コンパクト/軽量ながら驚くべき低域再生を実現したパワード・スピーカー

KRKV4 Series 2

今回紹介するKRK V4 Series 2は、2002年に発表された同社の小型パワード・モニターV4の後継機種となります。KRKはもともと、映画『ブレインストーム』や『ドアーズ』などを手掛けたエンジニアの、クリアで正確なモニタリングを目指し自分用に制作したモニターが、プロデューサーやエンジニアの間で評判になったことをきっかけに誕生したメーカーとのこと。KRKのWebサイトには“あなたの耳で判断してください”“徹底的なリスニング・テストをしております”とあります。ではこの V4 Series 2の実力はいかほどなのか。早速チェックしていきましょう。

過度の入力を防止できる
クリッピング/リミッター機能搭載


まずは、箱から取り出してそのコンパクトさ(高さ約23cm、重さ5kg)に驚きました。背面にヒートシンクが無いので場所もとりません。しかも、このサイズにして内蔵のアンプは、高域ユニットと中・低域ユニットを別々に駆動するバイアンプ仕様。その各ユニットは4インチ・ウーファー+1インチ・ソフト・ドーム・ツィーターという構成になっています。ウーファーにはKRKおなじみ黄色のケブラー・コーンが使用されており、デザイン的にもかわいくてとても好感が持てます。また、キャビネットには共振を抑えるための素材ラジアル・エッジが採用され、より正確なステレオ・イメージを再現することができます。入力端子は、XLRとTRSフォーンの両方が使用可能なコンボ・タイプなので、環境によって接続を変えることもできるのがうれしいところ。背面の入力感度調整は、−30dBから+6dBの範囲で調整できます。もちろん前モデル同様、スピーカーは防磁型なので、コンピューターのディスプレイの横に設置しても全く問題はありません。さて、前機種から追加された機能としては、まず電源のオート・オン機能が挙げられます。これはリア・パネルにあるスイッチをAUTOに設定することで、信号を検知すると自動的に電源がオンになり、20分以上使用しないと電源が切られるというものです。この機能は宅録作業をする際にも非常に使えるのではないでしょうか。また、V4 Series 2を使ったホーム・シアターなどでの使用にも便利ですね。ただし、本製品はパワード・モニター(アンプ内蔵)なので、AVアンプとの接続には、プリアンプ・アウトに接続する必要がある点に注意してください。また、クリップ・インジケーター/リミッター・スイッチ機能も追加されました。リア・パネルにON/OFF/LIMITの切り替えがあり、ONにした場合入力された信号がクリッピング・レベルに近づくと、フロント・パネルの赤いLEDが点灯します。LIMITに切り替えると、信号は一定のスレッショルドを超えるとリミッターがかかるようになります(このLIMITもフロント・パネルの緑のLEDの点灯で確認することができます)。これで不意の大入力によるスピーカーの破損を防ぐことができるわけですね。

幅広い音楽ジャンルに対応し
正確なモニタリングを実現


さて、実際の試聴ですが、今回は一口坂スタジオを借りて行うことにしました。試聴のソースには古今東西たくさんのCDを選び、それらを聴き比べてみましたが、音色は至ってスムーズで宅録環境はもちろん、エンジニアのためのツールとしても十分といった感じです。帯域に余分な部分があるミックスとそうでないものを正確に聴き分けることができました。中でも特に中低域が良く出ているといった印象です。さらに、定位感もしっかりとしていて、左右の広がり方や奥行きを十分に表現できています。高域もスムーズで粒立ちもはっきりしていますし、嫌みな部分もありません。音楽のジャンルも、生音重視のサウンドからダンス系の打ち込みものまで、幅広く対応できるのではないでしょうか。さらに、低域が非常に印象的で、4インチ・ウーファーからの鳴りとは思えないくらい豊かなものでした。出力は30W(LF)+15W(HF)と数値上は普通ですが、自宅などのホーム・スタジオでは必要十分と思われるパワーが出るのに特に驚かされました。このパワーを生かすために、しっかりとしたモニター・スタンドを使うなど、設置を工夫すればより正確なモニタリングが可能となるでしょう。また、レコーディング・スタジオなどで使用する場合でも、ミックス作業などであればパワー不足に困るといったことはまず無いと思います。近所迷惑を省みずさらなる低音を求める方ならば、上位機種に6インチ・ウーファーのV6 Series 2と8インチ・ウーファーのV8 Series 2というモデルもありますので、ぜひ試してみてください。V4 Series 2は、サイズは小さくても、ミドル・サイズの製品以上の能力を秘めているのではないでしょうか。最初は、ほかのコンパクト・サイズのスピーカーと比べると、やや高域がおとなしく、低域が豊かな印象を受けると思います(YAMAHA NS-10Mと比べると多少の違和感を感じるかもしれません)。しかし、スタジオでの使用を想定して、ある程度の音量で試聴すると、スタジオのラージ・モニターにもせまる迫力を得ることができました。これがこのスピーカーの使いこなしポイントと言えますね。最後に、やはりスピーカーは自分の耳で聴いてみることが一番。お店に行って試聴するときのヒントとしては、必ず普段からよく聴くCDを持参し、最初はやや大きめの音量で、次に自分の部屋で通常聴いている音量で試聴してみてください。特に低域に注意して2〜3枚のCDを聴いてみると、このV4 Series 2の場合にはきっと今まで意識しなかった豊かな低域が聴こえてくるのではないでしょうか。
KRK
V4 Series 2
103,950円(ペア)

SPECIFICATIONS

■形式/2ウェイ・バスレフ・パワード・モニター・システム
■スピーカー構成/1インチ・ソフト・ドーム(HF)、4インチ・ケブラー(LF)
■インプット・タイプ/XLR、TRSコンボ
■アンプ出力/30W(LF)、15W(HF)
■周波数特性/62Hz〜20kHz(±2dB)
■外形寸法/159(W)×236(H)×197(D)mm
■重量/5kg(1本)