スタジオから宅録まで対応可能なコンパクトなダイナミック・マイク

AKGD11/XLR D22/XLR

AKGは1947年に音楽の都オーストリアのウィーンで創立された老舗メーカー。特にマイクとヘッドフォンに定評があり、日本はもちろん世界中のスタジオで使用されている。今回試すのは同社の単一指向性ダイナミック・マイクD11/XLRとD22/XLRの2本。D11/XLRはバス・ドラム、ベース・アンプのマイキングなどの低音楽器用、D22/XLRはパーカッション、管楽器、ギター・アンプ用に設計されているという。同社のマイクならではのハイクオリティなサウンドが期待できそうだ。早速チェックしていこう。

バスドラのアタック感を演出可能な
低音楽器用マイクD11/XLR


D11/XLRとD22/XLRのボディは亜鉛ダイキャスト製でなかなか丈夫そうな作りになっている。D11/XLRは470gとずっしりしており、D22/XLRは少し小ぶりで280g。両モデル共にほどよく重量感があり、かなりタフな印象だ。ホルダーから外れやすいマイクはミュージシャンの大切な楽器を傷つけてしまうことがあるのだが、両モデル共にAKGのマイクとしては珍しくアングル調整付きビルトイン・スタンド・アダプター仕様になっており、マイク・ホルダーから外れる危険性が無いのもうれしいところ。個人的に好みのタイプのマイクである。さらに、D22/XLRにはドラム・マウント用のアタッチメントが付属しているので、ライブ・ハウスなどでドラム・スタンドでのマイキングが難しいときに持ってこいだ。周波数特性グラフを見てみると、D11/XLRのカーブは低域の盛り上がりがほとんどなく、高域に近付くにつれ伸びている。同社のD112も同じ低音楽器用マイクだが、それとは異なるカーブを描いていることに気が付く。一方、D22/XLRは5kHz辺りをピークに高域が盛り上がっているのが特徴だ。早速、この2本のマイクをレコーディングに投入してみよう。打ち込みがほとんど無いバンド編成で、楽曲はスロー・テンポのバラード。タイトなサウンドを構築する予定だ。まずはD11/XLRでバス・ドラムを録ってみる。バス・ドラムの外側のヘッドから近い位置にセット。音を確認してみると、リリースは比較的長めでバス・ドラムのヘッドの鳴りがそのまま伝わってくるような印象だ。リリースが若干長いので、スピード感のある楽曲ではマッチしないことがあるかもしれないが、スローなジャズなどで威力を発揮するだろう。高域が伸びていくような印象が強いので、高いフレットでベースを弾いた際の“ここぞ!”というオブリ的なフレーズやスラップのバキバキしたフレーズを目立たせたいときにも重宝しそうだ。また、このマイクならではの小ささを生かして、バス・ドラムの中にセットすればアタック感を強調させることもできるだろう。欲を言えば、もう少し低域の存在感が欲しいところ。D11/XLRは低音楽器用ということだがエレキギターなどにも合いそうだ。

D22/XLRは中低域に張りがあり
エッジのあるサウンドが魅力


続いてはD22/XLRをチェックしてみよう。SHURE Beta57Aを用意し、2本のマイクをスネアの近くにセット。少し打点を外した辺りを狙って、比較してみる。D22/XLRとBeta57Aの周波数特性グラフは高域のカーブの辺りが似ているのだが、サウンド的には中高域の印象が近い。しかし、D22/XLRは中域から中低域が特徴的で、音がとても太い印象だ。今回レコーディングした楽曲は太いスネアを求めていたので、非常にマッチする。今度はD22/XLRをギター・アンプの前に立ててみる。周波数特性グラフを見たときから“マッチするのではないか?”と思っていたシチュエーションの1つだ。ギター・アンプにベタ付けしてみたところ、やはりスネアを録ったときの印象と似ている。中高域に存在感があり、エッジのあるサウンドなのだが、今回のレコーディングはクリーン系のカッティング・ギターだったので、若干うるさくなる。ただ、エレキギターでもひずみ系のサウンドが欲しい場合、マイキングによっては“ジャリ”っとした部分を演出できるため、中高域に張りのある音が得られそうだ。また、このマイクの使用用途に書かれているようにアタック感のあるパーカッションにも合い、はっきりとアタックを出しつつ曲中で邪魔にならないようなパーカッション・サウンドを演出できる。D11/XLRとD22/XLRは小型なのでマイキングが容易なだけでなく、アングルの調整が簡単にできるため、レコーディング・スタジオやライブ・ハウスなどさまざまな場面で活躍しそうだ。また、価格が手ごろなのもうれしいところ。スタジオでの使用はもちろん、宅録をこれから始める人にもぴったりなマイクだと感じた。
AKG
D11/XLR D22/XLR
16,800円(D11/XLR)
13,650円(D22/XLR)

SPECIFICATIONS

D11/XLR
■指向性/単一
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■入力感度/2.5mV/Pa
■インピーダンス/600Ω
■外形寸法/60(φ)×130(W)×133(H)mm
■重量/470g
D22/XLR
■指向性/単一
■周波数特性/60Hz〜18kHz
■入力感度/2.5mV/Pa
■インピーダンス/200Ω
■外形寸法/45(φ)×113(W)×77(H)mm
■重量/280g