操作感はそのままに、デジタルならではの切れ味を見せるDJミキサー

VESTAXPMC-08 Pro

初めてターンテーブルとDJミキサーを購入してからもう15年ぐらい経ちますが、ここ最近の進化にはただただ驚くばかりです。とはいえ使用感がアナログライクな製品はやはり魅力的だし好感が持てます。CDプレーヤーとコンピューターを使用したDJプレイも定着してきている最近ですが、"とうとうここまで来たか"という感じのDJミキサー、PMC-08 Pro。使い勝手は今までのアナログ・ミキサーと同じでも、中身は間違いなく進化しているのです。

DJプレイの幅を広げる
細やかな機能を持つ入出力


まずは、開封して取り上げたときのずっしりとくる重さに驚きました。"デジタル・ミキサー"というくらいですから、やはり中身は相当すごいことになっているのでしょう。入力された信号のミックスをはじめ、EQ、フィルタリングなどすべての処理がデジタルで行われているとのことで、クロストークは−90dB以下という、まずアナログ機器では実現不可能な性能を実現しているそうです。2系統のライン/フォノに加え、マイクといった端子を装備した入力部には、面白い機能があります。トップ・パネル上部中央にマトリックス・アサインというスイッチがあり、この切り替えで片側のインプットを両チャンネルに振り分けることができるのです。片チャンネルで外部エフェクトをかけ、2ch重ねて出力したりということも可能。ドライ/ウェットのバランスや各レベルの調整可能もなほか、マスターから出力する前にモニターでチェックできます。また出力系で面白いと思ったのが、マスターとブース・モニター用の出力にミュート・スイッチが付いている点。マスター・レベルを固定したままミュートしておいて、モニターの切り替えスイッチをマスターにしておけば、外に音を出さずにヘッドフォンのみで音の確認ができます。

フェーダーのカットラグを
自分好みに調整可能!


さて、DJミキサーと言えばやはりクロスフェーダー。まず、本体前面に配置されているツマミでカットラグが調整できるようになっています。チャンネルごとにフェーダーの"遊び"が調整できます。自分好みのカットイン/アウトのタイミングが作れるし、クロスフェーダーの操作がさらに容易になると思います。このニュアンスが自分で調整できるだけでもうれしいですし、それ故にオリジナルな技の可能性も広がるでしょう。肝心な音の感触を言わせてもらうと......好印象! もともとVESTAXのミキサーの音は好きな方で、従来通りの全体的にスッキリしたサウンドがさらにクリアになっている感じ。張りもあるし滑らかです。自分はいまだに、デジタルという冠が付いた時点で"音が細くなってしまうのではないか"とちょっぴりマイナスに思ってしまうぐらいの古い人間ですが、無理に処理している感じは受けないし、しっかりとした音が鳴っています。その上レイテンシーをまるで感じさせないのは、24ビット/96kHzのDSPの恩恵もあるのでしょう。EQも−24〜+12dBと幅広く、さらに切り替えでアイソレーターとしても兼用可能。低域のブーストやハイカットの切れ具合も抜群。持ち上げるにしても抑えるにしても、嫌みの無い感じです。さすがにプロ機だけあって、プレイする側のさまざまな要求に対しても、それ以上に応えた仕様になっています。なおかつ、デジタル処理をする場合でもアナログ感覚を忘れないというか、ある意味さらに楽器的なミキサーになったと言えるでしょう。操作性はこれまでのアナログDJミキサーと何ら変わっていないので、プロ以外の方も特に気負うこと無くガシガシ使って欲しいですね。

▲フロント・パネル。左上から入力フェーダー・リバース・スイッチ、入力フェーダー・カーブ切り替えツマミ(右枠の2chも同様)、中央の枠上からクロスフェーダー・リバース・スイッチ、クロスフェーダー・カーブ切り替えを挟んでクロスフェーダー・カット・コントロール・ツマミ×2、一番右がヘッドフォン端子



▲リア・パネル。左上からサブ・マスター出力(RCAピン)、マスター出力(XLR)、ライン入力(RCAピン)×2系統、フォノ入力(RCAピン)×2系統、モニター出力(RCAピン)の横がアース端子。その右上がマイク入力(TSフォーン)、セッション入力(RCAピン)。一番右の枠がAUX出力(TSフォーン)×2系統、AUXリターン(TSフォーン)×2系統

VESTAX
PMC-08 Pro
オープン・プライス(市場予想価格/ 80,000円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■SN比/102dB
■外形寸法/264(W)×80 (H)×393(D)mm
■重量/4.5kg