感度/30mV/Pa(−30.5dBV)
■出力インピーダンス/200Ω
■推奨ロード・インピーダンス/>1kΩ
■最大SPL/142dB(PADオン時)
■外形寸法/76(φ)×210(H)mm
■重量/726g