ナチュラルな音が魅力のコスト・パフォーマンスに優れたコンデンサー・マイク

JOEMEEKJM47

緑色のパネルのアウトボード・メーカーとしてご存じの方も多いと思いますが、JOEMEEKからラージ・ダイアフラムを採用したコンデンサー・マイク、JM47が発売されました。価格は約30,000円でとてもコスト・パフォーマンスの高いモデルです。近年このクラスのマイクがいろんなメーカーから発売されており、本誌で特集なども組まれていますが、また選択肢が増えるのはうれしい限りですね。

耳で聴いた感じに近く
ふくよかな中低域


まず外観を見ると、ボディ本体は真ちゅう製で値段の割に安っぽくは感じられません。指向性の切り替えは無く単一指向性のみですが、−10dBのパッドとローカット・スイッチが付いており、基本的なところは押さえられているという感じです。このJM47を別売の専用ショック・マウントであるJM47SM(6,300円)と一緒に試します。今回のチェック環境は、SSLのヘッド・アンプとコンプのUREI 1176を組み合わせたものと、DIGIDESIGN MBoxを使い、比較用にNEUMANN U87も使用しています。マイクは周波数特性などスペックだけでは分からないことが多く、使用してみて初めて分かるところも多々あるので、早速肝心の音をチェックしていきましょう。まずはSSLのヘッド・アンプと1176を使い、男性の声を録ってみました。U87と比べてもSN比は良く、とても素直な印象です。FETインピーダンス・コンバーターとトランスフォーマー出力によってフラットな特性を持っているというだけあって、実際の声を耳で聴いた感じに近い、とてもナチュラルで自然な感じです。逆に派手さは感じられないので、物足りなさも感じる方もいるかもしれませんが、中高域に下手に色付けされ過ぎたマイクが多い中、個人的には好印象です。次に女性ボーカルで試しても印象は先ほどと変わりません。声を張ったときもキンキンした硬さが出ずツヤもあり、中低域のふくよかさが良い感じです。コンプをかけても嫌なところが持ち上がらず、深くかけても自然な感じにかかってくれます。少し高域が足りないかなと思いEQで高域をブーストしてあげたときも、ザラザラした感じも無く、奇麗に伸びてくれます。個人的にはマイクに近めのセッティングの方が良い印象です(少し離れると定位がぼやけ、もやっとする感じ)。ただ少し吹かれに弱いようなので、ポップガードやセッティングには気を遣いたいところです。癖がないマイクなので、録るものによってマイクプリやコンプなどで味付けしてあげるのが良いかもしれません。もう少し低域の締まり、パワー感があれば申し分ないのですが、値段的にもいつもスタジオで使用しているマイクと比べるのは酷と言うものでしょうし、この価格差を考えるととても健闘していると思います。

素材を生かした録音に好印象で
アコギなどとの相性も良好


さらに、ほかの部屋でボーカルのレコーディングをしていたエンジニアがいたので、JM47を試してみないかと渡したところ、NEUMANNのU67、U87などを押しのけ採用されたとのこと。感想を聞いたところ、歌い手との相性も良く、とても扱いやすかったとのことです。その後、コーラスでも試したのですが、ナチュラルに録れたコーラスは別のマイクで録音したメインのボーカルやオケとの混じりが良好でした(リバーブのかかりも良好)。また、エレキギターでも試したところ、オンマイクでの音は中低域が少しもったりした感じで派手さが無く少し物足りなさを感じましたが、オフマイクで部屋の鳴りを録ったときは好印象です。このオフマイクで録ったものをオンマイクで立てたSHURE SM57と混ぜたのですが、出しゃばらず、EQなどをしなくても自然に混じってくれます。さらに、MBoxでも試してみました。声はナチュラルな印象はそのままで、結構すっきりと録ることができます。アコーステック・ギターでは低域がもやっとするかと思ったのですが、そんなことはなく、アタック感もほどよい感じです。こういった低価格のマイクプリの方が好印象です。今回はあまりいろいろなソースに試すことができませんでしたが、ステレオでピアノなどに立てたら良さそうな感じがします。ガッツのあるマイクという感じではないので、ナチュラルな素材を生かしたものに合うのではないでしょうか。最近はホントにリーズナブルでクオリティの高いマイクが出てきています。あまりこのクラスのマイクを使うことはないのですが、あらためて感心してしまいました。音の入口として、やはりマイクのセレクトは一番大切だと思います。この値段でこの質感が得られるコンデンサー・マイクが買えるのは魅力的でしょう。色付けされていないナチュラルなマイクを探していた方は買いだと思います。今まで1本しか買えなかった値段で何本か買いそろえられるのですから、できたら少し派手めのマイクとこのようなナチュラルなマイクといったようにキャラクターの違うマイクを2本用意し、使い分けて録っていくと音の傾向が偏らず良い結果が得られそうですし、音の幅も広がるしょう。同時発売のペンシル・タイプのコンデンサー・マイク、JM27(14,490円)も気になるところです。
JOEMEEK
JM47
31,290円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■感度/−36dBV
■推奨ロードインピーダンス/2kΩ
■SN比/74dB
■ダイナミック・レンジ/126dB
■外形寸法/50(φ)×196(H)mm
■重量/500g