SFテイストあふれるルックスに高音質を備えた1ch真空管プリアンプ

Blue MicrophonesRobbie

シンプルかつこの華麗な姿を見よ!とばかりに、BLUEから魅力たっぷりの真空管プリアンプ、Robbieが発表された。既に多数がラインナップされている同社のマイクは個性的なデザインを持ちながら音質にも定評がある。このプリアンプもかなり期待できそうだ。

大ぶりのつまみでゲイン調整が容易
急激な入力でもクリップしにくい


まずは概要から確認してみよう。外見から一目瞭然ではあるが、本機は真空管搭載アンプである。内部回路はクラスAディスクリート構造。良質なパーツで構成しないと良い音は期待できないだけに、各パーツは厳選されているようだ。電源は付属のACアダプター(AC115V)を使用する。汎用ACアダプターのような小型末端プラグとは違いガッチリと本体に接続される仕組みなので、使用中の不注意で抜けることはまずないだろう。リア・パネルにはこの電源コネクターのほか、電源スイッチ、マイク入力端子とそれに付随した48Vファンタム電源、MIC/INST切り替え、−20dB PAD、位相反転の各スイッチ、ライン出力端子などがある。一方、フロント側で最も目立つゲイン・コントロールつまみは連続可変になっており、最大で68dBのゲインが得られる。さらにヘッド・ルームが+34dBもあるので、かなり急な過大入力でもクリップしないという特長を持っている。セッティング以外で通常の操作に用いるのはこのゲイン・ツマミだけという、何ともシンプルな操作性だ。大ぶりのつまみはオーディオ・アンプのボリュームのようでとても使いやすく、“手コンプ”として入力フェーダー代わりに十分に使えるだろう。ぜひ手元に置いて操作してみたい。

レンジが広く感じられるサウンド
重要な帯域が自然にまとまる


今回のテストにはプロ・スタジオで使用するような高価なものではなく、ごく一般的な価格帯(10万円以下)のコンデンサー・マイクを使用し、本機とDAWを直結して女性ボーカルを録ってみた。安価なマイクを使ったのは、マイクのグレードや特性に依存せずに、本機がどれだけの表現を引き出してくれるかを見ていくのが狙いだ。まず、30dB前後のゲインを得るために、ゲインつまみで3時ぐらいの位置まで上げる。一般的なコンデンサー・マイクならおおよそこの位置ぐらいで適正レベルとなるはずである。さらに40dBぐらいまではスムーズにレベルを操作できたが、それ以上は急激に変化するので気を付けたい。さて肝心の音質は、ズバリものすごくクリアでハイファイ! 驚くほど立ち上がりがスムーズで、レスポンスもとても良い。声のアタックやメリハリがはっきりと伝わってくる感じがして、レンジがとても広くなったように感じる。前述のように安価なマイクを使用しているのだが、周波数帯域がこんなに広かったとは……。しかも変な帯域に癖が出てこないので、目の前で歌っているかのように声が自然に聴こえる。まるでもっとグレードが上のマイクを使用しているかのようだ。簡単にこのようなハイクオリティの音を得られるのはうれしい。続けてフロント側のHi-Z入力端子にベースやギターを入れて、テストしてみた。本機のレンジの広さは楽器とも相性が良く、ベースはローもしっかり出ている。スラップしても本機ではクリップしない! 過大入力に対しての平均レベルを下げずに作業できるのがいい。不思議なのは、ボーカルもベースも100Hz前後がうまくまとまること。高域も重要な帯域がうまくチューニングされているように聴こえ、本機だけでも十分。EQが要らないくらいだ。ただし、ディストーション・ギターなどのエフェクトをかけたソースでは、音に粘りが出ず、もの足りなさを感じた。最近の真空管搭載マイクやプリアンプのほとんどがハイファイな傾向にあるのだが、本機も似た傾向で期待通りのサウンドが得られた。総じて、声やアコースティック・ギター、サックスなど生音源に適していると思う。録音後にもDAWでプラグインのコンプやEQをセットしてみたが、マッチングも良く、設定をあれこれ探らなくても抜ける音にまとめられる。最後にこのルックスだが、好みはあるとは言え、機材ラックやデスクの上に置いて眺めてみるとその存在感は華麗で頼もしくも感じる。そして実際に使用してみると、機能性も十分に兼ね備えていることが分かった。最大の効果は発熱対策においてであろう。アルミ・ボディ全体が放熱板となっているのだ。事実、6時間以上の使用後でも一部分も熱くなっていない。放熱孔や放熱ファンも不要なので、シャーシ内にはホコリが入りづらくなり、ガリの発生率も低くなる。真空管は外部から交換可能な構造で、各国の取扱元で対応できるように考えてあるのだろう。BLUEのデザイン哲学とは華麗なだけでなく機能的、合理的でもあることがよく分かった。この音質と機能と存在感を持って17万円程度と手ごろな価格! 社名にちなんだブルーの電飾も美しく、自宅スタジオにぜひお薦めしたい。

▲リア・パネル。4つのスイッチは左からファンタム電源、MIC/INST切り替え、PAD(−20dB)、位相反転。下段は左から電源スイッチ、電源コネクター(スピコン端子)、ライン・アウト(XLRオス)、マイク・イン(XLRメス)

Blue Microphones
Robbie
170,100円

SPECIFICATIONS

■ゲイン/8〜68dB
■周波数特性/10Hz〜100kHz(±2dB)
■ノイズ/−131dB EIN@60dBゲイン(10Hz〜30kHz、50Ωソース)
■全高調波歪率+ノイズ/0.006%未満@60dBゲイン(10Hz〜20kHz、22dBu出力)
■位相特性/5度未満@60dBゲイン(50Hz〜20kHz、+22dBu出力)
■最大入力レベル/+22dBu(8dBゲイン、20Hz〜20kHz、PADオフ時)
■最大出力レベル/+34dBu(20Hz〜40kHz@10kΩ)
■入力インピーダンス/MIC:5kΩ(2.5Ω×2、20Hz〜20kHz)、INST:1MΩ
■出力インピーダンス/50Ω(25Ω×2)
■外形寸法/202(W)×133(H)×216(D)mm
■重量/3.2kg