用途に合わせて選べるハイパワーなヘッドフォン・アンプ2機種が登場

MACKIE.HM-54 HMX-56

自宅スタジオで録音やリハーサルを行うミュージシャンの悩みと言えば、やはりモニター環境だ。特に複数の人が一緒に作業をする際には、各自ヘッドフォンでモニタリングすることが多いはず。このような場合、自分が聴いているサウンドのソースを自由にコントロールできないといったことが一番のストレスになるのではないだろうか? 今回紹介するMACKIE.のヘッドフォン・アンプHM-54とHMX-56は、そんなストレスを解消するアイテムと言っていいだろう。

重量感のある低音もクリアに聴ける
シンプルで高出力の4chモデル


今回、MACKIE.からは2機種の異なったモデルが発表されているが、最初に4ch仕様のHM-54から紹介しよう。本機のヘッドフォン端子は、チャンネルごとにフロントに1つとリアにも1つずつ用意されている。またメイン入力として1系統のステレオ入力を装備し、リアにはメイン入力用のヘッドフォン端子も装備。メイン入力はもちろん各チャンネルへパラレル接続されているわけだが、そのほかに各チャンネルにはステレオ・ダイレクト入力端子も1系統ずつ備えられ、個別のソースを入力することも可能となっている。このステレオ・ダイレクト入力は、複数人数でのレコーディング時に、ほかのメンバーとは違ったバランスでモニタリングしたいときに便利。本機につないだミキサーのAUX出力で好みのバランスを作ってから、各ダイレクト入力に接続すればいいのだ。残念ながら本機では、メイン入力とダイレクト入力のソースをミックスすることはできないので、フロントの各チャンネルに装備されているスイッチで切り替えてモニタリングすることとなる。ダイレクト入力ソースでモニタリングしながら録音した後、プレイバック時にはメイン入力に戻し、全体のバランスを確認するといった活用法が考えられるだろう。音質はヘッドフォンによって変わってくるが、私の所有するSONY MDR-CD900STで確認したところ、非常にクリアで低音にも重量感があった。特筆すべきは音を非常に大きくできること。バンドの一発録りなど、興奮状態での複数メンバーとのセッションになると、それぞれのモニターの音量はどんどん上がってしまう傾向にある。これまでの市販のヘッドフォン・ディストリビューターでは音量がもの足りないことがしばしばあったが、本機の最大ゲインはとても余裕がある。

エフェクト用チャンネルも装備された
キュー・ボックス感覚の6chモデル


次に紹介するHMX-56は非常に気の利いた6chのマトリックス・ミキサー仕様で、メイン入力をパラレルにするだけではなく、各チャンネルへ任意のモノラル音声を4系統入力できるソース入力端子も装備。もちろん各ソースのレベル調整も個別にできる。プロ用のスタジオで使用するキュー・ボックスに近い製品だ。また、エフェクトのセンド/リターンが1系統装備されているのもポイント。各チャンネルの構成は、ソース入力4系統分のレベル調整つまみとエフェクト・リターン、ヘッドフォンのマスター・レベルとなっている。メイン入力のレベル調整はできないので、HMX-56に入力する前にミキサー側でレベルを調整しなければならない。そのほかパネル右には、各ソースからのエフェクト・センド・レベル調整つまみが4つ並んでいる。例えばボーカルにはリバーブを深く、ギターとパーカッションには軽くかけるといった好みのエフェクト調整が可能だ。また、その横にパート名を記したマグネット・シートを張れるのも便利。最後に、便利な使用例を紹介しておこう。
■例① エンジニアがいる場合は、メイン入力にミキサーからのトータル・ミックス(L/R)を接続。ソース入力にボーカル、ベース、ギター、ドラムなどをミキサーのAUX出力から個別に接続し、特に聴きたいパートを上げてもらいモニターする。
■例② エンジニアがいない場合は、ドラム・セットのL/Rをメイン入力へ接続し、ボーカル、ベース、ギターなどをソース入力へ接続して各楽器を好みのレベルに調整しよう。このようにHM-54/HMX-56は、スタジオにおけるバンドの一発録りや、自宅でのセッションが多いユーザー、特に大音量を好むミュージシャンには、お薦めできる製品だ。コストもリーズナブルなので持っていて損はないだろう。

▲HM-54のリア・パネル。左からステレオ・ダイレクト入力(TRSフォーン×2)とヘッドフォン端子(ステレオ・フォーン)が4ch分並ぶ。一番右がメイン入力(TRSフォーン×2)で、ヘッドフォン端子(ステレオ・フォーン)も装備



▲HMX-56のリア・パネル。上段に並ぶのがヘッドフォン端子(ステレオ・フォーン)×6。下段左からメイン入力(TRSフォーン×2)、エフェクト・センド(TRSフォーン)、エフェクト・リターン(TRSフォーン×2)、ソース入力×4

MACKIE.
HM-54 HMX-56
共にオープン・プライス(市場予想価格/HM-54:19,950円、HMX-56:33,600円)

SPECIFICATIONS

●HM-54/HMX-56共通
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■入力感度/0dBu=1.5mW/60Ω
■定格出力/100mW±0.5dB@1%THD(60Ω/全チャンネル使用時)
●HM-54
■外形寸法/483(W)×44(H)×135(D)mm
■重量/2.5kg
●HMX-56
■外形寸法/239(W)×51(H)×216(D)mm
■重量/2.0kg