光源の切り替えで3種類の特性が得られる2ch真空管オプト・コンプ

ELECTRO-HARMONIXNY-2A

1980年代から真空管の製造に着手し、その信頼性と音質で評価の高いELECTRO-HARMONIXより、ステレオ真空管オプティカル・コンプレッサーの新機種、NY-2Aの登場であります。自ら“史上最高”と言い切ったその実力はいかがなものか、早速チェックしてみましょう。

入力/バッファー/出力の3段階で
自社製真空管回路を採用


パネル・レイアウトを見ていきますと、左上からVUメーターのリダクション/アウトプット切り替えスイッチ、VUメーター、“Magic Eye”と呼ばれる真空管みたいな形のアウトプット・メーターがそれぞれチャンネル1と2に並び、下段にはバイパス・スイッチ、PRE-GAIN、COMPRESS、POST-GAINの各ツマミ、そしてLIGHT SOURCE切り替えノブといった配置。電源を入れますと何ともシャレた色合いのVUメーターのランプが点いてから、Magic Eyeが怪しくグリーンにともります。適当にソースを入力してみると、Magic Eyeが素早い反応を見せています。VUメーターよりも圧倒的に速く反応してくれるため、瞬間的なクリップも示すことができます。見慣れないタイプなので奇妙な動きに感じますが、VUメーターもあるので操作は問題なくできます。入力した信号はトランスを経由して真空管プリアンプに入り、PRE-GAINツマミでコントロールされつつ、LIGHT SOURCEツマミで選んだキャラクターのゲイン・コントロールを受けて真空管バッファーを通り、POST-GAINから最終プリアンプ(これも真空管)を経て出力トランスへと流れます。なんと、途中3カ所で真空管ステージを経由するんですね。それも“信頼のエレハモ球”ですからね、間違いないです。

3種類の光源の使い分けで
温かみや歪み感を自在に演出


真空管にばかり目を奪われてしまいますが、先ほどから名前が挙がっているLIGHT SOURCEというツマミを忘れてはいけません。本機は、なんとゲイン・コントロールを行う際の光源を3種類から選んで使える優れものなんです。オプト・カプラーと名付けられたコンポーネントの中に3種類の発光体があり、目的に合わせてこれらを使い分けられるんですね。選択肢が多いことは時として迷いの種をまいていくものですが、あまり深く考えずにいろいろ試してみることにしました。まずはLED。これは最もアタック・タイムが速く(約10ms)、音質面でも高い忠実度を持つと資料にはあります。確かにフラットな特性と言えなくもないですがそれだけではなく、各所に配置された真空管のおかげでうまい具合になじんでくれます。音が聴きやすくなるというか、温かさがあります。ミックス時にグループを組んだリズム・セクションにインサートしてみたら、ソフトなサチュレーションがいい具合にアナログ感を付けてくれて、存在感を出してくれました。トータルに使ってもいいかもしれません。続いてインキャンデセント・ランプ(IND)。これは最もアタック・タイムが遅く、サウンドも明るめとのことです。実際にも、LEDに比べて高域への反応が遅い分、明るいサウンド・キャラクターになるので、バッキングのピアノやギターに使って粒立ちをそろえたり、全体のトーンに張りを出したいときに合うでしょう。アタック・タイムを50msと100msで切り替えられるので、音色やフレーズに合わせて使える点も、音作りに役立つと思います。最後はエレクトロ・ルミネセント・パネル(EL)。低域よりも高域にコンプレッションがかかる少々変わった特性を持っています。自然なディエッシングが得られるので、ボーカルに良さそうです(メーカーもそう言っています)。また、比較的フラットなnormalモードときつめにかかるsquashモードが選択できるので、ナチュラルなサウンドからドライブ感のあるコンプレッションまで簡単に設定でき、使い勝手もいいです。歪みっぽくつぶれたベース・サウンドが欲しいときにもいいかもしれません。ボトムの太さをキープしつつ、ラインを目立たせてエッジも立ててくれます。ステレオ・リンク・スイッチも装備しているので、デジタル環境で作業を進めた最終段階で、本機を通してミックスを仕上げてみるのもいいかもしれません。程よく角の取れたスムーズなサウンドから、つぶし込んでドライブ感のある仕上がりまで、いろいろ活躍してくれそうですよ。

▲リア・パネル。右下の端子は、左からOUTPUT×2(XLR)、INPUT×2(XLR)で、各INPUT上部には20dB PADスイッチを備える。INPUTの右はグラウンド・リフト・スイッチ

ELECTRO-HARMONIX
NY-2A
519,750円

SPECIFICATIONS

■ゲイン・リダクション/45dB
■周波数特性/15Hz〜40kHz
■最大ゲイン/53dB
■SN比/65dB以上(入力0dBu、出力0dBu)、80dB以上(入力10dBu、出力+20dBu)
■入力インピーダンス/10kΩ
■出力インピーダンス/600Ω
■外形寸法/483(W)×133(H)×362(D)mm(突起部含まず)
■重量/11.7kg