レスポンスが良く非常に素直な音質の低価格コンデンサー・マイク

MARSHALL ELECTRONICSMXL-2006

MARSHALL ELECTRONICS MXL-2006は、超低価格のコンデンサー式マイクロフォンです。ここまで低価格になってくると、はっきり言って誰もがその音質に疑いを持つと思いますが、しかし驚くことにその価格からは想像できない高い製品クオリティを持っていることが、試聴した結果から分かりました。

製造工程へのこだわりを感じさせる
パーツと構造、そしてシンプルな機能


最近のローコスト・マイクの部品の多くはロシアや中国で製造されています。各社製品の容姿に似通った物が多いのはこのためです。しかし不思議なことに、私も何本かローコスト製品をレビューしたり、実際に購入していますが、音は各メーカーごとに違いがはっきりと現れています。あるパーツへのこだわりや組み立て工程の違いで音色に差が出てくるのです。例えば、日本で組み立てれば、また異なった音質が期待できるでしょう。本機にも何やらそういったこだわりを音質からうかがうことができます。それでは製品概要と簡単なスペックを紹介しましょう。特徴はラージ・ダイアフラムを採用している点です。ダイアフラムの厚みは6μ。そして後述する音の印象からは、このマイクの命とも言えるパーツへのこだわりや、ハイクオリティな音を実現するための徹底した品質管理といったものが感じられました。この価格でこのダイアフラムを採用できることに驚きを隠せません。指向性は単一のみですが、これはボーカルやアコースティック・ギターなどのモノラル音源を録る際に最も利用する指向性です。またパッドやローカットなどはありませんが、ミキサーのゲインやEQなどでも対応可能なので不便はないでしょう。そういった部分を簡略化し、大事な部分に費用を投じることも良い音質に影響しています。さらに、製品がしっかりとしたプラスティック製ケースに収められているのもうれしいですね。ボディや付属の専用サスペンション・ホルダーの作りも丁寧で感心しました。例えば、XLR端子のジャック・ピンは金メッキ仕様になっています。ただ、サスペンション・ホルダーは大型クリップ構造で挟み込むタイプなので、セッティングにはちょっとした注意が必要です。具体的には、クリップの先端がマイクの正面に来ないようにホルダーをセットしましょう。マイクとウィンド・スクリーンの間にある程度の距離を取れば問題ありませんが、近接使用の際にはクリップの先端がウィンド・スクリーンに当たり邪魔になります。このような場合はホルダーを横向きに設置するなどの工夫が必要です。むしろ、このセッティングの方がマイク後方に障害物が無くなり、音場的にはとても良いのです(そこまでメーカーが計算しているとすれば頭が下がります)。

フラットに近い素直な出音
速い演奏へのレスポンスも良好


それでは試聴した結果を報告しましょう。まず無音時のノイズ・レベル・チェックを行いました。自己ノイズはごくわずかです。プロフェッショナルなモニター・システムでも全く気になりません。また、通常のボーカル録音では30dB前後のプリアンプ・ゲインで十分なレベルに達しました。出音は非常に素直です。ローエンド/ハイエンドは少し落ちているように感じますが、ソロ音源ではたとえ多かったとしても、むしろ必要のない帯域ですので、足りないというよりもプリアンプのEQで不要帯域をカットしなくても済むという方が分かりやすいかもしれません。特にどこかの周波数に特徴があるわけではなくフラットに近い状態です。近接効果を狙ったボーカルでも低音に嫌味はありませんでした。アコースティック・ギターの録音については、ギターそのままのナチュラルな音が再生されます。ギター録音で悩むことの多い低音もブーミーになりませんので、コンプレッサーをかけやすいというのも特徴的です。総じてボーカルにしてもアコースティック・ギターにしても、マイクのレスポンスが良いので、速いフレーズやダイナミクスのあるプレイにもきっちり反応してくれます。ミックス・ダウンのときもイコライジングしやすいでしょう。個人的には何も通さない状態でもマルチバンド・コンプレッサーがかかったような均一感を感じました。また、アナログ・アウトボードのコンプレッサーやEQ、その他のプロセッサーを接続している場合は、その機材の特徴がよく現れますので、とても面白いです。2本並べてアンビエンスなどのステレオ録音にも良い結果が出そうなマイクです。強いて、個人的に弱いと感じる部分を挙げるならば、トランスレス構造ですのでマイクとしてのキャラクターはあまり望めません。一言で言うと“さっぱり”とした出音です。ボーカル録音では粘りが足りないところが私にとって残念ですが、そもそもチューブ・マイクではありませんし、歌い手や音源によってほかのマイクと使い分ける判断も重要だと思います。しかしながら、恐るべしローコスト・ハイパフォーマンス・マイク!
MARSHALL ELECTRONICS
MXL-2006
オープン・プライス(市場予想価格12,600円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/30Hz〜20kHz
■指向性/単一
■入力感度/15mv/Pa
■出力インピーダンス/200Ω
■SN比/80dB以上
■最大入力許容音圧/130dB
■外形寸法/55(φ)×190(H)mm
■重量/470g