数多くのDJソフトやデジタルDJミキサーなどが発売されている中、CDターンテーブルもデジタル製品に対応したモデルが続々と発売されている。今やCDターンテーブルは、僕のDJプレイにとって無くてはならない必需品。今回紹介するICDXはCD、DVD、MP3の再生はもちろん、APPLE iPodやUSBメモリーなどUSB接続した外部ストレージ・デバイスの音を再生できる。また、SERATO Scratch LiveといったDJソフトのフィジカル・コントローラーとして使うことも可能だ。常にCDターンテーブルを使用しているイチDJとして、現場の目線でICDXを紹介していきたいと思う。
レコードを扱うような感覚で
安心して操作できるジョグ
では、順を追って各種機能を紹介。CDターンテーブルの核となるジョグは、全く癖の無い触り心地で安心感を覚える。ジョグは、SEARCHモードとSCRATCHモードが左右に配置されたボタンで選択可能。SEARCHモードは通常の早送り／巻き戻し機能としてジョグが作動し、一方SCRATCHモードは、ターンテーブルを使ってスクラッチするのと同じように操作できる。面白いと思ったのは、SCRATCHモードにしたときにジョグの上部を軽く押すと、再生が一時停止する機能。まるで回っているレコードを軽く押さえて止めるような感覚で、トリッキーなプレイに役立ちそうだ。この上部を押さえながらジョグを操作する感覚さえつかんでしまえば、レコードを扱うのとかなり近いニュアンスで本機を扱えると思う。
トリック的に使えるエフェクトなど
多くの機能をコンパクトに凝縮
エフェクターなどのスイッチ類に関しては、用途別に大きく４カ所に分けて配置されている。まず、左上部に配置されたF/X SELECTでは、フェイザー、フランジャー、フィルター、エコー、チョップ、パンの6種類のエフェクトが選択できる。種類を選択したらF/Xボタンをオンにして、原音とエフェクト音のバランスをWET/DRYフェーダーで調整。さらにPARAMETERSノブでかかり方の深さを調整といった手順で、気軽にエフェクトをかけて遊ぶことが可能だ。左中央のREV/BLEEPは、逆回転機能。REVは、その名の通り再生音をリバースさせる。もう１つのBLEEPは同じ逆回転なのだが、逆回転しながらも曲自体は後ろに戻らず通常通りに進んでいくという機能。つまりビートの進行を感じさせながら、逆回転のエフェクト音を効果音としてかぶせられるのだ。そして個人的に一番好きだったのが、左下にあるBREAK TIME/START TIMEという２種類のつまみ。とにかく分かりやすく使い勝手がいいのだ。BREAK TIMEつまみは、再生中に一時停止ボタンを押したときに音が止まるまでの時間を調整。START TIMEつまみは、再度一時停止ボタンを押して再生させるときの立ち上がり時間を調整する。ストップするまで、そして立ち上がりの音の感じは実に自然でスムーズだ。さらに、右上部に配置されているループ／サンプリング／ホット・キュー機能。これらはMODEボタンで切り替えて使用する。ループは2種類、サンプリング／キュー・ポイントは各3種類ずつ記憶させられるので、一曲の間で遊ぶには十分。また、ボタンを押したときのレスポンスも素晴らしく、自然なループ組みやサンプリング音の再生が可能だ。最後にiPodをつなげて試してみたところ、プレイリスト内の楽曲がICDX本体のディスプレイに表示され、TRACKノブを使用して選んでいくだけと操作方法は至って簡単だった。なお、今回チェックしたICDXは発売前のモデルであったため、iPod使用時の仕様がまだ決定していない状態であった。詳細に関しては、メーカーのWebサイトなどで確認していただきたい。総合的な感想としては“このコンパクトなボディの中に、よくぞここまで機能を入れたっ！”という感じ。基本的な性能に加え、数多くのエフェクト／トリック機能、そしてUSB接続による外部デバイスとの同期など多機能でいてシンプル。“さすがDJ機材専門ブランドならでは”という感じで使い勝手よくまとめられている。DJを始めたばかりの人から、CDターンテーブルにもっともっと可能性を見出している熟練DJまで、幅広い層が興味を持てる製品ではなかろうか。
▲リア・パネル。左からマスター用USB端子、スレーブ用USB端子、アナログ・ステレオ出力（RCAピン）、S/P DIF出力（コアキシャル）、フェーダー同期用接続端子、リレー接続用端子、電源コネクター
SPECIFICATIONS
■周波数特性／20Hz〜20kHz
■サンプリング周波数／44.1kHz
■全高調波歪率／0.03％以下
■外形寸法／241.5（W）×90（H）×290（D）mm
■重量／3.15kg
