ここ最近、月に１〜２回は"新しいライブ・ハウスができた"と聞きます。期待を胸にその場所を実際に仕事で訪れると、実は小さなライブ・ハウスのほとんどは設立時の機材費に大きく予算を当てられず、機材を妥協せざるを得ないのが現状となっているのです。さらに、クオリティを保ちながら低価格の製品が増えている中、ミキサーはまだ価格とクオリティが比例する製品の１つです。しかし最近、BEHRINGERよりライブ・ハウスなどでもスタンダードの仲間に入りそうなEurodesk SL3242FX-Proが発表されました。
コンパクトなサイズに
多くの入出力端子などを効果的に配置
今回チェックするSL3242FX-Proはトータル32chのタイプで、24モノ／４ステレオ入力という仕様です（24chバージョンのEurodesk SL2442FX-Pro／77,595円も同時リリースされています）。32chのミキサーなのに３段のカラー・ボックスを横置きの台にして"ぴったり"というコンパクト・サイズで、11.5kgという軽さを実現しているのです！ 入出力端子はすべてトップ・パネルに配置されているので、これならミキサーの設置スペースがあまりないライブ・ハウスやクラブはもちろん、最近急増している宅録さんの自宅スタジオにも重宝しそうですね。次に、目に止まるのはフェーダー部。このミキサーは角を取ってあり、車でも最近主流になり始めているポップカーブの採用によってかわいさもあり"触りやすさ"もヒシヒシと伝わって来ます。さらに60mmのフェーダーは軽過ぎず、適度な重みも良い感じです（軽過ぎるとヘッドフォンのケーブルや曲順表が当たってしまい、バランスを作っても台無しになったりすることがある）。ますます音を入力するのが楽しみになってきました。さぁ、本題の中身に行きましょう。
９ポイントのグラフィックEQには
フィードバック検知機能を搭載
トップ・パネルを見るとまず目を引くのが２つのデジタル文字盤ですが、実は本機には同社のV-Verb Proの24ビット／46kHzのアルゴリズムを受け継いだエフェクトを２基搭載。リバーブなども密度の濃いツヤのある音で、２基独立の99種類のプリセットを備えています。"INSERT EFFECT"として外部アウトボードを使用しなくてもこの内蔵エフェクト音を使うことも可能です。エフェクターの上に位置する９ポイントのグラフィックEQはかなり正確で効きも良く、アサインでメインかAUXに割り当て可能。しかも、特許申請の"FBQ"スイッチを押すと、赤LEDによりハウリング・ポイントをいち早く視認可能で、ライブでも強い味方になってくれます！さて、マスター部に参りましょう。本機は４バス／２ミックス／１モノですが、モノラル出力にも驚くような機能を搭載しています。なんと200〜30Hzのハイカット可変式フィルターが付いていて、小規模イベントに迫力のサブローを外部のチャンネル・ディバイダー無しで付加できるのです。モノ・チャンネルではヘッド・アンプ部にスタジオ・クラスと言われる"IMP（インビジブル・マイク・プリアンプ）"を採用。確かにゲインを上げるだけですんなり音が前に出てくれるし、変に色付けされないので、自分の提供したいサウンドを邪魔されることがない感じがとても好印象です！EQは３ポイントで、MIDのみ100Hz〜8kHzのスイープ、HIGHとLOWは各12kHz/80Hzの固定です。また、ステレオ・フェーダーは４ポイント固定のEQで妥協を感じさせません。AUX OUTは先ほどのエフェクト送り（AUX3/4、POST）も含めて４つで、AUX1/2はPRE/POST切り替えスイッチが各チャンネルごとに付いています。これだけの多彩な機能を持ちながら消費電力も50Wと少なく、100〜240Vのインターナル・パワー・サプライを内蔵しながらも軽量化を実現しているのです。僕個人がさらに気に入ったのがこのクラスでマスター部にボタン１つで全チャンネルをミュートできる"簡易オールミュート機能"を搭載していること。コンパクトな卓を使用する際にいつも思うことだけに、本当にユーザーに優しく素晴らしいミキサーです。今までいろんなミキサーを使用してきて"安いからしょうがない"と割り切っていた部分もあるのですが、本機は音に対する妥協も一切ナシ。今までのオールインワン・タイプ付属のエフェクターやグラフィックEQはほとんどが現場で使用できるレベルではなかったのですが、本機は低価格製品の概念を一新させる全く新しいタイプだと実感しました。きっとこのミキサーにはまたすぐどこかのライブ・ハウスで会える気がします。
SPECIFICATIONS
■周波数特性／10Hz〜70kHz（＋0dB/−1dB）、10Hz〜160kHz（＋0dB/−3dB）
■DSPコンバーター／24ビットΣΔ
■サンプリング周波数／46kHz
■接続端子／モノラル入力×24（XLR、TRSフォーン）、ステレオ入力×4（TRSフォーン×2）、CD／テープ入出力×2（RCAピン）、チャンネル・インサート×24（TRSフォーン）、FXセンド×2（TSフォーン）、AUXセンド×2（TSフォーン）、ステレオFXリターン×2（TSフォーン×2）、サブグループ出力×4（TSフォーン）、モノラル出力（TSフォーン）、メイン出力×2（XLR、TRSフォーン）、メイン・インサート×2（TRSフォーン）、フットスイッチ、ヘッドフォン
■外形寸法／896（W）×100（H）×410（D）mm
■重量／11.5kg
