DAW環境での使用に最適化されたデジタル・モニター・スピーカー

FOCALSM11

ホーム・オーディオやカー・オーディオなどのコンシューマー・オーディオの世界ではフランスのしにせブランドとして知られた存在のFOCALが、初のスタジオ用デジタル・モニター・スピーカーSM11を発表しました。いったいどのようなスピーカーなのか、早速チェックしていきましょう。

最新素材を採用したスピーカー設計
PDAによる遠隔操作も可能


まずは外観から。大きさはやや大きめのニアフィールド・スピーカー・サイズで、ツィーター&スコーカーとウーファーが同一平面上にないユニークなデザインの3ウェイ・スピーカーとなっています。さらに側面には、小音量時にも豊かな低域を再生するサブウーファー的役割の“パッシブ・ラジエーター”も備えています。このデザインは、別に発売されているセンター・スピーカーのSM11-C、ウーファーのSM11-Sと組み合わせてサラウンド用モニターとしても使用できるようにするためのものだと思われます。次に仕様を見ていきましょう。SM11はパワー・アンプを必要としないパワード・モニターで、入力はアナログ入力(入力時に24ビット/96kHzでADコンバート処理される)のほかに、24ビット/96kHzまでのデジタル入力(AES/EBU、44.1/48/88.2/96kHz自動切り替え)も装備しており、内部処理はほとんどデジタルで処理されます。これはデジタル・ドメインでのシステムには非常に便利な仕様でしょう。SM11の大きな特徴の1つは、ツィーターにベリリウムという、チタンやアルミニウムよりも固くて軽い素材を使用したリバース・ドーム・ツィーターを採用している点です。これにより40kHzまでの周波数特性を実現しています。また、ウーファーとスコーカーにはポリKサンドイッチという特殊素材を用いた“Wコーン”を採用しており、ダンピング特性の向上を図っています。また、本体にはほとんどコントローラー類は装備されておらず、付属しているPALMのPDA、Zireを使用してワイアレス・コントロールするということも大きな特徴でしょう。PDAではレベルの調整をはじめ、リスニング・ポイントからのスピーカーの位置や高さなどを入力すれば位相干渉を最小にする最適なディレイ値が自動的に設定されるスウィート・スポット機能の操作などが可能です。また、同様にPDAによる操作が可能なパラメトリックEQも搭載しているので、好みのサウンドにチューニングすることもできます。これらの特徴からも分かるように、このSM11は通常のCDだけではなく、5.1chサラウンド・コンテンツなどのマルチチャンネル再生やDVD-AudioやSACDなどのワイド・レンジ再生においての作業にも対応できる仕様となっています。また、2chとサラウンドを同時に作業する際にそれぞれのリスニング・ポイントを決めるのは意外に難しいので、あらかじめ併用を考えたこのデザインは大きなポイントです。

デジタルくささのない
自然で落ち着いたサウンドを表現


それでは実際にセットしてチェックしてみましょう。まずPDAによるスピーカーの設定ですが、手のひらサイズの小さなPDAですので、比較的若者向き(?)で多少の慣れも必要ですが、ワイアレスはやっぱり手軽で便利です。セッティングの位置は、2ch再生時においても、サラウンドでのITU推奨の場所(センター軸から各30度の位置)にセットすることが音場/定位に関してやはり一番良いようです。こうすれば、サラウンド・セットを組んだ場合でもセッティング位置を変えずに作業できますので、かなり役立ちそうです。特殊なデザインがなされているので、音像やフォーカス、定位に不安を持って試聴に入ったのですが、モニターとしてのクオリティをしっかり持った再生表現をしていました。小さなレベルにしても再生帯域のバランスが崩れず、低域の感じが損なわれないのはうれしいですね。デジタル入力での再生能力はかなり完成度の高いものです。ベリリウムを採用したツィーターの表現力はより自然で、一見おとなしく感じるかもしれませんが、変に誇張せずに録音されたレンジをそのまま正確に表現しているようです。音場表現も、モニターとして必要な奥行き感/定位を持っています。サウンド・カラーは、フランス製ということもありアメリカン・サウンドのようなキラッとしたつやっぽさは持っていませんが、安定感のある落ち着いた、いわゆるデジタルくささの無い表現をしています。従来、デジタル・ドメインでシステムを組んだ場合にどうしてもデジタルくささを感じてしまうものが多かったのですが、このSM11にはそれがなく、ハード面でもかなり追い込んでデザインされているのがよく分かります。アナログ入力は、実際にアコースティック・レコーディングしたソースでの試聴ができなかったのでコメントを控えさせていただきますが、デジタル入力同様かなり期待が持てます。1つ不満があるとすれば、デジタル入力は96kHzまでの対応で、ADコンバーターも同様ですので、192kHzにも対応してほしいと思いました(もちろんこのスピーカーで192kHzで録音された素材をモニタリングすることが不可能というわけではありませんが)。ユニークなデザインから受ける印象とは違って、モニター・スピーカーとしてかなり完成度の高いこのSM11ですが、特にDAWとの組み合わせで使用する作業環境でのマッチングは抜群なのではないでしょうか。プロ・ユースな価格ではありますが、サラウンドと併用でシステムを組みたい方はトータルで考えると納得できる価格だと思います。また、同シリーズからはSM11より1サイズ小さい2ウェイ・サイズのSM8も近く登場するらしいので、2chメインで持ち歩きたいタイプの方にはぜひそちらもチェックしてほしいですね。
FOCAL
SM11
1,280,000円(ぺア)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/34Hz〜40kHz(±2dB)
■最大音圧レベル/118dB SPL(peak@1m)
■ダイナミック・レンジ/>110dB
■インピーダンス/10kΩ(アナログ入力使用時)
■アンプ出力/250W(LF)、150W(MF)、100W(HF)
■外形寸法/460(W)×338(H)×350(D)mm
■重量/25kg