全帯域がフラットに再生され遮音性にも優れている密閉型ヘッドフォン

KOSSMV1

1953年創業の老舗ヘッドフォン&イヤホン・メーカーKOSSからフラッグシップ・モデルMV1が発売されました。資料によるとプロDJや本格的なレコーディング向けの製品とのこと。そこで、今回はDJ的視点とスタジオ的視点の双方からチェックしていきたいと思います。

耳の形を考慮したイア・パッドで
抜群の遮音性を実現


MV1は密閉型で、スピーカー・ユニットにはチタン・コートのハイポリマー・ダイアフラムと1インチの無酸素胴ボイス・コイルを採用しています。箱を開けてみると、まず目に入るのは付属ケースで、よくある布製や皮製の袋ではなく、硬めのケース仕様。両脇にフックを掛けられる金具があり、ストラップなども付けることが可能なので、携帯や保管に重宝しそうです(できればストラップも付けてほしかった!)。続いてヘッドフォンはルックス重視という人も多いと思うので、ケースを開けて本体を見てみましょう。形は最近のDJユース・ヘッドフォンに近く、カラーリングには黒とゴールドが採用されており、なかなかの高級感が漂っています。装着するとイア・パッドの作りが特徴的。通常の密閉型ヘッドフォンのイア・パッドは内側から見ると円形や卵形にくりぬかれたようになっています。しかし、MV1ではその部分が耳の形を考慮してデザインされており、なんと耳の穴の付け根にある軟骨の形も反映されているのです。それに加えて独特の柔らかい材質を使用しているので、誰の耳にもしっかりとフィットして優れた遮音性を実現するでしょう。また、後ろ側が薄く、前側は厚くなっており、ユニット部までの深さが斜めになっているので、耳を押しつぶしたりすることなくちょうど良い角度で音が入ってきます。このため優れた遮音性と相まって小さい音量でも正確なモニタリングができ、耳への負担も少なく、長時間の使用でも疲れないでしょう。ヘッド・バンドもクッションの形状でずり落ちない工夫がされており、締め付けも程よい感じです。また、女性にも装着感をチェックしてもらったところ、若干重さを感じるそうでしたが、実際の重量は470g。構造やフィット感、締め付け感などから考えると特に問題は無さそうです。

特定の周波数帯域でのピークが無く
左右の定位も分かりやすいのが特徴


では、DJ的視点でユニット・ハウジングの駆動系をチェック。ヘッド・バンド部分からの長さが8段階に調節できたり、横方向に90度の回転する点など、フレキシブルに動くので片耳モニターをするときなどに重宝しそうです。ケーブルはカール・コードになっていて通常の長さは240cm。私は身長178cmなのですが、DJ台に立った状態ではちょうど良いくらいです。長過ぎて邪魔になることもなく、程よく伸びるので後ろのレコードを探すときにも問題ありません。次はスタジオ的視点から音質をチェックしていきましょう。私がよくスタジオで使用しているヘッドフォンと聴き比べてみます。MV1の周波数特性の数値は10〜25kHz。同じソースを聴き比べみるとMV1では高域の伸びがよく、ハイハットやとがった音のシンセも刺さってくる感じはありません。低域もブーストされている感じは無く、例えばキックのモニタリングでも、アタックから膨らみまでがしっかり聴こえます。また、リバーブ音では広がり感や伸び、減衰までをしっかりカバー。ボーカルの息遣い、ベースの膨らみやダイナミクスもしっかり分かりますし、位相や左右の定位感もはっきりしています。特定の帯域でのピークも無く、大音量にもひずみにくく、どれをとっても申し分ない印象です。ただ、インピーダンスが250Ωと高めなので比較するヘッドフォンによっては同じモニター送りの音量でもボリュームが若干小さくなる場合があるでしょう。DJプレイやスタジオでの使用時には問題無いのですが、APPLE iPodを大音量で聴きたいというような人は多少物足りなく感じるかもしれません。しかし、大音量で聴くのは耳に悪いですし、遮音性も優れているので、これで十分ではないかと私は思います。全体的にはスタジオのモニター・スピーカーで聴いているのに近い印象。ヘッドフォンとモニター・スピーカーのバランスや定位の違いからくる違和感があまり無く、とても実用性があり好印象でした。高音質、高性能。間違いなく価格分の価値がある製品だと思います。
KOSS
MV1
31,500円

SPECIFICATIONS

■形式/密閉型
■周波数特性/10Hz〜25kHz
■インピーダンス/250Ω
■感度/98dB SPL/1mW
■重量/470g