高品位なX-Y方式マイクを搭載したポータブル・メモリー・レコーダー

SONYPCM-D1

最近、さまざまなフィールド・レコーダーがリリースされていますが、時代のニーズなのでしょうか? その中でも小型の製品が多いのは、私たち"録音屋"にとってはうれしいことです。そんな中、ついにSONYからPCM-D1というステレオ・レコーダーが登場! 随分長い間待ちました!

X-Y方式のマイクを搭載した
軽量/コンパクトかつ頑丈なボディ


PCM-D1は24ビット/96kHz対応のメモリー・レコーダー。外観はまるで測定器のようです。気になる重量は、わずか525g! ボディはチタン製なので頑丈。しかも片手で持てるサイズです。さらに、X-Y方式のコンデンサー・マイクを内蔵。マイクは前後に角度を調整できるので、狙ったポイントに合わせることが可能です。パネルを見ると中央にはモノクロの液晶画面、上部にはVUメーターが2基並んでいます。ACアダプターおよび単三電池4本で駆動可能。ニッケル水素充電池と充電器が付属しているのもうれしいところです。記録メディアは4GBの内蔵フラッシュ・メモリーもしくは別売りのメモリー・スティックProを使用。内蔵フラッシュ・メモリーでは16ビット/44.1kHzで約6時間半、24ビット/96kHzで約2時間の録音ができます。スゴイですね! しかも、USB端子を介してコンピューター(Mac/Windows)とデータのやり取りもできてしまいます。

フィールド・レコーディングから
ライブ録音まで幅広く対応


PCM-D1は私が初台ICCで渋谷慶一郎さんのライブのPAをしているときに手元に届きました。そこで、渋谷さんの了解を得て、PCM-D1で録音させてもらうことに......。ライブはメイン・スピーカー×6+サブウーファー×6+モノラル・スピーカー×4というとてつもなく変則的なサラウンド環境で、音圧は大体120〜125dB出ています。内蔵マイクの最大SPLは130dB以上なので問題無さそうです。なお、マイクの入力感度は"0"と"−20"で切り替えられ、"−20"では−20dBのPADが入ります。大音量のライブでは"−20"にした方がいいかもしれません。液晶画面のインジケーターの精度はかなり高いようで、インジケーターの横には数値が1dB単位で表示されます。アナログ・メーターは12dBからがレッド・ゾーンになっており、一般的な0VUタイプのものとは違うので注意が必要。ピークが入力されると、−12dBの手前では緑色の光が点灯し、それを越えると赤く光ります。メーターはVUに比べて液晶画面の方が見やすい印象ですが、これは好みの問題だと思います。録音レベルを決めたところで、早速ライブを録音してみましょう! 24ビット/96kHzモードにしてリミッターはオフにします。渋谷さんがラップトップから出す音はとても音圧があり、なおかつピークもあるので録音が難しいのですが、PCM-D1は結構レベルが入るし、かなりの音圧まで耐えられるようです。内蔵マイクの印象は単一指向性のマイクを2本使ったXYステレオ録音とはかなり音が違う印象。付属のスタンドを使って、スピーカーのツィーター部の辺りを狙ってみると、シャープな定位感です。無指向性マイクでステレオ録音したような広がりがある感じで、全体の音を包むように録音できました。次は街に出て録音してみましょう。今度はPADを"0"します。場所は夕方の原宿近辺で、まずは右側に明治通りを見ながら右手でPCM-D1を持ち、竹下通りに向かいます。コートの胸ポケットに入れると内蔵マイクがうまく外に出るので、誰にも気付かれずに録音ができそうです。竹下通りは左右両側に店舗が並んでいるし、人も多いので街の音を録るには格好。通りを抜けて原宿駅まで歩き、改札を通ってホームまで出てみます。録音中に付属のウィンド・スクリーンが何度か風で飛ばされそうになり、あわててしまいました。早速、録音したものを聴いてみると、意外に人の声がよく聴こえます。まるで目の前で人が居るような感じで、話し声はシャープな印象です。総論として、内蔵マイクの特性は中高域寄りな気がしました。指向性も結構あるようで、後ろ側の音がオンに聴こえるところがあります。サラウンド用のステレオ素材を録音するのにも合っているかもしれません。少し高価ですが、ライブ、フィールドを問わず気軽に使えそうです。さあ皆さん、外に出ていろいろな音を録音しましょう!

▲サイド・パネル(右側)。メモリー・スティックPro用スロット、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、マイク入力(ステレオ・ミニ)



▲サイド・パネル(左側)にはライン入出力(ステレオ・ミニ)、USB端子、DC電源入力が並ぶ

SONY
PCM-D1
オープン・プライス(市場予想価格/200,000円前後)

SPECIFICATIONS

■記録メディア/内蔵フラッシュ・メモリー(4GB)、メモリー・スティックPro
■量子化ビット数/16、24ビット
■サンプリング周波数/22.05/44.1/48/96kHz
■最大入力音圧(内蔵マイク)/130dB以上
■固有雑音(内蔵マイク)/20dB以下
■外形寸法/72(W)×193(H)×32.7(D)mm
■重量/約525g