エフェクターにもシンセにも機能が変えられる多目的プロセッサー

SOUNDARTChameleon

カメレオンと言えば、体の模様を周囲の背景と同化して、相手に気付かれないように獲物に近づき捕らえる、忍者のような生き物という印象がある。SOUNDART社から発売されたChameleonはさまざまな現場の状況によって機能を変幻自在にする非常に便利な多目的ツールだ。

MIDIシーケンサーで
素早くアプリケーションを起動


ほかではあまり類を見ないオープン・プラットフォーム型のChameleonは、コンピューターとアプリケーションのような関係で成り立っている。つまり、アプリケーションを起動させればさまざまなエフェクターやシンセサイザーとして使用することができるわけだ。外観は1U、奥行きも18cm程度とコンパクト。フロント・パネルにはマスター・ボリューム、edit、part、group、page、paramのアサイン・キー、valueキーと連動しているエンコーダー・ダイアルのほかに、リアルタイム・コントローラーが3系統とヘッドフォン出力端子を備えている。背面パネルにはステレオの入出力端子とMIDI IN/OUT端子を装備。パッケージに同梱されているChameleon用のアプリケーションは、マルチエフェクト・プロッセッサーのChromasonic、ギター・アンプ・シミュレーターのAmp-O-Matic、ディレイ・エフェクト・プロセッサーのFX Designer、バーチャル・アナログ・シンセサイザーのAustralis、ダンス・ミュージック・モジュールのFahrenheitの5種類が用意されている。これらのアプリケーションを起動させるには、外部MIDIシーケンサーやMIDIファイル・プレーヤーを用い、スタンダードMIDIファイル形式のアプリケーションのファイルを本体に流し込む。データの内容はコントロール・チェンジ・データではなく、システム・エクスクルーシブの情報である。データの流し込み方は非常に簡単で、まずChameleon本体とMIDIシーケンサー・システムをMIDIケーブルでIN/OUT相互にワイアリングする。Chameleon本体のシフト・ボタンと電源を同時に押して立ち上げると、ディスプレイに"WAITING"と表示される。この状態でデータの受信準備ができている。接続されているMIDIシーケンサーを走らせれば、約2分くらいでアプリケーションのロードは完了する。

音作りや表現の幅を広げる
個性あるプログラムを装備


まずマルチエフェクト・プロセッサーのChromasonicだが、主な機能は5バンドのパラメトリック・イコライザー、コンプレッサー、リミッターのダイナミクス系エフェクトと、トレモロ、コーラス、フランジャー、フェイザーの空間系エフェクトに2タップ・ディレイ。そして非常に高品位なリバーブなど、大きく分けて4系統のエフェクトを同時に3つまで使用可能で、これらのエフェクトは任意にルーティングも可能になっている。各エフェクト・プログラムのクオリティも非常に高いと言っていいだろう。特にコーラスやモジュレーション系のエフェクトは、少々クセがありなかなか個性的だ。空間系エフェクト以外でも、EQやコンプなどのダイナミクス系のエフェクトも併用して使えるので音色の補正や強調もでき、自由度の高いエフェクトの組み合わせが可能。パネル右に3つあるrealtime controlツマミは、ほとんどのエフェクトのパラメーターをアサインできる。ディレイ・タイムやフィードバック・ゲインなど、アクセスすることの多いパラメーターをアサインしておくと非常に便利だろう。また、このパラメーターはコントロール・チェンジ・データ(MIDI)でも調整が可能で、シーケンサーにリアルタイムで調整したデータを記録しておけばいつでも再現することができる。次にディレイ・エフェクト・プロセッサーのFX Designerを起動させてみよう。FX Designerはディレイを基本としたエフェクト・プログラムで、簡単に言うとかなりえぐいかかりのコーラス、フランジャー、フェイザーなどのエフェクト・プログラムだ。マルチエフェクターではなく、マルチディレイといった感じで、5つの波形を持つLFOや位相を反転させられるデジタル・ディレイを、最大6つ同時に使用することが可能。かなり変わった表現ができるはずだ。個人的にはクリーン・トーンのアルペジオやフレーズの着色など、エレキギターに使用するのが良い感じだった。Chromasonic同様にリアルタイム・コントロールを使用することが可能なので、かなりアナログライクに使用できるはず。ギター・アンプ・シミュレーターのAmp-O-Maticは、今のところベータ版となっているが、真空管やトランジスターなどの7種類のプリアンプ、EQ、2種類のパワー・アンプ、7種類のスピーカー・キャビネットからそれぞれを選択して使う。現在の仕様では、スプリング・リバーブやコンプレッサーなどのエフェクトは装備されていない。バーチャル・アナログ・シンセサイザーのAustralisはかなり印象は良い。これは、1970〜80年代のビンテージ・アナログ・シンセをシミュレートしている。16ボイス、8マルチティンバーで、128×4(バンク)のプリセットが可能だ。音色はARPやMOOG、SEQUENTIALなどの分かりやすい往年のサウンドがメインとなっているが、音の太さには少々驚いた。S/Nもとても良く、ヌケがあってパンチのある音だ。非常に気に入ったのはアルペジエイターで、128種類ものシーケンス・パターンが用意されており、ダウン/アップ、オクターブなどのほかにも細かい設定ができ、オリジナリティのあるアルペジオ・パターンを作れるだろう。ダンス・ミュージック・モジュールのFahrenheitは、ROLAND TB-303(2台分)、TR-808、TR-909をシミュレートしたリズム・ツールだ。以上の4つの音源をマルチティンバーとして使用する。Fahrenheitには、内部ミキサーで各音源のパートをミキシングするミキサー・セクションとエフェクト・セクションがあり、本体の音源のほかにリア・パネルのアナログ入力から外部音源をミキサー・セクションに入力することも可能になっている。エフェクト・セクションには4基のディストーションとコンプレッサーを装備しているので、単独でキックにディストーションやコンプレッサーをかけることも可能だ。全く違った用途のアプリケーションが用意されているChameleonだが、例えば録りのときにはシンセやリズム・マシンとして、ミックス・ダウン時にはエフェクターとして使用したりと、いろいろフィーチャーできる場面がありそうである。
SOUNDART
Chameleon
オープン・プライス(市場予想価格128,000円前後)

SPECIFICATIONS

■全高調波歪率/0.0025%以下@1kHz
■周波数特性/20Hz〜20kHz(+0/−0.5 dB)
■入出力端子/アナログ入力(フォーン)×2、アナログ出力(フォーン)×2、MIDI IN/OUT、RS-232 LINK、ヘッドフォン端子
■SN比/90dB以上@1kHz
■外形寸法/482.6(W)×44(H)×185(D)mm
■重量/3㎏