DAW環境にも最適な24ビット/96kHz対応低価格デジタル・リバーブ

BEHRINGERV-Verb Pro REV2496

BEHRINGERといえば“とにかく価格が安い”というイメージが強いですね。最近はヘタをすると同社のアウトボードが他社のギター用コンパクト・エフェクターより安い値段で買えてしまいます。中には、真空管を使った機材などもありますが“パーツ代だけで製品価格を上回ってしまうのでは?”と思わせるくらいです。なぜこんな安い価格で製品化できるのかが不思議ですが、そんな中で今回発売されたこのデジタル・リバーブ、V-Verb Pro REV2496の価格は5万円代。同社の製品ラインナップの中では高級機といえますが、逆にそれだけ力を入れているモデルということにもなり期待が持てるところです。では早速レビューしていきましょう。

細かいパラメーター設定を
分かりやすく直感的に操作可能


V-Verb Pro REV2496は、2つの独立したエフェクト・プロセッサーを持つデジタル・リバーブです。V-Verb、Concert Hall、Cathedral、Theater、Gold Plate、Ambience、Gated Reverb、Reverse Reverbの8つのリバーブ・アルゴリズムに加えて、ディレイ、クロスオーバー・ディレイ(周波数ごとに異なるディレイを設定可)、コーラス/フランジャー、フェイザー、トレモロ、コンプレッサーを内蔵しています。また、これらのエフェクトをENGINE AとENGINE Bという2つのプロセッサーに同時に割り当てることができ、ルーティングも直列、並列はもちろん、かなり複雑な接続にまで対応することが可能です。もちろんそのルーティングを保存して後から呼び出すこともできます。入出力端子を見ると、アナログはXLRとTRSフォーン。デジタルではAES/EBU、S/P DIFオプティカルを備え、さらにワード・クロック・イン、MIDI IN/OUT/THRU端子も装備しています。これだけあれば、どのような環境でもセットアップできるというくらいに充実しています。さらにこの製品で特筆すべきことは、24ビット/96kHzに対応している点でしょう。数十万円クラスのリバーブ・ユニットですら96kHzまで対応している製品はまだあまり見かけませんからね。では、操作系をフロント・パネルの左から見ていくと、この価格帯の製品にしては珍しく、大型のLCDを採用したディスプレイ・セクションがあります。低価格の製品はプリセットを選択式のダイアルの組み合わせで呼び出す方式のものが多く、プリセット以外の複雑な設定をしようと思っても、ほぼできないに等しいといった感じですが、この製品ではディスプレイを見ながら高級機並みに細かいパラメーターまで、分かりやすく設定できるようになっています(例えばDecayなどを、Lo、Mid、Highの任意の周波数を選択し個別に設定することが可能)。そのディスプレイの左右には、入力レベルのLEDとサンプリング周波数などを表示するインジケーター、中央にはプッシュ機能付きのロータリー・ノブが4つあり、内部のパラメーターは基本的にこの4つのノブで設定できるようになっています。また、パネルの右側にはファンクション・キーとプリセット・コントローラーが用意されています。パラメーターのエディットをするには、まず元になるプリセットをプリセット・コントローラーで選択、EDITキーを押した後PAGEキーとロータリー・ノブの組み合わせで設定を変更するという手順で行います。各パラメーターには、ロータリー・ノブ1つでかなり直感的にアクセスでき、普段頻繁に触るFX LevelやDecayなどは、プリセットを選択した時点ですぐに表示されるようになっています。これは、わざわざEDITモードで深い階層に入っていかなくてもよいので非常に便利。実際に使用してみると、ほとんどマニュアルを読まなくても感覚的に操作できユーザー・フレンドリーな設計になっています。

ボーカルをはじめ広範囲に使える
クセの無い極めて素直なサウンド


音の傾向は、クセの無い極めて素直な印象。一般的なプラグインのリバーブのように、数パーセント以上かけると不自然になってきてしまい、薄くしかかけられないといったこともありません。試しに2ミックスにかけてみたところ、かなりの割合で混ぜても嫌な不自然さは出てこなかったので、広範囲に使うことができると思います。派手な印象ではなくトラックになじませるという方向での使用に最適です。ピッチ感がおかしくなるということも無いので、ボーカル録音の際に混ぜても使いやすいし、SN比も良好でした。今回は、8つのリバーブ・アルゴリズムの中のGold Plateをボーカルにかけて試してみましたが、なかなか密度も高く粒子感もシルキーで好感触。プリセットのままでも十分使えるといった感じでした。また、リバーブ以外のエフェクトに関しては、ENGINE AとENGINE B、この2つのプロセッサーを直列でルーティングし、遅いコンプと速いコンプを同時にかけるという方法を試してみました。入力信号のメーターしか付いていない本機では、普通に考えるとコンプのかかり具合を耳で聴いて判断する以外に無いのですが、エディット画面が表示された状態でGRAPHキーを押すことで、パソコンのプラグイン・エフェクトにも似たグラフ画面が表示されるので、視覚的に音を確認しながら作業できるのが非常に便利です。コンプの音は、同社のMDXシリーズよりもむしろ出音が太いような印象があり、僕にはこちらの方が好みでした。コンプ以外にも、サイドチェーン・フィルターは、ディエッサーなどにも使えますね。各エフェクトにはピーク・リミッターが付いているのも、コンプのゲインをかなり上げたり、リバーブを深めにかけた過ぎた際に、突発的に歪みが発生してしまうといったことも防げるので安心です。この価格帯の製品の場合、どうしても飛び道具的な機種が多くなってしまうのに対して、V-Verb Pro REV2496はきちんと使えるという印象を持ちました。特にDAWでの音楽制作では、最終的にかけるリバーブがネックで“もっと速いCPUに買い替えたいなぁ”という悩みが多いと思いますが、そんなとき、デジタル接続対応の本機があれば簡単に解決できてしまうのではないでしょうか。

▲リア・パネルの接続端子類。右からライン・イン(XLR、TRSフォーン)×2、ライン・アウト(XLR、TRSフォーン)×2、AES/EBUイン&アウト(XLR)、S/P DIFイン&アウト(オプティカル)、ワード・クロック・イン(BNC)、MIDI IN/THRU/OUT

BEHRINGER
V-Verb Pro REV2496
51,345円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜20kHz(44.1kHz)、10Hz〜22kHz(48kHz)、10Hz〜46kHz(96kHz)
■SN比/−90dB
■入力インピーダンス/22kΩ(アナログ)、110Ω(デジタル)
■ダイナミックレンジ/106dB
■最大入力レベル/+16dB
■最大出力レベル/+16dB
■外形寸法/482.6(W)×44.5(H)×217(D)mm
■重量/約2.15kg